執筆者:桜井悌司(ラテンアメリカ協会常務理事)
この調査は、2002年に、パリに本部を持つ「国境なき記者団」と呼ばれるNGO団体によって行われ、世界の180カ国を対象に調査している。組織が作成した質問票を集計したものである。質問は、世界の20言語に翻訳され、87項目に及ぶ。大別すると、①多元性(Pluralism)、②メデイアの独立性(Media Independence)、③メデイアの環境(Media Environment)と自己検閲(Self-Censorship)、④立法的枠組み(Legislative Framework)、⑤透明性(Transparency)、⑥ニューズや情報の生産をサポートするインフラの質(Quality of the infrastructure that supports the production of news and information)、⑦濫用(Abuse)(濫用と暴力のレベル)の7項目となっている。
世界のランキングを見ると、ノルウエー、フィンランド、デンマーク、スエーデンが上位4位まで占めている。ベスト107までにヨーロッパの国が、7か国が入っている。ラテンアメリカ関係では、やや新鮮な驚きであるが、ジャマイカとコスタリカが堂々6位と7位を占めている。詳細は、下表の通りであるが、. 日本は66位と低位に甘んじている。米国は、45位、中国は、177位となっている。
4月23日付け日本経済新聞によれば、同組織の事務局長のクリストフ・ドロワール氏によると、「さまざまな危機を抱えるジャーナリズムの将来に取り、今後10年が決定的な意味を持つ」と発言しており、新型コロナウイルスの世界的流行で、各国の政治情勢など、信頼できる情報を得る権利を阻害する要因が明確になっていると指摘した。コロナの影響によって、来年の調査結果がどうなるかフォローする必要がある。
世界順位 | 国名 | 点数 | LA順位 | 国名 | 点数 |
1位 | ノルウエー | 7.84 | 1位(6位) | ジャマイカ | 10.51 |
2位 | フィンランド | 7.93 | 2位(7位) | コスタリカ | 10.53 |
3位 | デンマーク | 8.13 | 3位(19位) | ウルグアイ | 15.79 |
4位 | スウエーデン | 9.25 | 4位(20位) | スリナム | 17.50 |
5位 | オランダ | 9.96 | 5位(36位) | トリニダード・トバゴ | 23.22 |
6位 | ジャマイカ | 10.51 | 6位(51位) | チリ | 27.31 |
7位 | コスタリカ | 10.53 | 7位(53位) | ベリーズ | 27.50 |
8位 | スイス | 10.62 | 8位(55位) | ドミニカ共 | 27.90 |
9位 | ニュージーランド | 10.69 | 9位(64位) | アルゼンチン | 28.78 |
10位 | ポルトガル | 11.83 | 10位(74位) | エルサルバドル | 29.70 |
11位 | ドイツ | 12.16 | 11位(76位) | パナマ | 29.78 |
12位 | ベルギー | 12.57 | 12位(83位) | ハイチ | 30.20 |
13位 | アイルランド | 12.60 | 13位(90位) | ペルー | 30.94 |
14位 | エストニア | 12.61 | 14位(98) | エクアドル | 32.62 |
15位 | アイスランド | 15.12 | 15位(100位) | パラグアイ | 32.97 |
16位 | カナダ | 15.29 | 16位(107) | ブラジル | 34.05 |
17位 | ルクセンブルグ | 15.46 | 17位(114位) | ボリビア | 35.37 |
18位 | オーストリア | 15.78 | 18位(116位) | グアテマラ | 35.74 |
19位 | ウルグアイ | 15.79 | 19位(117位) | ニカラグア | 35.81 |
20位 | スリナム | 17.50 | 20位(130位) | コロンビア | 42.66 |
29位 | スペイン | 22.16 | 21位(143位) | メキシコ | 45.45 |
34位 | フランス | 22.92 | 22位(147位) | ベネズエラ | 45.66 |
35位 | 英国 | 22.93 | 23位(148位) | ホンジュラス | 48.20 |
42位 | 韓国 | 23.70 | 24位(171位) | キューバ | 63.81 |
45位 | 米国 | 23.85 | |||
66位 | 日本 | 28.86 | |||
177位 | 中国 | 78.48 | |||
対象国 | 180カ国 |
次にラテンアメリカとカリブ諸国の報道の自由度を見てみよう。
ジャマイカの6位、コスタリカの7位は前述したが、以下、ウルグアイ、19位、スリナム、20位、トリニダード・トバゴ、36位、チリ、51位、ベリーズ、53位、ドミニカ共和国、55位と続く。総じて中米・カリブの国々の報道自由度が高いと言える。
その他ラテンアメリカの大国の、ブラジルは、107位、アルゼンチンは、64位、ペルーは、90位、コロンビアは、130位、メキシコは、143位となっている。
2016年から2020年の過去5年の推移でみると、大きくランクを上げている国は、ベリーズ、パナマ、パラグアイで、反対にランクを大きく下げている国は、ニカラグア、ハイチ、チリ、ボリビア、エルサルバドルである。
表2 ラテンアメリカ主要国の「報道の自由ランキングの推移
(2016年~20年)
LA順位 | 国 名 | 2020年世界ランク | 2019年 | 2018年 | 2017年 | 2016年 |
1位 | ジャマイカ | 6位 | 8位 | 6位 | 8位 | 10位 |
2位 | コスタリカ | 7位 | 10位 | 10位 | 6位 | 6位 |
3位 | ウルグアイ | 19位 | 19位 | 20位 | 25位 | 20位 |
4位 | スリナム | 20位 | 20位 | 21位 | 20位 | 22位 |
5位 | トリニダード・トバゴ | 36位 | 39位 | 39位 | 34位 | 44位 |
6位 | チリ | 51位 | 46位 | 38位 | 33位 | 31位 |
7位 | ベリーズ | 53位 | 53位 | 47位 | 41位 | 36位 |
8位 | ドミニカ共和国 | 55位 | 55位 | 59位 | 59位 | 62位 |
9位 | アルゼンチン | 64位 | 57位 | 52位 | 50位 | 54位 |
10位 | エルサルバドル | 74位 | 81位 | 66位 | 62位 | 58位 |
11位 | パナマ | 76位 | 79位 | 91位 | 96位 | 91位 |
12位 | ハイチ | 83位 | 62位 | 60位 | 53位 | 53位 |
13位 | ペルー | 90位 | 85位 | 88位 | 90位 | 84位 |
14位 | エクアドル | 98位 | 97位 | 92位 | 105位 | 109位 |
15位 | パラグアイ | 100位 | 99位 | 107位 | 110位 | 111位 |
16位 | ブラジル | 107位 | 105位 | 102位 | 103位 | 104位 |
17位 | ボリビア | 114位 | 113位 | 110位 | 107位 | 97位 |
18位 | グアテマラ | 116位 | 116位 | 116位 | 118位 | 121位 |
19位 | ニカラグア | 117位 | 114位 | 90位 | 92位 | 75位 |
20位 | コロンビア | 130位 | 129位 | 130位 | 129位 | 134位 |
21位 | メキシコ | 143位 | 144位 | 147位 | 147位 | 149位 |
22位 | ベネズエラ | 147位 | 148位 | 143位 | 137位 | 139位 |
23位 | キューバ | 171位 | 169位 | 172位 | 173位 | 171位 |
以 上