メキシコから中米にかけて紀元前2000年頃から1521年のコルテスによるメキシコ征服まで栄えたメソアメリカ文化は、アステカ、マヤ、オルメカ、テオティワカン、サポテカの諸文化は、石器を主要利器にして高度な都市文明、暦・宗教を発展させた。これまでの解説書の多くは文章でアステカ、マヤの記述が主であったが、本書はメソアメリカ全体を見る目で、個別のモニュメントやそれぞれの文化の違いなどを多数のきれいな図版を用いて事典形式で解説している。まず「主要人物」では13人の王を碑文などにより業績を紹介し、「権力、儀式、政治」ではシャーマン、神官、生け贄等の儀式、暦、祭り、球技、神殿、巨石人頭像などを、「日常」で誕生・洗礼、結婚、娯楽、食事、死、階層、司法、音楽・踊り、戦争、占術、文字を、「神々と宗教」では神々と太陽、月、雨神、地下界などを、「遺跡と都市」では30か所の都市遺跡を解説している。「付録データ」で地図、博物館、年表、用語集、参考文献、人名・事項索引が付けてある。
著者は先コロンブス期文化を学際的に研究しているミラノ大学講師。日本語版監修はアステカ史、メキシコ植民地時代史を専門とする専修大学教授。
〔桜井 敏浩〕
(モドリュー克枝訳 柊風舎 2020年3月 397頁 15,000円+税 ISBN978-4-8649-8072-2 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2020年秋号(No.1432)より〕