『パラグアイのおかげの話 -南米パラグアイに起こった奇跡と魅力』 佐々木 直  | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『パラグアイのおかげの話 -南米パラグアイに起こった奇跡と魅力』 佐々木 直 


 主人公の 前原弘道氏は1937年生まれ、20歳の時に現在の広島県福山市から父親の決断で一家を挙げてパラグアイに移住した。南部の都市エンカルナシオンから原生林の中の土地に入植したが、父は山奥では将来性がないと見切りを付け直ちに首都アスンシオンから近い地に移転し野菜作りを始めた。トマトやバナナ等の栽培、牛の酪農を試行錯誤で行ってきたが、養鶏を始めたことが転機となり今では500haの自社地で“YEMITA”(黄身)ブランドの卵を生産、パラグアイでの販売シェア6割以上にまでなっている。それに至るまでは弛まぬ努力と勤勉、工夫の賜物だったとふり返る。2003年には北部チャコ地方での牛の牧場経営にも進出し、三代目の勝彦氏を中心に6か所で計105千haの土地を確保し45千頭を飼育するまでに発展させ、大豆、トウモロコシ、ソルガムなどを栽培する大農場も併設した。養鶏施設のある前原農場とは自家用飛行機で往復する規模にまでなり、亡父の思いを実らせたいと、前原農場の南端の小山には「御影城」と呼ぶ日本の城を造営した。近年は移住地ごとにある9つの日本人会で構成しているパラグアイ日本人会連合会の会長にも選ばれ、任期中の2016年の日本人移住80周年式典の祭典委員長も務めるなど、日系人社会と移住者を迎え入れてくれたパラグアイとの友好のために様々な公的活動も続けている。
 本書は、前原家からの聞き取りと現地取材によってノンフィクション作家が取り纏めた自伝風ドキュメンタリーであるが、移住者が先見性と工夫によって事業を成功させていく過程もみることができ、多くの写真とともに日本人移住資料としても興味深い。

〔桜井 敏浩〕

(文芸社 2020年1月 251頁 1,800円+税 ISBN978-4-286-21171-8 )

〔『ラテンアメリカ時報』 2019/20年冬号(No.1429)より〕