1926 年にリマで生まれた日系二世で、カナダ、上智大学で学んだ後1976 年からリマで日系社会への布教を始め、1981 年からペルーの社会経済環境悪化で貧困に苦しむ人たちを支援するために精力的な資金募集活動を行いながら児童養護、診療所、老人ホームを次々に立ち上げ、多大な実績を上げて2017 年に90 歳で帰天した加藤神父の波乱に満ちた慈愛の生涯を紹介している。ペルー日本のODA による上水施設工事等で働いたことがあり日系二世と結婚して定年後はリマに住む著者が、長年聞き取り、資料収集して執筆、ペルー日本人移住史を研究してきた翻訳家が編修して纏めた伝記。
出生、カトリックとの出会い、カナダ留学と日本での修道、宣教、ペルーに戻ってからの幅広い活動の中には、日系人が日本の心を忘れないようにと行った西和辞典の編纂もあった。ペルーの社会的困窮によって増えた身寄りのない子どもたちや病弱者、日系社会の高齢化に対応して建てた「エンマヌエル憩いの家」などのために奔走した清貧の生涯は読む人に感動を与える。
〔桜井 敏浩〕
(クレアリー寛子編修 日相出版発行 揺籃社発売 2020年10月 239頁 1,800円+税 ISBN978-4-89708-440-4 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2020/21年冬号(No.1433)より〕