新自由主義的思想でこれまでの市場中心的な経済開発モデルが、失業、非正規雇用、貧困格差、環境破壊などの問題を引き起こしているが、これに対抗するにラテンアメリカの人々の間でローカルなレベルで実践してきた連帯経済が公正で持続可能な社会の担い手になり得るか、それを育んできた民衆運動の歴史と実践の個別事例を比較検討することでオルタナティブになり得るかの可能性を探ろうとする研究論集。
ラテンアメリカにおける実践事例として、メキシコのチアパス州でのコーヒーのフェアトレード、エクアドルのアンデス高地サリナス教区における農牧産品等の生産、販売などでの連帯経済、ペルーおよびボリビア都市部の民衆の間でのコミュニティ菜園や民芸品フェアトレード等の連帯経済活動、コロンビアにおける産消連携をめざす協同組合運動、ブラジルでの労働組合と協同組合活動の連帯、アルゼンチンの社会保障関連連帯経済組織を紹介しており、終章でラテンアメリカの連帯経済の特性を纏め、どこまでコモン・グッドの充足に資するかを自問し、オルタナティブとしての連帯経済が抱える問題点を指摘した上で、日本社会においても考える上で学ぶべきことがあると結んでいる。6人のラテンアメリカ地域研究者による示唆に富んだ論集。
〔桜井 敏浩〕
(SUP上智大学出版発行・ぎょうせい発売 2019年10月 354頁 2,500円+税 ISBN978-4-324-10623-5 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2019/20年冬号(No.1429)より〕