1979年に交換留学生としてプエブラ市に約 1年間滞在したことがあり、海外技術者研修協会(AOTS:現 海外産業人材育成協会)を定年退職した著者が、35年ぶりにメキシコを訪れて、あちこちを訪ね旧友たちと再会するという紀行記だが、単に回顧の旅には終わらせず、原子力発電所がありダム建設反対運動を行っている地で「フクシマ」原発事故の講座をしたい、北の国境や南の国境の先住民の村に出向き話しをしたい、サパティスタ民族解放軍を訪れたいなどの To Do リストを作り、それらを実践し精力的に回った旅の記録。
中部のメキシコ市から始め、ケレタロ、プエブラ、ベラクルス、ハラパ、ハルコムルコなど10か所、北部の米国との国境のフアレス等 4か所でチワワ州のタラウマラ族とも会い、南部のミナティトランの町のほかチアパス州の 3か所を回りマヤ諸民族の村へも足を伸ばして、サパティスタ民族解放軍の最前線の集落を見学し、観光と人々との交流、意見交換を行った日々を詳細に記録している。“ふつうの市民”がここまでやれることを示したやや異色のメキシコ紀行記。
〔桜井 敏浩〕
(現代書館 2020年2月 243頁 2,000円+税 ISBN978-4-7684-5869-3 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2020年春号(No.1430)より〕