2020-10-12 11:03:28
【演題】新型コロナウイルス感染症の中南米に及ぼす影響と日本の中南米外交
【日時】2020年10月5日15:00~16:40
【場所】オンライン
【講師】外務省 中南米局長 林 禎二氏
【参加者】123名
7月に中南米局長に就任された林局長から、①中南米諸国の新型コロナ感染状況及び各国の対応、②中南米諸国と主要国との最近の動き、③コロナ禍の中での日本の対中南米外交、の3つのテーマについて新しく、詳しい内容のお話をいただいた。講演後の質疑応答では、米国大統領選挙結果による対中南米政策、ベネズエラ情勢、今後の中南米の政治地図、中国の攻勢の影響、TPPの今後、など多くの質問が出され、丁寧にお答えいただいた。
(講演会資料は参加者に電子ファイル送付済)
I.中南米諸国の新型コロナ感染状況及び各国の対応
- 外務省は毎日、各国のコロナ感染状況をモニタリング・分析している。
- セントルシアを除く中南米諸国は日本への入国禁止国(レベル3)。
- 直近2週間の感染状況はアルゼンチンを除いてヤマを越えた。
- 中南米諸国は3月という早い時期から水際対策を取り、ロックダウンを導入。
- しかし、5月には世界の感染拡大の中心地となる。感染拡大の背景・要因は、貧困地域・貧困層の存在と脆弱な医療体制。貧困層は働かざるを得ず、サンパウロでの自粛率は5割だといわれる。
- ワクチン確保状況は不透明であり、中南米がワクチンの臨床試験の場となっているという話もある。
- 中南米の今年の経済成長率についてIMFは9%減、世界銀行は7%減とみている。
- 資源価格は簡単には回復しないが、大豆やトウモロコシの価格は年初より上がっている。
II. 中南米諸国と主要国との最近の動き
- 中国の対中南米外交:「一帯一路」構想。最近台湾支持から中国支持に変えた国(パナマ、ドミニカ(共)、エルサルバドル)。
- 2020年7月22日に中国・中南米諸国外相会合を開催、13カ国参加。10憶ドルの借款と200憶ドルのインフラ整備(輸出入銀行融資)。
- 米国の対中南米外交は、特定テーマ(ベネズエラ、キューバ、移民、環境)に沿った関わり。ODAの供与国として中南米はトップ10に入らない。
- 9月12日のIDBの総裁選挙で初めて米国人が総裁に選出された。
- 米国はサイバーセキュリティを問題視しており、5G 展開の中で信頼できるネットワークを造りたい;ポンペオ国務長官によるクリーン・パス構想。
- 最近のベネズエラ情勢;12月に国会議員選挙を行えるか?
- 中南米の米国、中国、日本との貿易額・割合の推移:米国は金額は増加したが割合は減少、中国は金額・割合共に大幅増加、日本は、割合は減少、金額はやや増加。
III. コロナ禍の中での日本の対中南米外交
- キーワードはニューノーマル(新常態)。人の往来が止まった。
- 現在はWithコロナで出来ることをやっている。先々週から局長級政策協議をパラグアイ、ウルグアイ、コロンビアと行ってきた。対面に比べて利点もあり(経費節減等)、今、1:1の政策協議ではなく、セミナーが出来ないか考えている。招聘者会議や招聘者のフォローアップ会議も。
- 人の往来再開に向けた段階的措置:ビジネス・トラック→レジデンス・トラック
- 人の往来再開後にTPP、コロンビアとのEPAに取組む。
- 菅新政権のキーワードであるデジタル化を中南米で展開(地デジ)。テレビだけでなく、5Gを含めたデジタル政策。どのような切り口で何が出来るか?