講演会報告「チリの最新情勢」(2020.2.17開催) | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

講演会報告「チリの最新情勢」(2020.2.17開催)


【演題】「チリの最新情勢」
【講演者】駐チリ特命全権大使 平石好伸
【日時】2020年2月17日(月)10:50~12:00
【場所】新橋ビジネスフォーラム 5F 会議室
【参加者】約70名

駐チリ特命全権大使 平石好伸氏にチリの現状と今後の展望について話を伺った。講演の内容は以下の通り。

チリの現状
まずお伝えしたいのは、現在のチリの状況はだれも予測できるものでなかったということ。また、今回の講演に先立ち、昨年11月の桑山先生のレポートを大いに参考にさせていただき、感謝している。

昨年10月18日から現在までの死者は31人、負傷者1,359人、逮捕者21,943人。

10月6日のサンティアゴ市地下鉄値上げ発表が契機となり(ただしそれ以前から不満の火種はあった)、同18日に抗議活動が暴徒化。25日にはチリ史上最大のデモが行われ、120万人が参加。概ね平和に行われたが一部が暴徒化した。政府の働きかけで現在暴動は沈静化しているが、国民の不満はくすぶったままである。
10月30日にAPEC・COP25の開催中止を決定。安倍総理のチリ訪問に向けて様々な準備が断ち切られ、APEC直後の日智二国間協定の署名もキャンセルとなり、二国間関連イベントにブレーキがかかった状態である。

経済活動指数は昨年10月マイナスに転じ、消費も同様に落ち込んでいる。観光もインバウンド、国内共に振るわない。為替はチリペソ安が進み、12月にはチリ中銀の為替介入により若干持ち直したもの、再びペソ安が続いている。輸出はチェリー、食肉などの落ち込みが大きい。失業率は現在7%程度で、今後悪化する可能性もある。

ピニェラ政権について
1月時点での大統領の支持率は6%(ただし憲法上の規定により自ら辞任できない)。社会危機発生直後のピニェラ政権による対応は、緊急事態宣言・夜間外出禁止令、地下鉄料金値上げ停止などであったが、抗議活動は止まず、閣僚(側近)の交代、APEC・COP25開催中止に追い込まれた。11月15日に新憲法制定に関する与野党間合意が行われた。

10月18日の抗議活動に至った背景
① 中間層の失望と怒り(2000年以降急増した中間層と上流層との格差の拡大)
② 経済・社会格差(所得再分配の不足、教育格差、生活費高騰)
③ 薬局チェーンカルテルや軍・警察の汚職事件
④ ピニェラ大統領のチリの国際地位向上(G7、G20、APEC)など外交への傾倒と内政軽視の姿勢

今後の展望
2022年3月までに7回の選挙が控えている。まず本年4月26日の、新憲法の是非を問う投票により、今後2、3年の見通しが決まる。2021年には大統領・議会予備選挙、本選挙および決選投票が行われる。新憲法制定となった場合は、2022年3月に新憲法承認にかかる国民投票が行われる。

「暴力的な3月」(抗議活動が再び盛り上がりを見せると言われる) 3月2日の新学期後の最初の金曜日、8日の国際女性デー、29日の青年戦士の日など、新憲法の議論に大きな影響を及ぼす可能性がある。警察による「人権侵害」を糾弾し、新憲法に賛成する左派、公共秩序維持を重視し新憲法に反対する右派、その両方をまとめる左右横断的な合意が必要となる。

総括
今後は1800人の在留邦人、3000人の日系人への情報提供と安全の確保に努めたい。また、新憲法により厳しくなると予測される投資環境の保全を目指し、内政干渉にならない程度に日本企業側の懸念を伝える意向である。二国間の経済協力は、特に地方に対する草の根的なものも含め引き続き行う。また、チリ・日本に共通する自然災害問題により、防災がらみの協力は欠かせないものであり、更にチリは30年後に現在の日本と同様の高齢化問題に直面することが予測されるため、この点での経験の共有も是非行いたい。

現在歴史の転換点にあるチリに対し、日本は建設的な関与を行っていきたいと考えている。

質疑応答
会場からは、TPP批准の見通しについて、憲法改正前に大統領選挙があることへの疑問、チリからボリビアへ関係改善への働きかけ、次期選挙の見通しについての質問が挙がった。

会場の様子

講演会配布資料(会員限定)

講演会配布資料「チリの最新情勢」(2020.2.17開催)