講演会報告「2020年、日本の対中南米外交を展望する」(2020.2.12開催) | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

講演会報告「2020年、日本の対中南米外交を展望する」(2020.2.12開催)


【演題】 「2020年、日本の対中南米外交を展望する」
【講演者】吉田 朋之 外務省中南米局長
【日時】 2020年2月12日(水)15:00~16:00
【場所】 田中田村町ビル5F会議室
【参加者】74名

外務省の吉田朋之中南米局長は中南米情勢の現状と展望をテーマに講演を行った。講演概要は以下の通りです。

1.中南米情勢

2019年、中南米ではコロンビア、エクアドル、チリ等での国民の抗議活動やメキシコ、ブラジル、アルゼンチンでの政権交代など、多くの政情不安や政権交代が発生した。背景には、改善されない格差や政治の腐敗体質という世界共通の要因もあるが、中南米の特殊要因も認められると分析した。
●政情不安の背景
・中南米では、2000年代の経済成長で多くの「中間層」が出現した半面、格差解消は進まず、社会的セーフティネットが未整備の部分が大きかった。
・一方、概ね各国とも民主主義は定着しており、国民の間に政治不信が蓄積し抗議活動に繋がり易いという共通土壌がある。選挙による政権交代が実現したが、右、左といったイデオロギー対立より既存の政治の否定という要素が大きい。
・SNSやスペイン語という共通文化により、地域内で政治不満や政情不安の連鎖が発生しやすい。
●かつて一体感のあったラテンアメリカであるが、分断化が進んでいる。
汎米国際機関の米州機構(OAS)は米国の影響が強く、ベネズエラ、ニカラグアに対する態度で分裂状態にある。リマ・グループも、ベネズエラに対する姿勢を異にする国が出てきている。また、米国・カナダが非加盟のラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)では、2019年の議長国のボリビアが脱退を表明、ブラジルも参加見合わせている。

2.今後の課題
●米国の対中南米外交
・ベネズエラのグアイド暫定大統領の支持やキューバへの締付け強化など、米国の選択的関与の姿勢が地域内の分断化を複雑にしている部分はある。
・しかし、台湾承認国の減少など、中国の影響力拡大やロシアの関与を懸念、 エネルギー・インフラへの民間投資促進に向けた「米州における成長」を発表するなど、中南米回帰の姿勢も認められる。メキシコとの移民対策合意やグアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラスとの「安全な第三国協定」など、懸案の移民問題での進展もあった。
●日本の対中南米外交
・“3つのJuntos!!”と”連結性強化”の外交方針を継続する。APECチリ会議の中止により中南米諸国との首脳会談が実現できなかったが、メルコスールとコロンビアとのEPA、チリ・ペルーのTPP早期締結に向け注力する。

講演後の質疑応答では、ボリビアの治安とイスラエルの関係、日本の対中南米経済協力、日本のボリビア情勢に対する姿勢、日本のコロンビアとのEPA、メルコスールとの協力協定の進捗の度合い、日本の太平洋同盟との関係、中国の台頭による日本の地位低下について、日本とパラグアイの関係について、等多くの質問が出たが、吉田局長には丁寧にお答えいただいた。

会場の様子

講演会配布資料(会員限定)

講演会「2020年、日本の対中南米外交を展望する」(2020.2.12開催) 発表資料