連載レポート４２：統計に見るラテンアメリカその４ 世界の民主主義指数 （Democracy Index）

連載レポート 42

統計に見るラテンアメリカその４ 世界の民主主義指数 （Democracy Index）

執筆者：桜井悌司（ラテンアメリカ協会常務理事）

英国エコノミスト誌のインテリジェンス・ユニットが２００６年に開始、毎年発表している指数。「選挙過程と多元主義」、「政府の機能」、「政治参加」、「政治文化」、「市民の自由度」、「体制のタイプ」、「大陸」の項目に分類し、合計１０点満点で評価している。調査対象国は、１６７カ国であるが、総じて、北欧の国々が上位を占めている。１０位の内、欧州諸国が８カ国、うち北欧諸国は４カ国、残りは４位のニュージーランドと７位のカナダである。

ラテンアメリカ諸国では、上位に、ウルグアイ（１５位）、コスタリカ（１９位）、チリ（２１位）の３カ国が占め、４０位台には、トリニダード・トバゴ、コロンビア、パナマ、アルゼンチンが、５０台には、ジャマイカ、ブラジル、ペルーが連ねている。最下位クラスに位置するのは、ニカラグア（１２２位）、ベネズエラ（１４０位）、キューバ（１４３位）である。（表１参照のこと）

表２を見ると、ラテンアメリカの民主主義の特徴が理解できる。国によって異なるのは当然であるが、選挙過程・多元主義、市民の自由度、政府の機能などは比較的高得点であるが、政治参加と政治文化は低位に甘んじている。

表３から表５は、２０１５年から２０１９年までの過去５年間にどのようにランキングの変化があったかを表すものである。これによると、順位を大きく落とした国は、ベネズエラ〈９９位→１４０位〉、ニカラグア〈９５位→１２２位〉、キューバ〈１２位３→１４３位〉ボリビア〈８５位→１０４位〉である。ベネズエラは、マドウロ政権で混迷しているし、ニカラグアも政局不安定やボリビアもモラレス大統領の亡命等で政治が安定していない。インテリジェンス・ユニットもラテンアメリカの民主主義の危機として警告を発している。

一方ランクを上げた国もある。例えば、コロンビア〈６２位→４５位〉、エクアドル〈８３位→６７位〉、チリ（３０位→２１位）、ハイチ〈１１３位→１０５位〉、ぺル－（６５位→５８位）、スリナム〈５６位→４９位）である。

来年の調査で、昨年、大規模デモが発生したチリ、コロンビア、エクアドル及び政権が中道から左派に変わったアルゼンチンの順位がどうなるかに注目したい。

表１　民主主義指数　Democracy Index 2019

表２　項目別ラテンアメリカ諸国の得点 ２０１９年

表３　ラテンアメリカ主要国の民主主義指数の推移〈２０１５年～２０１９年〉

表４　過去５年間で大きく順位を落とした国リスト

表５　過去５年で順位を上げた国のリスト