連載エッセイ85:硯田一弘 「南米現地レポート」その16 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ85:硯田一弘 「南米現地レポート」その16


連載エッセイ82

南米現地レポート その16

執筆者:硯田一弘(アデイルザス代表取締役)

12月7日発

パラグアイでは12月8日が一年で最も重要な宗教上の重要な祭日Virgen de Caacupéへの礼拝を行なう日であり、例年この時期は何週間も前からCaacupé大聖堂を目指して巡礼する人達で大変な賑わいを見せる時期です。

しかし、コロナ禍で人々が集まることを政府が禁止している今年は、大聖堂への礼拝も実際に出向くことは禁じられ、礼拝もバーチャルな形で行われることになっています。
https://www.ultimahora.com/novenario-virgen-caacupe-culmina-un-desolado-santuario-el-covid-19-n2917332.html

日本でも、オンライン参拝を実施する神社や仏閣が登場してテレビのニュースなどで報じられていましたが、新年の初詣の方法については、これからまだまだ議論がありそうな気配ですね。

パラグアイでも、毎年恒例の最重要行事を仮想空間で行うことには抵抗感を持つ人も少なくなく、賛否両論色々な意見が出ているものの、多くの人が一か所に集うことでクラスター感染とならないよう、政府も地元の自治体・警察も密な状態を回避するために最大限の工夫と努力をしているように見えます。

一方、今週から第29回パラグアイ映画祭Festival de Cine de Paraguayが始まりましたが、こちらも多くの映画館が営業を自粛している為に、バーチャルでの開催となっています。

https://www.lanacion.com.py/hoy/2020/12/05/inicia-festival-de-cine-de-paraguay-en-modo-virtual/
パラグアイの映画は国際的な認知度は低いものの、NetflixではLEALという麻薬マフィアと政府の闘いを描いた作品が人気となっている他、ホラー映画モルグが今年日本でも上映されて話題になりました。

↓LEAL予告編

↓モルグ予告編

このパラグアイ映画祭、バーチャル開催なので、日本でもご覧になれると思います。日本の短編映画は無料で視聴できますし、パラグアイ映画の新作もかなりGs.20,000=約300円とかなりお安く視聴できる設定になっているようです。

12月14日発

映画『2001年宇宙の旅』の冒頭に登場する不思議な黒い石板モノリスとソックリな金属板が米国ユタ州の砂漠の中に突然現れた、と話題になったのは11月中旬。この板はその後世界の各地に出現しているようですが、今週はパラグアイでも発見されたとのニュースが報じられました。

https://www.ultimahora.com/aparece-misterioso-monolito-supuesto-codigo-morse-paraguari-n2918115.html

アスンシオンからクルマで1時間ちょっとのParaguaríという街の近くにあるCerro Hû(フの丘)を見上げる国道沿いに木曜日突然現れたパラグアイ版モノリス。モーゼの十戒の文言も添えられていたそうです。
パラグアイ版モノリス

ラガリはアスンシオンから南の街エンカルナシオンに行くときに通るところで、自家製フルーツポンチを食べさせるドライブインがあり、フの丘の他にも手前にあるYaguarónの丘とともに、アスンシオンから手軽に行ける行楽地として人気です。
このモノリス=モノリートは如何にも真似して建てましたって感じがしますが、国道1号線のバイパスが出来て最近さびれ気味になっていたパラガリにお客さんを呼び戻す役割を果たせば良いのかも知れません。

映画の影響でモノリスとは不思議な石板というイメージが強いのですが、元々は建築や彫刻に使われる一本岩のこと。有名なリオのPão de Açúcar=ポンジアスーカル(砂糖山)もモノリートのひとつ。それほど有名ではありませんが、コロンビアのメデジン近郊Guatapéにあるモノリートも相当インパクトのある巨石です。

こちらはリオの様なロープウェイやエレベーターは無いので、740段の狭い階段をひたすら登らなければならないので、相当大変ですが、苦労する価値は大いにあります。

こんなにインパクトの強い景色はなかなかありませんが、真っ平らなパラグアイもCerro Corá国立公園など、地面の隆起した面白い景観の場所は沢山ありますので、いつか行ってみたいリストに加えてみてください。

ところで今日の言葉monolito、monolíticoという形容詞になると、一枚岩の・確固としたという意味で使われます。コロナ禍で世の中が大変なことになっていますが、こういう危機の時にこそ、皆が力を併せて切り抜けよう!というメッセージが世界に込められているように思います。

12月21日発

新型コロナの影響で、バスや電車を避けて自転車の利用が世界中で増えているようです。ABC Color紙の電子版を見ていて見慣れない単語bicisendaを見つけたので辞書を引いてみましたが、見つかりませんでした。とは言え、意味は簡単、bici=自転車とsenda=道をくっ付けただけですから、自転車道であることは直ぐ判ります。

