連載エッセイ80:南米現地レポート その15(2020年11月分) - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ80:南米現地レポート その15(2020年11月分)


連載エッセイ77

南米現地レポート その15(2020年11月分)

執筆者:硯田 一弘(アディルザス代表取締役)

11月2日発

昨日土曜日は友人たちに誘われて久しぶりにテニスを楽しみました。アスンシオンにはGakusei-ryoという建物があって、そこに立派なテニスコートがあって誰でも料金を払えば使用できます。(利用料は1時間5万ガラニ=約760円)

この学生寮、パラグアイの地方に移住した日本人の子弟がアスンシオンの大学で学ぶ際に住むところを提供しようと今から40年以上前にJICAが設立し、その後パラグアイの日本人連合会に譲渡されたとのこと。非常に便利な立地にあって、建物も立派で男子は二階、女子は一階とエリアも分かれています。一か月の寮費は50万ガラニ=約7600円で、かつては常時満室だったそうですが、最近の学生はパラグアイでも共同生活を敬遠する傾向にあるそうで、空室が目立っていました。

この学生寮、総面積が3,000㎡もあって、特にテニス好きの人には魅力的な設備だと思います。アスンシオンにはこの学生寮の他に、北海道会館・高知県人会館・東京農大会館と日本人が建てた寮が沢山あり、今でもバックパッカーや長期滞在者には人気を博しているものの、肝心の学生の利用は少ないようです。コロナ禍は世の中のデジタル化を進めていますが、一方で人間は集団で行動することで力を発揮できる動物でもあります。その集団で行動する能力を磨くには、若い時の寮生活は非常に重要だと思います。

アスンシオンの学生寮も他の寮も部屋に余裕があるようですから、コロナ禍が明けたらパラグアイ旅行の拠点として若い旅行者の皆さんに利用頂くことをお勧めします。

オンライン開催は最近ブームですが、例年10月に光が丘公園で開催されていたパラグアイフェスティバルもコロナ禍の影響で今年はバーチャルでの開催となっています。これも多くのパラグアイ関係者が力を合わせて開催している会ですので、是非ご覧ください。https://www.facebook.com/paraguay.festival.in.Tokyo

若者向けの設備を御紹介しましたが、実はパラグアイには高齢者に魅力的な設備もあります。ヨット&ゴルフクラブという壮大なリゾートエリアの中にある高齢者住宅、Alto Aposento。色々な国籍の高齢者が余生をゆったり過ごす高齢者向け寮の様な設備、こうしたサービスが増えてくるとパラグアイの魅力は幅広い年代の人達に広がるものと期待されます。安眠できる環境が提供できるということが、パラグアイの魅力です。

http://www.altoaposento.com/

11月9日発

チリの国営石油会社ENEXがパラグアイの国営会社PETROPARと提携し、ENEXブランドのガソリンスタンドestación de servicioをオープンしました。
https://www.hoy.com.py/comercio-e-industrias/enex-el-nuevo-emblema-de-combustible-ya-abrio-sus-puertas

パラグアイのモータリゼーションが進んでいることはこれまでもお伝えしてきましたが、この10年ほどでガソリンスタンドの数も急増しており、ブランド毎の競争も激化してきています。二年前パラグアイからの撤退を決めていた隣国ブラジルのPetroBrasのスタンドをCOPETROLが買収し、看板の掛け変えをすることなく営業を続けてきていました。また、アルゼンチンと中国のJVであるAxionがGaleriaショッピングセンターの前のEXXON MOBILの看板を掛け変えたのも4年前。

今回は、新たにチリENEXを大企業カルテスグループが誘致して、看板を掛け変えるだけでなく、設備も一新してサービス拡大を目指すものです。旱魃による水位の低下で河川交通が厳しい状況にある中、 道路の整備も粛々と進められており、ブラジルとボリビア・チリを横断する道路の建設も驚くべきスピードで行われていて、パラグアイの農産物や工業製品の輸出も益々便利になってくることは確実です。

