『国境を越えるラテンアメリカの女性たち -ジェンダーの視点から見た国際労働移動の諸相』 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『国境を越えるラテンアメリカの女性たち -ジェンダーの視点から見た国際労働移動の諸相』


 現在ラテンアメリカにおける労働を目的とする移動としては、米国を目指す、南米からスペイン等欧州を目指す「南」から「北」への国際移民が知られているが、その他ラテンアメリカ域内移民として「南」から「南」への移動も常にある。本書は、この現状をジェンダーと国際労働移動に着目し、出身国以外へ1年以上居住する正規移民だけではなく、正式な手続きを経ていない非正規移民、1年未満の期限付き労働契約の季節労働者のうち主に女性を対象に、脆弱性の高い人々が国籍、ジェンダー、エスニシティなど様々な要因がグローバリゼーションの複層的な状況の中で困難を克服しようとしているかを、事例を基に10人のラテンアメリカ研究者が検証したものである。
 序章でラテンアメリカ地域における国際移民の動向と移民の女性化を(松久玲子同志社大学大学院教授)、第Ⅰ部「南」から「北」への労働移動ではエルサルバドル女性の移民の動機と家族(中川正紀フェリス女学院大学教授と中川智彦愛知県立大学講師)、ニューヨークにおけるメキシコ移民女性(北條ゆかり摂南大学教授)、メキシコから米国への「正規」移動の動態(イレネ・アンドラデ=パラ同志社大学博士課程院生)、バルセロナで生きるキューバ人の戸惑い(田村幸子首都東京大学准教授)、ラテンアメリカからスペインへの家事労働分野における女性労働者(深澤晴奈東京大学大学院助教)が、第2部「南」から「南」への域内移動については、メキシコ北東部における中米移民等から「トランジット」移民の家族再統合(浅倉寛子メキシコ大学社会人類学高等研究所教授)、コスタリカにおけるニカラグア女性移民(松久)、コロンビアからチリへの労働移動(柴田修子同志社大学助教)、アルゼンチンにおける女性労働者の社会保障(宇佐美耕一同志社大学教授)を論じており、グローバルな国際労働分業システムが「北」と「南」を問わず、安価で調整弁となる労働力を作り出す機能を務めており、女性に課せられたジェンダーとしての役割・規範は、男性移民に比べて女性が越境する世帯保持や家族統合への責任がより強く内在することを明らかにしている。

〔桜井 敏浩〕

 (松久 玲子編著 晃洋書房 2019年12月 256頁 2,500円+税 ISBN978-4-7710-3248-4 )

〔『ラテンアメリカ時報』 2020年春号(No.1430)より〕