『ブラジル法概論 Introdução ao Direito do Brasil』  阿部 博友 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『ブラジル法概論 Introdução ao Direito do Brasil』  阿部 博友


 ブラジルはわが国のラテンアメリカ企業進出がメキシコに次いで多い国であるが、ブラジル法の研究者層は浅く、ブラジルの法制度、特に経済法について知るための日本語文献は少ない。本書では、第Ⅰ編でまずブラジル法の形成過程、1988年憲法と政治体制、司法制度、憲法下位の行政規範に至る法規範の種類の概要を示し、刑法および刑事訴訟法、2002年民法典の債権法、企業法、物権法、家族法とウィーン物品売買条約、有価証券法、さらに民事訴訟法と倒産法、企業法・資本市場法、経済法、知的財産権法、労働法、そしてブラジルでの企業活動で関わることの多い労使協定、労働訴訟とブラジル法制度を概観している。第Ⅱ編の第1章ではブラジル経済法の論点として、経済秩序の形成と法を1976年株式会社法の概要と特質について、第2章の競争法の歴史的展開では、1934年から61年までの経済法の黎明期、1962年から2010年までの間のブラジル政府の競争政策と競争法の特徴、2011年競争法の執行状況について詳述し、第3章で腐敗防止のための法人処罰法、第4章で国際商事仲裁法の下の仲裁合意の要件、存否の認定、外国仲裁判断の執行可能性について述べ、経済法の分野からブラジル法の発展を検討し、事例として日系企業による外国仲裁判断の承認・執行の申し立てが拒絶された例を示して解説している。
 ブラジルへの日本企業進出において極めて有用な基礎的文献である。著者は、筑波大学でラテンアメリカ法、特にブラジル法を研究し博士号を取得した一橋大学院法学研究科教授。

〔桜井 敏浩〕

(大学教育出版 2020年3月 233頁 2,800円+税 ISBN978-4-86692-069-6 )

〔『ラテンアメリカ時報』 2020年春号(No.1430)より〕