連載エッセイ90:桜井悌司 「ランキングに見るラテンアメリカ雑学情報」その1 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ90:桜井悌司 「ランキングに見るラテンアメリカ雑学情報」その1


連載エッセイ87

「ランキングに見るラテンアメリカ雑学情報」その1

執筆者:桜井悌司(ラテンアメリカ協会常務理事)

YouTubeを見ていると数々の興味あるプログラムに出会う。例えば、Bendito Extranjeroというプログラムでは、ラテンアメリカの様々な情報につきベスト10というランキングの形で紹介される。それらの情報は、ラテンアメリカ通と言えども知らないことが多い。そこで今回2回に分けて、それら面白情報を紹介してみることにしよう。ラテンアメリカ人やラテン通との雑談にも活用できよう。

「気候関連」

1) 平均温度の低い国ランキングと歴史上最低気温を記録した都市・時期

下記の表をみると、南米の南部に位置する国、高地にある国の平均温度が低いことが理解できる。南半球の南部にあるチリ、アルゼンチン、ウルグアイであり、高地に位置する国としては、ペルー、メキシコ、ボリビア、エクアドルである。

最低気温を記録したところはチリのコジャイケ市で零下37度、アルゼンチンのサルミエント市の零下32.8度があり、高地のボリビアのコロラーダ市での零下31度、メキシコのビジャ・アルマ―ダ市の零下30.4度には、我々の日頃のイメージとは異なり、本当かなと首をかしげてしまう。

表1 平均温度と最低温度を記録した上位7カ国

順位 国名 平均温度C 最低温度 C 記録年・都市
1位 チリ 8.45 -37.0 1907年6月、コジャイケ市
2位 アルゼンチン 14.0 -32.8 1907年6月、プエルト・デ・サルミエント
3位 ウルグアイ 17.55 -11 1967年6月、メロ市
4位 ペルー 19.6 -25.2 1966年6月、マト・クルス市
5位 メキシコ 21 -30.4 1962年1月、ビジャ・アルマ―ダ市
6位 ボリビア 21.55 -31 1992年5月、コロラーダ市
7位 エクアドル 21.85 0~-10

注:You Tube、Bendito Extranjero、

2) 平均温度の高い国ランキングと歴史上最高気温を記録した都市・時期

ラテンアメリカは気温が高いというイメージを日本人は持ちがちであるが、下記の表を見ると平均温度ではそれほどでもないことが理解できる。最も高い地域はプエルトリコの26度であり、10位のパラグアイでも23.55度と、23度から26度の間に9カ国も入っている。最高温度もコロンビアのサルガド市とパラグアイのボケロン市で記録した45度である。私がスペインのコルドバやセビリャで経験した50度近い温度と比べるとそれほどでもないという感じがする。

表2 平均温度と最高温度を記録した国

順位 国名 平均温度 最高温度 時期・場所
1位 プエルトリコ 26C 40C 1996年7月、モナ島
2位 ベネズエラ 25.53C 43.6C 2015年4月、コロン市
3位 パナマ 25.4C 40C 1998年3月、パナマ市
4位 キューバ 25.2C 39.3C 2020年4月、グランマ市
5位 ブラジル 24.95C 44.7C 2005年11月、ポン・デ・ジェスス市
6位 ニカラグア 24.9C
7位 ドミニカ共和国 24.55C 43C 1954年8月、サンタクルス市
8位 コロンビア 24.5C 45C 2015年12月、サルガド市
9位 エルサルバドル 24.45C 42.5C 2016年4月、サン・イルデフォンソ市
10位 パラグアイ 23.55C 45C 2009年11月、ボケロン市

注:You Tube, Bendito Extranjero Berkley Earth

「ラテンアメリカの淡水保有関連」

下記の表は淡水量が豊富な国と少ない国の上位10カ国のリストである。ブラジルが途方もない淡水量を保有していることがわかる。以下、コロンビア、ペルー、ベネズエラまでが千立方キロメートルの保有量を誇る。一方で、淡水量の少ない地域・国は、1位のプエルトリコ、2位のドミニカ共和国、3位のエルサルバドル、4位のキューバは水不足であることが理解できる。

