連載パナマ・レポート(6)(2020年10月分) | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載パナマ・レポート(6)(2020年10月分)


連載パナマ・レポート⑥

連載パナマ・レポート⑥ (2020年10月分)

執筆者:Ruben Rodriguez Samudio(北海道大学法学研究科研究員)

I. 新型コロナウイルスの現状

10月25日時点で、パナマにおける新型コロナウィスルの感染者は129,200人、死亡者は2,633人、回復者は105,231人と確認された。7月下旬の1日当たりの感染者は1,000人を超えたが、8月下旬からは減少している。新感染者の減少を確認した政府が、10月24日から日曜日の外出禁止命令と海岸立入禁止命令を解除し、交通機関、企業の再開を許可したが、23時から5時までの夜間外出禁止令は続いている。
運航再開に伴ってパナマ・メトロ当局は、日曜日の運航を再開することを発表した。新型コロナ・ウイルスに対する措置として、施設内の会話禁止、マスクを着用しない乗客に150ドルまでの罰金、または、乗客の退去が採用されたことを発表した。

さらに、トクメン国際空港は、10月12日に国際線を再開し、8日間で約5万4千人の旅行者が入国した。パナマに入国を求める者は、着陸の48時間以内に行われたPCR検査の陰性結果提出が求められている。トルコの国営航空会社ターキッシュ エアラインズが、11月1日にパナマまでの直通便を再開する。

II. 政治

A. 保健省と社会保険庁の医療サービス合併

パナマ国会は、10月13日に保健省と社会保険庁の医療サービスを合併する「保健医療への普遍的アクセスに関する法」を可決した。パナマの医療制度に関しては、保健省と社会保険庁が、患者の診断を行っている。社会保険庁が担当している医療施設では、国民健康保険に加入している者のみが診断される。これに対して、保健省の管理している医療施設では、国民健康保険の加入を問わず、患者の経済的な状況に合わせて診断を受けることができる。

ラウ社会保険庁管理局長、商工会議所、労働組合連合会は、「保健医療への普遍的アクセスに関する法」に反対し、より包括的な議論を求めている。コルティソ大統領は、11月から開始する学際議論では、医療システムの問題が取り扱われることを明らかにした。モスコソ政権(1999-2004)から初めて、各政権が保健省と社会保険庁のサービス合併を検討したが、様々な批判を受けて、中止となっていた。

B. 同性愛結婚

パナマ最高裁判所では、同性愛結婚を禁止する家族法典規定についての違憲審査手続きが進んでいる。2016年に、原告は、イギリス法の元で行われた同性愛結婚の認可を求め、結婚禁止は、パナマ憲法に違反するため、違憲審査を開始した。今年10月5日に、米州人権裁判所は、パナマ家族法典の規定が人権を侵害すると述べ、パナマ政府に同性愛結婚の認容を求めた。これに対して、パナマ・カトリック教会は、米州人権裁判所の意見を批判し、同性愛結婚に反対している。最高裁判所判事の意見が分かれているため、判決の引き渡しは見送られている。

C. 銀行ローン等返済猶予協定の延長

政府により今年5月に結ばれた銀行ローン等返済猶予協定は、2021年6月30日まで延長されると発表された。協定は、新型コロナ・ウイルス拡散によって経済的状況が悪化した者に、個人ローン、住宅ローン、商業融資、自動車ローン、農業金融、クレジットカードの返済猶予を定め、遅延利息を禁止している。9月30日時点、約90万人が協定の対象となり、約260億ドルのローン等返済が猶予されている。

D. 銀行法の改正

パナマ国会では、利息制限法案、銀行法改正、および銀行倒産法の改正が議論されている。利息制限法案では、クレジットカードの利息上限を月1.5%としている。これに対して、銀行業界は、コスタリカでは6月に利息制限法が発布され、約25万のクレジットカード契約が解約された結果、約18万人が影響を受けていると述べている。さらに、クレジットカードの利息に上限を設けると、国際銀行はパナマの支店を閉店するおそれがあると反論している。

銀行倒産法案では、銀行倒産の手続きを改正し、ローンと貯金の相殺について、新たな算定方法を定め、法律は2018年まで遡って適用されると規定されている。つまり、倒産手続きを受けている銀行にも適用されることとなるため、「特定の者」を救済するための法律として反対する声がある。パナマ憲法は、社会福祉を目的とした法律の効果は、発布日より以前に遡ることを認容している。
さらに、パナマ国会は、10月13日に信用情報法の改正を可決した。改正により個人の信用情報保存期間は7年から5年とされた。さらに、クレジットカードの支払いに滞った後、銀行と支払協定によって返済した者は、この返済が信用情報に反映されるようになった。

III. 経済

A. 経済再開

9月上旬に始まった段階的な経済再開計画は、10月12日に、完全な経済再開となった。10月20日時点で、3月から停止されていた労働契約の20%を占める約8万人が職場復帰している。さらに、9月以降小売業の営業利益は70%まで増加したことが明らかになった。

しかし、農商工会議所連合会は、約50%の企業は、活動を再開できなかったことを明らかにした。また、パナマ・レストラン連合会は、全国レストランの8割が復帰し、売上は、㋈と比べて25%以上増加していると明らzかにしている。そして、パナマ・レストラン連合会は、日曜日の外出禁止命令が解除されたため、売上は更に上がると予想している。ただし、新型コロナ・ウイルスの影響により約1,750社が倒産したとも述べている。

B. 国債
2020年9月時点のパナマ公債は、前年同期比80億ドル増、360億ドルに達したことが明らかになった。360億ドルの内訳は、国内保有70億ドル、海外保有280億ドルとされている。政府は3月に2056年期限の国債、9月には2026年と2060年期限の国債を発行した。近年のパナマ国債は次の通りである。

経済悪化によって経済財政省は、2020年度のGDPは前年比4.5%減少すると予測し、政府が、国会に対して国債上限を2.75%から10%までの増加を求めている。

CEPAL(国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会)、世界銀行、国際通貨基金は、2020年に各々6.5%減、8.3%減と9.0%減を予想している。2021年のパナマ経済については、世界銀行は、6.5%、国際通貨基金は、4%成長すると予想している。さらに、アメリカの格付け機関であるムーディーズは、パナマのインベスターズ・サービスの信用格付をBaa1とし、2021年のパナマ経済は、4.5%成長すると述べている

IV. 外交

A.パナマーコスタリカ国境の封鎖

コスタリカの国内情勢が不安定になったことにより、10月上旬から二週間、パナマとの国境は封鎖された。パナマ側からコスタリカへの入国を求めたトラックの運転手とコスタリカ側でデモを行った者が衝突したため、パナマ警察は、国境近くの町で巡回を強化していた。コスタリカ政府が、10月15日に、デモに参加した者と交渉し、封鎖を解除した。

パナマとコスタリカの国交は逼迫している。コスタリカ政府が、今年5月パナマ発国際トラックの入国を禁止した。6月に、パナマ政府が、コスタリカの乳製品および食肉処理場工場の衛生許可を更新しないことを発表した。コスタリカ入国管理局の車が移民と思われる者をパナマ側に運びホテル前に降ろした映像が、10月22日にパナマ新聞のSNSで公開された。