執筆者:桜井悌司(ラテンアメリカ協会常務理事)
米国の引退生活の専門誌である「International Living」誌は、毎年、米国人にとっての引退後の生活を過ごす上で、どの国が最も適しているかについてのランキングを発表している。この調査は、下記の10の項目を参考にしている。
Housing(住宅状況)
Benefit & Discount (国によっては、外国人引退者に対し、各種恩典や割引制度を提供している国がある)
Visas & Residence (ビザや永住権)
Cost of Living(生計費)
Fitting in and Entertainment(友達作りやエンターテインメント)
Healthcare(ヘルスケア状況)
Development(道路、水道、衛生状況、生活水準等の発展度合い)
Climate〈気候〉
Governance(安定した安全な環境、個人の自由、官僚制度の少なさ等)
Opportunity(ビジネスの機会、地方政府による支援等)
この調査では、1位から24位までのランキングを発表しているが、米国人の立場から見た生活適合国なので、必然的にラテンアメリカの国々が多数ランクインしている。下記に、表で紹介するが24カ国の内、11カ国がラテンアメリカの国である。とりわけベスト10の中に、パナマ(2位)、コスタリカ(3位)、メキシコ(4位)、コロンビア(5位)、エクアドル(6位)と上位に5カ国も入っていることは注目に値する。
順位 | 国 名 | ビザ・住居 | 気候 | 健康管理 | 生計費 | 総合点 |
1位 | Portugal | 75 | 88 | 98 | 85 | 86 |
2位 | Panama | 95 | 80 | 94 | 89 | 85.8 |
3位 | Costa Rica | 88 | 80 | 96 | 82 | 85.3 |
4位 | Mexico | 86 | 86 | 88 | 86 | 83.8 |
5位 | Colombia | 88 | 87 | 94 | 88 | 83.4 |
6位 | Ecuador | 88 | 87 | 84 | 90 | 82 |
7位 | Malaysia | 93 | 62 | 93 | 85 | 81.9 |
8位 | Spain | 70 | 72 | 97 | 81 | 76.8 |
9位 | France | 68 | 82 | 85 | 66 | 76.4 |
10位 | Vietnam | 68 | 60 | 84 | 92 | 76 |
11位 | Malta | 76 | 63 | 79 | 68 | 75.7 |
12位 | Cambodia | 80 | 57 | 80 | 93 | 75.6 |
13位 | Peru | 85 | 87 | 82 | 91 | 74 |
14位 | Ireland | 63 | 58 | 82 | 71 | 73.9 |
15位 | Bali * | 57 | 62 | 72 | 86 | 70.3 |
16位 | Italy | 57 | 58 | 84 | 86 | 67.9 |
17位 | Thailand | 57 | 58 | 80 | 87 | 67.8 |
18位 | Belize | 87 | 58 | 63 | 80 | 67.4 |
19位 | Uruguay | 58 | 58 | 66 | 76 | 65.7 |
20位 | Roatan ** | 75 | 58 | 65 | 78 | 66.7 |
21位 | Dominican Rep | 57 | 57 | 57 | 77 | 65.3 |
22位 | Croatia | 70 | 61 | 72 | 88 | 63.2 |
23位 | Nicaragua | 70 | 61 | 72 | 88 | 63.2 |
24位 | Bolivia | 57 | 67 | 57 | 92 | 62.8 |
出所: The annual Global Retirement Index 2020
*Indonesia
**Honduras
1位から10位までは、同誌の地域別特派員のコメントがついているので、簡単に紹介しよう。特派員はそれぞれの国の魅力や生計費について紹介しているが、米国人の観点からのものであり、日本人が、実際に引退後の年金生活を過ごす上では、確認が必要である。
第1位 ポルトガル
「魅力」1年中快適な気候、手頃な生活費、古代遺跡、素晴らしい博物館、全国どこへ行ってもフレンドリーで優雅な国民、質の高いヘルスケア―、美味しい食事とワィン、高い安全性、都市部では英語が通じる、ハイキング、ゴルフ、ウインドサーフィン等々アウトドア―を楽しめる、リスボン、オポルト、アルガルヴェがお勧め
「生計費」2,500ドルで贅沢ではないが快適な生活。簡単なランチなら10ドル。カシュカイスやアルガルベの外国人ビーチを選択すれば、3,000ドル、スープ、メイン、飲み物、デザート、コーヒーといったシンプルなランチは、10ドル程度
