同社から2001年に刊行された旧版(全12巻)の内容を大幅に刷新したもので、ラテンアメリカの8か国を取り上げた本巻については、構成を執筆者の専門性を引き出すために自由化し、単なる制度・政策・実態の紹介にとどまらず歴史的考察、啓発的な実践事例を盛り込み、近年提起されるようになってきた福祉社会に関わる問題・テーマをも取り上げ、比較している。
序章の研究視点(宇佐見同志社大学教授)から始まり、社会扶助政策をめぐる政治を念頭にしたメキシコの社会保障(畑 恵子早稲田大学名誉教授)、政権交代の社会政策への影響の観点からのコスタリカ(丸岡 泰石巻専修大学教授)、分断的社会における普遍化への取り組みと課題を取り上げたペルーの社会福祉(遅野井茂雄筑波大学名誉教授)、脆弱な経済と多民族社会における制度改革を試みるボリビア(岡田 勇名古屋大学准教授)、転換の予兆を見せるブラジルの社会福祉(近田亮平アジア経済研究所副主任研究員)、先進国化への道と新たな連帯を模索するチリにおける社会保障・社会福祉制度の形成と展開(浦部浩之獨協大学教授)、周辺部社会民主主義の憂鬱が内在するウルグアイの社会福祉(内田みどり和歌山大学教授)、インフォーマルセクターを包摂する社会的保護をもつアルゼンチンの社会保障制度の変容(宇佐見教授)と、ラテンアメリカの社会福祉制度の最新の状況を比較的に理解することができる論集。
〔桜井 敏浩〕
(旬報社 2020年3月 294頁 全12巻-本書は第2期6冊の4冊目で1期セット60,000円+税 ISBN978-4-8451-1598-3)
〔『ラテンアメリカ時報』 2020年夏号(No.1431)より〕