世界に遺るモニュメントを、先史時代のエジプト古王国の巨大ピラミッド、ユーラシア草原の大型墳墓、北アメリカの先住民遺跡、英国ポスト・ローマ期の墳丘墓、古代中国の皇帝陵とともに、「アンデス文明におけるモニュメントと権力生成」(関 雄二国立民族学博物館人類文明誌研究部教授)と「古代アメリカのモニュメント-象徴する世界観と王権」(杉山三郎アリゾナ州立大学研究教授・岡山大学客員研究員)が論じられている。本書後半は「日本の古墳は巨大なのか」で、王墓である古墳の巨大化とその終焉、社会の変化、人間行動・古墳築造と社会関係を分析している。
アンデス文明での神殿建設を、権力の萌芽、神殿埋葬から神殿更新への移行・更新のメカニズムを通して権力生成を論じ、古代メソアメリカ文明については、モニュメントと社会階層化をティオティワカンの「月」「太陽」のピラミッド、「城塞」と「羽毛の蛇神殿」の事例で論じ、さらに古代計画都市のモニュメント性と機能を分析している。
世界と日本の異なる時期・地域の古代モニュメントを、階層化がまだ明確でない人類社会第一段階と個人が支配し階層が生じた第二段階のモニュメントの普遍性と多様性を比較することによって、日本の古墳とその社会の特質を人類史全体の中で理解しようという意欲的な研究論集。
〔桜井 敏浩〕
(国立歴史民俗博物館 松木武彦・福永伸哉・佐々木憲一編 吉川弘文館 2020年3月 265頁 3,800円+税 ISBN978-4-642-09355-2 )