1950、60 年代、米国はラテンアメリカの急激な社会改革を目指す国の革命政権に対し、ソヴィエト連邦及び国際共産主義運動の影響を受けていると見做して、軍事介入や外交・経済的圧力、さらにはCIA による政権転覆工作を試みてきた。うちボリビアについては1936 年のパラグアイとのチャコ戦争の事実上の敗北後起きた民族主義と改革主義の紆余曲折の後、1943 年に鉱山業や労働者、インディオの権利の改革を目指した革命政党MNR と軍の若手将校のクーデタ政権が成立していたが、これに米州規模の反対工作を展開し1946 年に政権を崩壊に追い込んだ。
しかしMNR が国民政党へ変貌し、1952 年には革命、対米宥和外交に転換、米トルーマン政権が「リベラル・プロジェクト」政策を始動したことにより、1953 年にアイゼンハワー政権はラテンアメリカ援助政策の一環としてボリビアへの緊急援助を決定し、その後のケネディ政権が「進歩のための同盟」構想を発表した。他方、キューバへの米政府が支援した1961 年のピッグス湾侵攻作戦が失敗し、63 年にはソ連が持ち込んだミサイル危機があって、キューバ革命とソ連の外交攻勢に危機感をもったケネディ政権は、52 年のボリビア革命の指導者パス・エステンセロが60 年に返り咲いた第二次政権の革新政策を容認して、「同盟」のモデルとして対ボリビア援助を再拡大して、64 年に軍部のクーデタによりパス政権は倒されるまで米政府は支持を貫いた。
以後ボリビアでは82 年まで軍政が続くことになったのだが、本書はこれらの間の米国のラテンアメリカに生まれた革命政権との関係の変容を、ボリビアを事例に解明しようとした外交史から見た国際関係論。
〔桜井 敏浩〕
(有信堂 2019年3月 463頁 8,000円+税 ISBN978-4-8420-5577-0 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2020/21年冬号(No.1433)より〕