『経済学のパラレルワールド 入門・異端派総合アプローチ』 岡本 哲史・小池 洋一編 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『経済学のパラレルワールド 入門・異端派総合アプローチ』 岡本 哲史・小池 洋一編


 現在世界の経済学は市場の役割を重視する新古典派経済学が主流で、大学でもマクロ経済学にしてもミクロ経済学系統の数学的な科目が占めている。かつては現実の経済をより普遍的に説明し将来のあるべき経済の姿を示すかを競って、マルクス経済学、ケインズ経済学はじめ多くの理論があった。本書では「異端派経済学」と呼ぶ新古典派以外の経済学のうち代表的なものを、初学者にも分かり易いように解説している。
ラテンアメリカは実は多くの異端派経済学が生まれた地域で、ラテンアメリカなどの低開発を説明するためのものであったフランクなどの従属論、一次産品価格の傾向的低下から脱するために工業化の必要性を説いたプレビッシュの議論、一次産品輸出経済や大土地所有などの構造問題に低開発やインフレなどのマクロ問題の原因を見出した構造派経済学(著者のブレッセル=ペレイラもその一人)などを生み出している。
15人の経済学研究者による論考を、ラテンアメリカ経済を専門としていた故佐野 誠新潟大学教授を追悼し編まれた、知的刺激を受ける新古典派経済学とは異なる並行世界(パラレルワールド)の論集。

〔桜井 敏浩〕

 (新評論 2019年11月 527頁 3,500円+税 ISBN978-4-7948-1140-0 )

 〔『ラテンアメリカ時報』 2019/20年冬号(No.1429)より〕