これまで住んだベネズエラ・ペルー・ブラジルでも大都市では自転車専用道の整備は進んでいて、cicloviaという単語が使われるのが一般的でした。でも、パラグアイでcicloviaという単語を探すと、Chacomerというドイツ系の車輌販売会社傘下の自転車店の登録商標ということになっています。

パラグアイの首都圏でも他の南米各国に倣って自転車道の整備が進んでいて、計画では旧市街からカピアタ市までの32㎞に亘って自転車道が出来ることになっているようですが、現実には自転車の走行には極めて不向きな状況が続いています。

アスンシオン市内や近隣のLoque市、San Lorenzo市には自転車専用エリアを持つ公園が複数ありますが、この公園にたどり着くまでに狭い車道を走らなければならず、結局自動車の専用キャリアで運んで行くことになり、普通の市民の足になっているとは言えません。パラグアイでは、公共交通と言えばバスしかありませんが、最近は感染を恐れて安価な輸入中古車を超長期の割賦で購入する市民が増えている様です。

将来的には総延長600㎞の自転車道を整備するという計画もありますが、バス専用道計画も頓挫したので、実際に出来るかどうかは全く不明です。

ABC紙の今日の一面には病院の写真が出ているので、またコロナの記事かと思いきや、なんとエステ市の病院で五つ子ちゃん達が産まれたという御目出度いニュース。女の子二人と男の子三人、母子ともに良好な状態だそうです。

今年も残すところあと一週間ちょっと。日本は随分寒くなったようですが、普通の風邪にもコロナ風邪にも気を付けてお過ごしください。

12月28日発

2020年最後の言葉は、パラグアイからではなくカリブ海の島国ドミニカ共和国からお届けします。と言っても筆者がドミ共にいる訳ではありません。
今日のパラグアイの新聞Ultima Holaの記事で、お気に入りの歌手Juan Luis Guerraの新アルバム発表が報じられているので、御紹介しようというもの。
https://www.ultimahora.com/juan-luis-guerra-lanza-su-nuevo-trabajo-el-dia-navidad-n2920141.html

Juan Luis Guerraはカリブ海独特のリズムであるメレンゲやバチャタ音楽の第一人者で、南米でも圧倒的な人気を誇っています。https://www.youtube.com/watch?v=aA04pV2DYTg
年末は紅白歌合戦の歌謡曲か、第九のクラシック演奏も良いですが気分を変えてカリブのお祭り気分に浸ってみてはいかがでしょうか?

今年は3月に始まった新型コロナ封止の隔離対策の為に世界中の人・モノの動きが大きく制限されて大変な年になりました。年の前半は本当に町中が凍り付いたように静まり返り、このまま外出制限が続くとどうなるのだろう?と懸念されたものの、7月以降は徐々に制限は緩和されたました。しかし日本のGo To政策と同様、動きが再開した途端にパラグアイでも感染者数は急激に増えており、今週は遂に累計感染者数10万人を超えることになりました。ただし回復者数は74千人で、亡くなった方は2,138人と南米の中では深刻度は高くないと言えます。

その為か、クリスマスイブ=Noche Buenaの昨夜は市内のあちこちで久々のお祭り騒ぎが展開され、今朝になっても爆音でダンス曲を掛けている会場が沢山ありました。
また、クリスマスを迎える0時に国中(世界中)で打ち上げられた花火は素晴らしかったものの、旧市街地の貧困地区Chacaritaでは花火の引火による火災が発生し、多くの人達が住む家を失いました。

クリスマスと新年の花火は南米ではどこに行ってもお決まりの大イベントなのですが、花火を手作りする人も多く、準備中の暴発や打ち上げによる火災のニュースは付き物となっています。泣きっ面に蜂ならぬ、コロナ面に火事ですが、既に電子版では各紙が義援金募集に動いています。

と、最後まで大変なニュースが紙面を賑わせましたが、実はこの日曜日には日本に関する記事がLa Nacion紙を三面も割いて掲載された明るいニュースがあったことをご報告します。日本でも多くのマスコミで取り上げられた中谷好江大使のインタビュー、二年半前まで公使として勤務されていたパラグアイ通の外交官が大使として再度着任されたことに対する期待感の大きさを表したもので、恐らくこの記事はパラグアイで日本を扱ったモノの中でも最大級の紙面占有度であったと言えます。

https://www.lanacion.com.py/politica/2020/12/11/mano-a-mano-ln-con-yoshie-nakatani-japon-y-paraguay-son-socios-estrategicos-con-tradicion/

同日にUltima Hola紙も同様の趣旨の記事を掲載しており、パラグアイ側の新大使への期待の大きさを示している、と言えるでしょう。
https://www.ultimahora.com/paraguay-posee-muchos-atractivos-y-un-gran-potencial-que-desarrollar-n2919418.html

ドミニカ共和国の話で始めた今日の言葉、パラグアイの話題で締めくくることが出来ました。来年も中南米の楽しい話題をお届けしたいと思います。