11月16日発

ここ数年で色々なサービスが劇的に進化して南米の他の大都市と比べても遜色ない快適な環境が整ってきたパラグアイの首都アスンシオンですが、まだ物足りないと感じられるのが博物館や美術館、音楽ホールでのイベント等の文化施設と行事の数です。

そんなパラグアイで本日開催される夜のミュージアム「Noche de Museos」https://nochedemuseos.org.py/ 今年で四回目になるこの行事は、アスンシオン市内の美術館や博物館を皆で巡り歩こうという趣旨のもので、今年は新型コロナの感染対策により、アスンシオン市内16カ所とその他国内21箇所計37の美術館・博物館の展示物がオンラインで観られるということです。

日本は新型コロナの第三波襲来で、また外出を自粛するようになっているようです。この機会に南米の美術館・博物館を日本から廻ってみてください。

サンパウロ美術館 展示内容も充実度も南米随一
https://masp.org.br/en

ペルー・リマのトップ10
https://www.tripadvisor.es/Attractions-g294316-Activities-c49-Lima_Lima_Region.html

コロンビア・メデジンのアンティオキア美術館 ボテロ作品の宝庫
https://www.museodeantioquia.co/

ベネズエラ・カラカスもかつては素晴らしい美術品の宝庫でした。今はどうなっているでしょうか?
https://www.venezuelatuya.com/caracas/museos_de_caracas.htm

チリの古代博物館はペルーやパラグアイと同じような古代民族の工芸品が沢山観られます。
https://entucasa.precolombino.cl/

国中が博物館のようなアルゼンチン、生活するのは大変ですが観光には最適です。
https://www.argentina.gob.ar/cultura/museos

エクアドルのキトには珍しい貨幣博物館があります。
https://numismatico.bce.fin.ec/

以前も御紹介しましたが、ボリビアの地方都市Tarijaの古生物博物館、行くのは大変ですがオンラインなら簡単に観られます。
https://boliviaesturismo.com/en/museo-paleontologico-arqueologico-tarija-bolivia/

アスンシオンでは今週末から漸く映画館の営業が解禁になりました。でも、上映作品が面白くなさそうなので暫くは出向くことはなさそうです。
https://www.cinemark.com.py/

11月23日発

季節の話題として、コロナ禍であってもやってくるのがクリスマスですが、パラグアイでは12月8日にクリスマス前の重要な宗教行事であるCaacupé大聖堂への巡礼歩行Peregrinación a Caacupéが行われますし、青年たちが集まるPeregrinación de jóvenes a Caacupéは来週の土曜日にオンライン開催されることが決まりました。

↑昨年改修を終えたCaacupé大聖堂の映像

若者達は普通の巡礼者たちより早く聖堂に到着して、ミサを受けたいということから、毎年二週間ほど早い集会が行われていることに対応するオンライン行事、主催者も宗教の新しい在り方を模索しているようです。

また、街のクリスマスムードも少しずつ盛り上がって来て、市内のショッピングセンターでは恒例の歳末セールに向けたクジの賞品の発表がされて、冷え込んだ消費マインドを回復させようと頑張っています。だいたい南米の国々の年末セールのクジの賞品は自動車と相場が決まっていて、どんな車種が当たるか?でそのショッピングセンターの”格”が判るのですが、アスンシオンで一番高級とされるShopping del Solの今年の賞品はなんと、イタリアの高級車Maserati社のSUV Levante350で、既に店頭で公開されています。

https://www.shoppingdelsol.com.py/eventos/navidad-para-volver-a-empezar

Levanteという単語、スペイン語では東の方向を意味しますが、ラ米諸国では誹謗中傷とか、うそ・デマなんて言う意味でも使われているようで、この賞品がウソでないことを信じて、ささやかな夢を抱いて買い物に出掛けてみようと思います。

11月30日発

今週はマラドーナ逝去というニュースで持ち切りの中南米だったと思います。

水曜日の昼食時に中日新聞が南米のどのサイトよりも早く第一報を報じて来て、その日の午後だけでなく、週末までどこの局も何かにつけてブエノスアイレスからの実況と昔の映像を流していました。

