『人類前史 -失われた文明の鍵やアメリカ大陸にあった 上・下』 グラハム・ハンコック - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『人類前史 -失われた文明の鍵やアメリカ大陸にあった 上・下』 グラハム・ハンコック 


かつての世界的ベストセラー『神々の指紋』(小学館文庫)はじめこれまでの常識を引っくりかえす歴史の新証拠、新解釈をもとに「失われた文明史」を探求してきた著者の最新訳書。アフリカから氷河期に渡橋が出来たベーリング海峡を渡って13,000年前に米州大陸に人類が到達したというこれまでの通説に対し、近年の考古学の新発見や研究によって、何と13万年前から南半球の海洋横断を含めて人類は南北アメリカ大陸に到達していて、高度な文明を築きあげ繁栄していた。ノアの箱船伝説の起源と言える洪水・火の「天からの災厄」によってこの先史文明は破壊され、生き延びた人々が遠くエジプトなどに逃れて、例えば5000年前に古代エジプト文明として登場し、4500年前にギザの大ピラミッドを建造したというのである。

北米に人類が住み始めたのはカリフォルニア州のセルッティ・マストドン遺跡から見て13万年前からかもしれず、各地にも多くの古代遺跡がある。南米アマゾンにもストーンサークル等遺跡が発見され、密林の中には大きな都市があった痕跡があり、アマゾンの多雨林は土壌・植生から古代に人の手によって植林されたものであって、現在のアマゾン先住民にはオセアニア先住民のDNAが存在している、等々の相次ぐ考古学の新発見や、最先端の遺伝子解析の結果からの「証拠」によって、早い時期に南北アメリカに到達し、開花させた“人類以前の文明”があったとしている。

古代エジプト文明など世界に点在する遺跡、信仰、芸術は、失われたこの超古代文明の“文化的DNA”だという論旨に即して「疑いようのない新証拠とその解釈から、失われた文明の鍵はアメリカ大陸にあったと説く、著者の人類史以前の文明の存在を解き明かす「人類前史」観の最新作。

〔桜井 敏浩〕

(大地 舜、榊原美奈子訳 双葉社 上498頁 2,000円+税 ISBN978-4-575-31580-6 下541頁 2,200円+税 ISBN978-4-575-31581-3 )