表1 淡水量保有ベスト10

順位 国名 保有淡水量
1位 ブラジル 8,647KM3
2位 コロンビア 2,360KM3
3位 ペルー 1,880KM3
4位 ベネズエラ 1,325KM3
5位 チリ 923KM3
6位 アルゼンチン 876KM3
7位 ボリビア 574KM3
8位 メキシコ 462KM3
9位 エクアドル 442KM#
10位 パラグアイ 388KM3

出所:You Tube、Bendito Extranjero

表2 淡水量保有国ワースト10

順位 国名 淡水量
1位 プエルトリコ 7.1Km3
2位 ドミニカ共和国 21Km3
3位 エルサルバドル 25.23Km3
4位 キューバ 38.12Km3
5位 ホンジュラス 95.93Km3
6位 グアテマラ 111.3Km3
7位 コスタリカ 112Km3
8位 ウルグアイ 122Km3
9位 パナマ 148Km3
10位 ニカラグア 196.6Km3

出所:You Tube、Bendito Extranjero

「観光関連」

1) ラテンアメリカの観光国ベスト10

いずれの国も観光産業に力を注いでいるが、世界経済フォーラムが発表した観光産業の世界ランキングからラテンアメリカ諸国のベスト10をピックアップしたものである。世界ランクは、世界の140カ国の第何位ということを表す。世界の50位以内に入っている国は、メキシコ、ブラジル、コスタリカ、パナマ、ペルー、アルゼンチンである。

表1 ラテンアメリカの観光国ベスト10

順位 国名 世界ランク ホテル数等
1位 メキシコ 19/140 ホテル25,000、ルーム900,000
2位 ブラジル 32/140 ホテル31,299 ルーム1,100,000
3位 コスタリカ 41/140 ホテル3,748
4位 パナマ 47/140 ルーム30,000
5位 ペルー 49/140 ホテル19,609  ルーム245,504
6位 アルゼンチン 50/140 ホテル13,606
7位 チリ 52/140 ホテル8,000
8位 コロンビア 55/140 ホテル9,987
9位 エクアドル 70/140 ルーム96,717
10位 ドミニカ共和国 73/140 ルーム80,000

出所:You Tube, Bendito Extranjero, World Economic Forum

2) 最も観光客が訪れるラテンアメリカの国ベスト10(2019年)

次に、観光客等外国人訪問者が最も多いラテンアメリカの国ベスト10を紹介する。1位は圧倒的にメキシコで、メキシコが観光大国であることが理解できる。世界遺産数においても2019年現在、35カ所で世界7位、ラテンアメリカで1位である。2位以下は、アルゼンチンの750万人が最大で、以下ブラジル、ドミニカ共和国、チリ、ペルーと続く。ドミニカ共和国が上位にランクされていること、観光大国というイメージを持つペルーが意外に低位であることがわかる。ラテンアメリカは豊富な観光資源の割には観光客数が少ないことがわかる。

表2 ラテンアメリカ諸国の外国人客受け入れランキング

順位 国 名 訪問者数(百万)・前年比 特色 コメント
1位 メキシコ 43.3  200万増 カンクン、メキシコシテイ、遺跡
2位 アルゼンチン 7.5,  9.0% ブエノスアイレス、イグアス、氷河
3位 ブラジル 7.0,  6.0% リオ、イグアス、サンパウロ
4位 ドミニカ共和国 6.6,  3.5% プンタカーナ、サントドミンゴ
5位 チリ 4.9,  -20.0% サンテイアゴ、バルパライソ
6位 ペルー 4.5,  4.0% マチュピチュ、クスコ、料理
7位 コロンビア 4.5,  3.4% ボゴタ、カルタヘナ、メデジン
8位 ウルグアイ 3.9,  2.0% モンテビデオ、サクラメント
9位 コスタリカ 3.2,  2.0% サンホセ、環境、海、森林
10位 パナマ 2.1,  1.9% 運河、ビーチ

3) ラテンアメリカで最も乗客数の多い5大空港

観光振興となると国際空港が重要となってくるが、下記のようなランキングになっている。5)の訪問客数の多い都市ランキングのところでも出て来るが、カンクン国際空港が4位にランクされているのは驚きである。

