『知られざる福島移民― キュ-バ、ハワイ、ペルー、カナダ』  紺野 滋  | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『知られざる福島移民― キュ-バ、ハワイ、ペルー、カナダ』  紺野 滋 


キューバに渡った日本移民350人が第二次世界大戦中にフベントゥ島(旧名ピノス島)の刑務所に収容され、その中に福島県民が13人いたという2016年10月30日配信の共同通信記事をきっかけに、戦前には東北では最も多かった福島県移民の足跡をハワイ、カナダ、キューバ、南米のペルーまで取材し、それぞれの地での福島県から渡った移民の歩みを語り継ぐために彼らの生きた証を記録にして残そうと、福島県北部に在住する元新聞記者が纏めたドキュメンタリー。

キューバに渡った人たちは、ハバナで雑貨商などの商業や製糖工場等の労務者、ピノス島での農業に従事した。フベントゥ島では現在も農畜産業を営む一家を訪れたが、当初の開拓、営農の苦労に加え、戦時中の米国に迎合した日本人敵視策での過酷な強制収容など苦労が続いた。ペルーに渡った人たちもまたその道のりは苦難に満ちたものだった。大戦中には敵国民として拘留され、有力者は米国の収容所にまで送られた。戦後米国の収容所が閉鎖されても、ペルー政府は排日移民法を理由にその僅かな人数しか帰国を認めず、大半は日本に向かったが、敗戦直後の日本での生活、ペルー生まれの子女の日本語の習得など苦労が続いた。一方、ペルーに残った人たちの中には、福島県大玉村出身でマチュピチュ遺跡の麓にある村の初代村長を務めた野内与吉氏がいる。

〔桜井 敏浩〕

(歴史春秋社 2020年7月 359頁 1,600円+税 ISBN978-4-89757-973-3 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2020年秋号(No.1432)より〕