毎年世界各地の日系人と日本をつなぐ海外日系人大会は、敗戦後日本が国連に加盟した翌年の1957 年に開催された「海外日系人親睦大会」に始まり、2019 年で60 回を迎えた。第1 回は1956 年に設立された「海外日系人団体連絡事務局」が催し、「海外日系人連絡協会」を経て現在の「公益財団法人海外日系人協会」が主催している。大会開催の大きな動機は、戦後生活物資不足で困窮していた日本に米国の「LARA(アジア救援公認団体)」を通じて当時の価格で実に400 億円もの救援物資が贈られたが、その20%は米州の日系人組織からだったことから、謝意を表したいということにあった。海外日系人団体との連絡は各地の海外邦字紙の記者たちが奔走した。この頃、人口過剰と食糧不足問題に対処する政策の一環として海外移住促進策が採られ、戦前の移住者による日系社会が拡大して海外日系人への支援も要請されるようになった。
このような背景から始まった海外日系人大会での日系社会と日系人に対する認識に対応して出され続けた要望事項と大会宣言を辿ることによって、大会への問題意識、課題の数々が明らかにされている。大会を主催する海外日系人協会は、かかる社会的要請に対応して多彩な事業に取り組み、多くの機関・団体と協力関係を展開してきた。本書には、この60 回の間の詳細な活動実績の記録に加えて、尽力してきた人たちの回顧、各種の資料、大会での有識者の日系人と日本の将来を考える講演の抜粋まで網羅されている。海外日系人との交流の記録を次の世代に引き継ぎ、新たな展開の方向を考えるための有用な資料である。
〔桜井 敏浩〕
(海外日系人大会60回記念誌編集委員会 (公財)海外日系人協会発行 2020年11月393頁 2,000円+税 ISBN978-4-600-00574-0
書店でも取り寄せ可能だが、海外日系人協会HP 「出版物のご案内」http://www.jadesas.or.jp/publication/60.html から申し込めば、2,000円+税、国内レターパックライト送料 370円 で入手出来る。)
〔『ラテンアメリカ時報』 2020/21年冬号(No.1433)より〕