ところで、木曜日は米国の感謝祭、金曜日がブラックフライデーで、今や日本でも安売りの日としてハロウィーンと同様に定着してきていますね。パラグアイにはGo toトラベルはありませんが、Booking.comがブラックフライデーセールということで宣伝を送ってきたので、市内のホテルを検索したところ、面白い宿を見つけたので予約して出かけてみました。

この宿は昨年5月に旧市街地区でオープンしたばかりのPalmarogaホテル。1901年にアスンシオン市役所として建てられ、市役所が市の東側に移転した後は永年に亘って放置されていたものの、スペインのGrupo Barcelonaという会社が朽ちかけた建物を修復、更にホテル棟を新築して出来た建物。

日本で言うと丸の内の旧工業倶楽部や東京中央郵便局、明治生命ビルや第一生命ビルなどが元々のイメージを残したまま高層ビルになったのと同じ改築手法、パラグアイでは初めての試みであることから、以前から興味を持っていました。今回のセールは、一室二名朝食付で約5,000円で歴史的建築物に宿泊できるという、建築オタク心を揺さぶるものでした。https://www.palmaroga.com/

旧市役所庁舎ということで、大統領府Palacio de Lópezから僅か3ブロック=徒歩5分の距離、屋上からの眺望はパラグアイ港や建設中の合同庁舎エリア、サンヘロニモの丘(Loma San Jerónimo)等の観光スポットに近く、昔のパラグアイの雰囲気を知るのに最適の立地。このホテルは今年3月にパラグアイに不法入国して逮捕されたブラジルのRonaldinho選手が8月まで拘禁されていた場所でもあり、マラドーナが亡くなった週末をロナウジーニョが半年近く缶詰になった宿で過ごせたのは、面白い経験だったと言えます。

ここ数年の間に古い建築を模して新築した素晴らしいホテルが出来ていますが、文化遺産としての価値はPalmarogaに軍配が上がります。折角なので、今のアスンシオンでお勧めするその他のユニークな宿も御紹介します。

La Mision Hotel Boutique
http://la-mision-boutique.asuncionhotelspage.com/es/
ご結婚問題で今週も話題となった眞子内親王殿下が、2016年の日本人移住80周年記念行事でパラグアイを御訪問された時に宿泊された、今のパラグアイで最も格式ある宿。古風な外観と内装ながら、2015年に出来たばかりの新築の建物。

Factoria Hotel
http://www.factoriahotel.com.py/アルゼンチンCorrientesにあるLa Alondra Casa de Huéspedesというホテルの二号店として2017年に開業したもので、これはLa Misionより更に古い内外装ながら、やはり完全な新築物件。各地のアンティーク材料を使って築百年超のイメージを醸し出している。

Nino Hotel Boutique
https://ninohotelboutique.com/こちらは今年1月に開業したものの、コロナ禍の直撃を受けて正式オープンされていないものの、Palmarogaと同様に古い紡績工場の建物を修復・改装して出来た建物。同じ建物の中にホテルのオーナーColaso Bo氏が腕を揮うイタリア料理レストランTrattoria Tonyがあり、美味しい料理を楽しみ、たっぷり飲んでも歩いて直ぐに部屋に入れる嬉しい設計。

Las Lomas Casa Hotel
https://www.laslomascasahotel.com/古い屋敷を改装して2016年にホテルとして営業を開始したもので、Musiuというフレンチレストランを併設。今回御紹介した中では一番小ぢんまりしているものの、静かな住宅街の中にあって周辺を散策するのも楽しい。

以上、改めて書いてみると、今のアスンシオンの大きな魅力は古い建物を修復したり古めかしく作った新しい建築が観られること。世界中の観光業や飲食業・交通関係の業種がコロナ禍で大変な打撃を受けていて、まだ暫く厳しい状況は続きそうですが、世界経済がコロナ不況から復興した暁には、是非パラグアイにも足を運んでみて下さい。ビジネスチャンスだけでなく、食べたり飲んだり泊まったりする愉しみも魅力であることを認識できます。