テオティワカンはアステカ以前のメソアメリカの中心であり「神々の都」を意味する。本書はその主要構造物の位置、その図面、編年表とともに豊富な考古資料を基に、誕生から衰退までを描いた都市研究史。
なぜピラミッドは造られたのか、地下界の認識、メキシコ考古学とナショナリズムの関わりから説き起こし、神々の都での政治体制、世界観と国家形成に向けた戦略、続古典期と土器の起源、メキシコ中央高原における各地域の動向をテオティワカンの衰退までを、メキシコ中央高原における交易モデルにより経済活動と多層的交易システムの枠組み、その中で重要な黒曜石の供給地変化と利用、搬入土器の種類、時期と器形に見られる傾向を分析して、「下位交易システム」の実体を論じ、これらの研究を総括して国家主導型交易システムの功罪を纏め、なぜテオティワカンは衰退したかを考察している。テオティワカンが我々とは異なる世界観を持っていたこと、その衰退要因が交易システムの考察からのみでは理解出来ないことを指摘し著者の結論を述べている。
〔桜井 敏浩〕
(雄山閣 2019年4月 202頁 2,600円+税 ISBN978-4-639-02642-6 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2019/20年冬号(No.1429)より〕