『スペイン・アメリカ・キューバ・フィリピン戦争 -マッキンリーと帝国への道-』 林 義勝 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『スペイン・アメリカ・キューバ・フィリピン戦争 -マッキンリーと帝国への道-』 林 義勝


 スペイン植民地だったキューバとフィリピンではそれぞれ既に独立運動が起きていた19世紀後半、米国政府はこうした現地革命勢力と「協力」しながらスペインと戦い追い出したが、勝利の後には現地の独立軍との約束を反故にしてキューバを保護国化、フィリピンは併合した。当時キューバ人は、搾取への反発で高まった反スペイン感情から独立戦争を開始、次第に革命軍が優勢になり、スペインとの交渉は完全な独立を目指すものだった。富裕層の中には、砂糖の輸出市場として依存を強めていた米国に社会的秩序を取り戻したいと介入を求める者も現れ、それとは別に米国の世論はキューバ革命軍に好意的になってきていた。時のマッキンリー米大統領は自らのリーダーシップで対外政策を動かしていることを示すべくキューバの内戦問題に介入し、スペインと外交折衝を開始するとともに戦争の準備を進めた。1897年に米国はキューバ在住米国人を保護するためとしてハバナ港へ戦艦メイン号を派遣したが、停泊中の同号が原因不明の爆沈事故で米水兵多数が死亡した事件を契機に、翌1898年に米国はスペインに宣戦布告した。スペインとの対峙はキューバだけでなく、プエルトリコ、フィピンへも陸海軍を派遣した。米国はキューバに侵攻により、3年以上革命軍との戦闘で消耗していたスペイン駐屯軍をさしたる犠牲を払うことなく降伏させたが、その直後からキューバ革命軍は両当事者から無視された。
 米国政府・議会はスペインとの戦争後のキューバ統治体制に考えを巡らし、議会がスペインへの宣戦布告の際に付与したテーラー修正事項では、スペインの圧政に苦しむキューバの人々に平和と自由をもたらすためとあったのだが、米国政府はキューバ共和国の独立を支持することなく休戦協定締結後は革命軍を解散させ、米陸軍を増派して軍政を敷き、ついに1901年キューバを保護国化し「独立」は名ばかりとしたのである。
本書は、同時期プエルトリコとフィリピンを併合した米国の帝国主義の動きとそれに対する反帝国主義運動の動きを克明に追っており、「米西戦争」と呼ばれているキューバ支配の始まりの経緯を知ると、現在のキューバ政権と国民の“歴史的な”反米感情の背景がよく理解できる。著者は、19世紀後半に米国が海外領土獲得政策とマッキンリー政府の政策に反対した反帝国主義運動を30年来研究してきた米国史学者で明治大学教授。

 〔桜井 敏浩〕

 (彩流社 2020年3月 354頁 3,800円+税 ISBN978-4-7791-2663-5 )
 〔『ラテンアメリカ時報』 2020年夏号(No.1431)より〕