『ラテンアメリカ研究入門 <抵抗するグローバル・サウス>のアジェンダ』 松下 洌 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『ラテンアメリカ研究入門 <抵抗するグローバル・サウス>のアジェンダ』 松下 洌


 20世紀にラテンアメリカを席巻した新自由主義型グローバル化が及ぼした社会的、政治的、経済的、思想的影響を再考し、21世紀に入ってポスト新自由主義を模索するラテンアメリカで起きている問題群を挙げ、トランプ政権の誕生によって生じた新たな課題、「左派」政権の挫折とポスト・トランプ時代に向けたラテンアメリカのグローバルな民主的世界秩序構想に向ける視点と課題について、著者(立命館大学名誉教授)なりの考えを述べている。
 21世紀の課題として、農村社会の変容、インフォーマルセクターの拡大による都市社会の分断、「左派」政権の「挫折」と教訓、現代のポピュリズム、国家と社会を蝕む北米のリージョナリズムと安全保障、麻薬カルテルや移民問題などの「新自由主義」下での暴力と歪み、NAFTAに翻弄されたメキシコ社会とポストNAFTAに向けた再構築、ブラジル労働者党政権の挑戦と挫折、多極化する世界秩序の中でのラテンアメリカ、BRICSの拡大、リージョナルなガヴァナンス構想と地域協力など、現代のラテンアメリカで注視すべき諸テーマを広く論じた労作。

〔桜井 敏浩〕

 (法律文化社 2019年12月 231頁 2,000円+税 ISBN978-4-589-0404-3 )

 〔『ラテンアメリカ時報』 2019/20年冬号(No.1429)より〕