連載レポート45:メキシコ国歌に見る不思議 前編 El Himno Nacional Mexicano - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載レポート45:メキシコ国歌に見る不思議 前編 El Himno Nacional Mexicano


連載レポート46

メキシコ国歌に見る不思議 前編 El Himno Nacional Mexicano

執筆者:西岡勝樹(日本旗章学協会会員)

第一部 現行法令によるメキシコ国歌について

1.メキシコ国歌について 

メキシコ国歌はその国旗、国章とともにメキシコの3つの国家シンボルの一つである。戦争を議題とし祖国を称賛し、敵国から祖国を守り抜く重要性を歌い上げた抒情豊かな詩編である。
 メキシコ国歌はその作詞が完成した1854年から歌われている、しかし、公式に国歌として認められたのはマヌエル・アビラ・カマチョ大統領による政令が発布された1943年のことである。
 メキシコ国歌はスペインに対する独立の最後の戦いであったタンピコの戦い(1829年、メキシコ再征服の失敗)の戦勝25周年を祝して行われた国歌策定コンクールのために制作されたものであった。
 作詞部門のコンクール優勝者は詩人のフランシスコ・ゴンサレス・ボカネグラ、作曲部門ではスペイン人のハイメ・ヌニョであった。
 その国歌の原作(オリジナル版)は、コーラス部と10詩編で構成されていた。しかし、最終的に国歌として4つの詩編のみに限定され、公式に認められた。
 原作から削除された詩編の中には、ロペス・サンタ・アナ大統領と初代メキシコ皇帝であったアグスティン・イトゥルビデに関する詩編も含まれている。彼らは後にメキシコ歴史学の多数意見によって独裁者であると糾弾されて、その結果、削除されたものである。
 国歌の使用方法も1984年2月8日付け連邦公報にて国章、国旗、国歌についての法令として制定され、公式の祝典行事の使用に限定されることになった。現行法令は2018年11月30日付け最新改定法令によるものである。
出所:https://www.culturagenial.com/es/himno-nacional-mexicano/

2.メキシコ国歌の法的根拠(Legislación)について

国章、国旗、国歌に関する法律は1984年2月8日付連邦公報において新法公布された。
  (西語:LEY SOBRE EL ESCUDO, LA BANDERA Y EL HIMNO NACIONALES)
 2018年11月30日付改定法令による現稿が最新版となる。
 下記は法律の一部抜粋であるが、国歌については 第4条、及び 歌詞、楽譜については 第57条に明記されている。

 
『第一章 国家のシンボルについて
  第一条 国章、国旗、国歌はメキシコ合衆国の国家シンボルである。
     本法律によりそれらの公的要因、それらの特徴を規定し、普及せしめること、
     及び国章、国旗の使用方法、国歌の演奏方法等を定める。
  第二章 国家シンボルの特徴について  
  第二条 国章について(略)
  第三条 国旗について(略)
  第四条 国歌の詞及び楽譜は本法律の特別章に掲載される。
      国歌の楽譜原本は三権の長により国立公文書館、国立図書館、国立歴史博物館に永久保存されるべき。
  特別章 国歌 歌詞、楽譜について
  第五十七条 国歌の公式歌詞は次によるものとする;』

現法律にて国歌として認められている コーラス部と4節について下記に列挙する。
歌詞の翻訳については 拙訳によるものであるため、その点ご留意頂ければ、幸甚です。

CORO
Mexicanos, al grito de guerra
El acero aprestad y el bridón,
y retiemble en sus centros la tierra
Al sonoro rugir del cañón.
合唱部(コーラス)
メキシコ人達よ、鬨の声をあげよ、
剣と馬を用意せよ、
大地がその中心でぐらぐらと揺れる、
大砲の響き渡るけたたましい音とともに。
I
Ciña ¡oh patria! tus sienes de oliva
De la paz el arcángel divino,
Que en el cielo tu eterno destino
Por el dedo de Dios se escribió.
Más si osare un extraño enemigo
Profanar con su planta tu suelo,
Piensa ¡oh patria querida! que el cielo
Un soldado en cada hijo te dio.
第一節
おお、祖国よ、崇高な大天使が汝のこめかみに
平和のオリーブの冠を被せし、
天上にて汝の永遠の運命を神が御指にて綴られし。
しかし、もし不敵にも異国の敵が汝の地をその足で
踏み汚すならば、
おお、親愛なる祖国よ、思い起こすのだ、
天が汝の子らを兵士として授けたことを。
II
¡Guerra, guerra sin tregua al que intente
De la patria manchar los blasones!
¡Guerra, guerra! Los patrios pendones
En las olas de sangre empapad.
¡Guerra, guerra! En el monte, en el valle
Los cañones horrísonos truenen,
Y los ecos sonoros resuenen
Con las voces de ¡Unión! ¡Libertad!
第二節
戦争、祖国の紋章を汚す絶え間ない戦争、
戦争、祖国の旗を血の波に染め抜く戦争、
戦争、山に、谷に、大砲が大音響で轟渡り、
そのこだまする残響音が『団結、自由』の声とともに鳴り響く戦争。
III
Antes, patria, que inermes tus hijos
Bajo el yugo su cuello dobleguen,
Tus campiñas con sangre se rieguen,
Sobre sangre se estampe su pie.
Y tus templos, palacios y torres
Se derrumben con hórrido estruendo,
Y sus ruinas existan diciendo:
De mil héroes la patria aquí fue.
第三節
おお、祖国よ、汝の無防備な子供たちの前に、
くびきの下に奴らの首を曲げ屈服させよ、
汝の田畑を血でまき散らされ、
その血に染まる大地に奴らの足跡を刻むのだ。
そして、汝の寺院、宮殿、塔楼がけたたましい音とともに崩れ落ち、
その遺構は、
『幾多の祖国の英雄たちからここに祖国となりし」を語り続けるのだ。
IV
¡Patria! ¡patria! Tus hijos te juran
Exhalar en tus aras su aliento,
Si el clarín con su bélico acento
Los convoca a lidiar con valor.
¡Para ti las guirnaldas de oliva!
¡Un recuerdo para ellos de gloria!
¡Un laurel para ti de victoria!
¡Un sepulcro para ellos de honor!
第四節
祖国よ、祖国よ、汝の子らは汝に誓う、
汝のために最後の息が尽きるまで。
戦いのリズムを奏でるラッパが鳴り響けば、
彼らを勇気ある戦いに誘うことだろう。
汝の為、オリーブの冠、
栄光の彼らの記憶、
汝の為の勝利の月桂樹、
栄誉の彼らの墓標。

以上 第一部終了

 

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