第2位 パナマ
「魅力」食べ物、ビール、ジャズ、映画、ゴルフ、テニス、ビーチ等を楽しめる生活、医療制度、英語が通じる、通貨はドル(バルボアと併存)、活気に満ちたコミュニティ、世界最高水準の退職者プログラム(Pensionado Program)
「生計費」パナマシテイのオーシャンビューのコンドミニアムが1,500ドルで借りられる。特派員は、シングルで家賃、食料品、エンターテインメントを含め月額2,600ドルで生活している。他国での収入は免税。退職者プログラムでは、航空賃25%、ホテル等宿泊費は最大50%割引
第3位 コスタリカ
「魅力」熱帯気候、低生活費、一流でリーゾナブルな医療、自然の美しさ、掘り出し物の不動産、中米のスイス、安定した民主主義と平和を愛する国民性、アウトドア・ラブ・カルチャー(ハイキング、ダイビング、ゴルフ、釣り、乗馬、ヨガ等)、地元産の果物、野菜、シーフード、フレンドリーな国民、外国人コミュニテイLGBTに寛大、サンホセやグアナカステがお勧め
「生計費」月額2,000ドルでは、必ずしも贅沢な生活はできない。毎月の報告された所得の7~11%を支払えば、社会的医療プログラムの利用が可能
第4位 メキシコ
「魅力」多様性のある自然(ビーチ、湖、農地、山々、砂漠等)、活気に満ちた生活と文化、充実した国民医療計画、生計費の安さ、フレンドリーな国民、外国人コミュニティ、人気のあるスポットは、カンクン、チャパラ湖、サンミゲール・アジェンデ、海岸沿いの隠家的な場所
「生計費」場所に応じて、家賃やヘルスケアを含め1,500ドルから3,000ドル。全国シニア割引制カードによって10%から20%の割引
第5位 コロンビア
「魅力」。Perfect springと呼ばれる気候の良さ、世界で2番目に生物多様性に恵まれた国なので、気候や環境に応じて住む場所(例えば、カルタヘナ、メデジン、ぺレイラ、マニサーレス等)を選べる、退職ビザの取得が容易、医療制度が良い(WHOで世界22位、米国やカナダより上位)、国民はフレンドリー、生計費が安い
「生計費」メデジン市の場合、場所、ライフスタイル、医療ニーズによって異なるが、カップルで1,030ドルから2,720ドル。4ドルで朝食や昼食が、8ドルで素敵な夕食が食べられる
第6位 エクアドル
「魅力」多様性のある気候〈1年中暖かい海岸気候、アンデスの温暖な気候等)、住む場所の多様性(小さな村での生活、大都会の利便性等)、自然の美しさ、生計費の安さ、フレンドリーな国民
「生計費」15万ドルで太平洋ビーチのコンドミニアムの購入が可能、クエンカ市のダウンタウンで500ドル出せば、2ベッドルーム、2バスルームのコンドミニアムを借りられる。場所やライフスタイルにもよるが、カップルで1,650ドルから1、825ドルで生活可能、高齢者は航空賃半額、自動車を持つ必要が無い(バス、タクシー等が安価)家政婦が1日あたり、、10ドルから20ドルで雇用できる
第7位 マレーシア
「魅力」ペナンの場合:牧歌的なビーチ、美しい島々、手つかずの熱帯雨林、法律が英国のシステムなのでなじみ易い、英語が問題なく通じる、アウトドア・ライフスタイル(スイミング、ハイキング、スキューバ・ダイビング等)が楽しめる、生計費が安い
「生計費」カップルで、家賃込み、1,800ドルで快適に過ごせる。中華料理(10品)の1人当たりの価格は、5.70ドル程度
第8位 スペイン
「魅力」多様性に富む気候と自然、食品安価(野菜・果物は多様性があり、豊富)、国民がフレンドリー、食事が美味しくてリーゾナブル、鉄道旅行・バス旅行が快適、ビーチが素晴らしい、医療・歯科医療も優れている。同性結婚やLGBTに対し寛大。
「生計費」カップルで月額2,500ドル程度。食事は、定食で11ドルから20ドル。フルコースで30ドル以下。医療の経費はリーゾナブル
第9位 フランス
「魅力」美味しい食べ物・ワイン、オートクチュール、良い気候、手つかずの田舎、きらびやかな文化、カラフルな伝統と歴史、優れた医療
「生計費」パリやリョンなど主要都市以外では、カリフォルニアの家賃の3分の1くらい。カップルで、住宅費とヘルスケアを含め、月額2、085ドルから2、483ドル。食事も38ドル程度でしっかり食べられる。医療も保険制度で70%がカバーされ、米国より安価。電気、ケーブルテレビ、水道料金は米国並み。
第10位 ベトナム
「魅力」近代的で進歩的な都市、古代の遺跡、混雑していないビーチ、険しい山々、友好的な国民性、フランスの影響、急速な発展により、質の高い医療、道路等インフラ、利便性が高まった。英語が相当通じる。
「生計費」ホーチミンやハノイでも、カップルで、月額1、500ドル以下で過ごせる。ある米国人夫婦は、月額2、700ドルで予算を組んでいるが、年数回の外国旅行も含まれる。電気水道ガス料金は月に120ドル、食料雑貨費は270ドル程度。
以 上