連載レポート４３：統計に見るラテンアメリカその５ 世界幸福度ランキング2020

連載レポート44

統計に見るラテンアメリカその５ 世界幸福度ランキング２０２０
World Happiness Ranking 2020

執筆者：桜井悌司（ラテンアメリカ協会常務理事)

３月２０日の「国際幸福デー」には、国連が毎年、「世界幸福度ランキング」というレポートを発表する。２０２０年版も、この３月に公表された。このレポートは、２０１２年に始められ、２０２０年版は、８回目を迎え、世界１５３カ国をカバーしている。

レポートは、２００ページを超えるもので、編集者は、開発論で世界的に有名なJeffreySachs, JohnF.Helliwell, Richard Layard, John-Emmanuel de Neveという４名の錚々たるメンバーである。

各国の国民に「どれくらい幸せと感じているか」を評価してもらった調査に加えて、GDP、平均余命、寛大さ、社会的支援、自由度、腐敗度といった要素を元に幸福度を計るものとなっている。

表１に従って、世界の幸福度の趨勢をみると、ベスト１０の中に、ヨーロッパ諸国が、９カ国が入っており、その内北欧４カ国がすべて、上位にランクインされている。ニュージーランドが唯一、８位に位置している。ベスト１１から２０を見ると、ヨーロッパ諸国が５カ国、ヨーロッパ以外の国では、カナダ（１１位）、オーストラリア〈１２位〉、イスラエル（１４位）、コスタリカ（１５位）、米国（１８位）の５カ国がランクインしている。ラテンアメリカでは唯一、コスタリカがランクインしている。

参考までに日本は、２０２０年の調査では、６２位で、２０１５年、４６位、１６年、５３位、１７年、５１位、１８年、５４位、１９年、５８位と残念ながら、年々ランクを下げている。

表１　Ranking of Happiness 2017-2019  ( World Happiness Report 2020)
世界幸福度ランキング２０２０版

次に、表１及び表３に基づき、ラテンアメリカの幸福度の動向を見てみよう。ベスト３０までに入っている国は、コスタリカ（１５位）、メキシコ（２４位）、ウルグアイ（２６位）、グアテマラ（２９位）である。３０位台をみると、ブラジル、エルサルバドル、パナマ、チリの４カ国が、さらに４０台では、トリニダード・トバゴ、コロンビア、ニカラグアの３カ国が入っている。総じて、ラテンアメリカ諸国は、発展途上国が多く、必ずしも裕福ではないが、ベスト４０までに、全体の２５％に当たる１０カ国が入っていることは注目すべきことである。

さらに、表２に基づき、２０１６年から２０２０年の調査で、順位を上げた国と下げた国をリストアップしてみよう。

大幅にランクアップした国は、ホンジュラスで１０４位から一気に５６位までアップした。以下、、ドミニカ共和国、コロンビア、ジャマイカ、グアテマラ、エルサルバドル、メキシコと続く。反対にランクを落とした国は、ベネズエラ、アルゼンチン、ブラジル、パナマ、エクアドル、ボリビア、ハイチである。左翼政権だった国の幸福度が総じて下がっていることが理解できよう。

表２　幸福度ランキングで上昇した国、下降した国

表３　ラテンアメリカ諸国の過去５年の順位の推移〈2016年～2020年〉

次に、都市の幸福度ランキングも発表されていたのでみてみよう。１位から１０位までの都市を見ると、フィンランドのヘルシンキが１位で、デンマークの２都市、ノルウエーの２都市、スエーデンの１都市と６都市まで北欧の４カ国が占めている。欧州以外でランクインしている都市は、ニュージーランドのウエリントンとイスラエルのテルアビブだけである。その中にあって、コスタリカのサンホセが堂々１１位に入っている。

東京の幸福度ランキングは、７９位である。単純に比較するのは適当ではないが、東京より上位にあるラテンアメリカの都市は、驚くべきことに１８都市を数える。（表４を参照のこと）首都以外の都市も掲載されているので興味深い。

表３　Global Ranking of Cities (World Happiness Report 2020)
ラテンアメリカの主要都市の幸福度ランキング