表3 乗客数受け入れ空港ランキング

順位 空港名 年間乗客数 備考
1位 Aeropuerto Internacional  Benito Juarez メキシコ 45,000,000 26の航空会社
2位 Aeroporto Internacional de Guarulhos ブラジル 36,000,000 36の航空会社
3位 Aeropuerto Internacional  El Dorado コロンビア 30,000,000 26の航空会社

貨物量1位

4位 Aeropuerto Internacional de Cancun メキシコ 25,000,000 60%米国人
5位 Aeropuerto Internacional de Jorge Chavez ペルー 23,000,000 37の航空会社

1965年建設

4)ラテンアメリカ主要国で比較的強いパスポートを持つ国ベスト10

Henley & PartnersというResidenceとCitizenshipをビジネスとする多国籍企業が、毎年、Passport indexというレポートを発表している。You TubeのBendito Extranjeroは、そこからデータを取ったものである。ラテンアメリカのチリ、アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ウルグアイ、コスタリカが比較的強いパスポートを持っていることが理解できる。

表4 強いパスポートを持つ国ベスト10

順位 国名 世界順位 パスポート通用国 ビザ無し国数
1位 チリ 14位 174カ国 127カ国
2位 アルゼンチン 17位 170カ国 126カ国
3位 ブラジル 18位 169カ国 129カ国
4位 メキシコ 24位 157カ国 114カ国
5位 ウルグアイ 25位 153カ国 97カ国
6位 コスタリカ 27位 150カ国 53カ国
7位 パラグアイ 33位 143カ国 86カ国
8位 パナマ 35位 140カ国 85カ国
9位 エルサルバドル 37位 135カ国 67カ国
10位 ベネズエラ 38位 134カ国 現在の経済状況により厳しくなっている。

出所:YOU TUBE BENDITO EXTRANJERO,IATA 、Henley & Partners

5)ラテンアメリカで最も訪問者数の多い都市ランキング 2019

次に、訪問者数の多い都市のランキングを紹介する。常識的には、ビジネス都市であるメキシコ・シテイやサンパウロを思い浮かべるが、上位にランクされている都市は、メキシコのカンクンやリビエラマヤ,ドミニカ共和国のプンタカーナ等の観光地である。

表5 ラテンアメリカで最も訪問者数の多い都市ランキング 2019

順位 都市名 訪問者数 順位 都市名 訪問者数
1位 Cancun 6,300,000 6位 Santiago 2,700,000
2位 Punta Cana 4,000,000 7位 Sao Paulo 2,500,000
3位 Riviera Maya 3,600,000 8位 Buenos Aires 2,300,000
4位 Ciudad de Mexico 3,500,000 9位 Cusco 2,000,000
5位 Lima 3,000,000 10位 Ciudad de Panama 1,700,000

出所:You Tube, Global Destination Cities Index

6) ラテンアメリカで最も美しい都市ベスト10

ラテンアメリカで最も美しい都市のランキングである。どのような基準で選定されているかはわからないが、ここに選ばれている都市は、ほとんどUNESCOの世界遺産に登録されており、順位はともかくとして、総じて納得ができる。

表6 ラテンアメリカで最も美しい都市ベスト10

順位 都 市 名 国 名 備  考
1位 リオ・デ・ジャネイロ ブラジル 世界遺産
2位 ブエノスアイレス アルゼンチン  
3位 クスコ ペルー 世界遺産
4位 キト エクアドル 世界遺産第一号
5位 ハバナ キューバ 世界遺産
6位 カルタヘナ コロンビア 世界遺産
7位 サン・ミゲール・デ・アジェンデ メキシコ 世界遺産
8位 バルパライソ チリ 世界遺産
9位 アンテイ―グア・グアテマラ グアテマラ 世界遺産
10位 コロニア・デ・サクラメント ウルグアイ 世界遺産

出所:You Tube, Bendito Extranjero

7) メキシコを訪問するラテンアメリカ人ランキング 2019

メキシコはラテンアメリカ第1位の観光大国である。世界遺産数域内第1位であるし、観光客数も第1位である。メキシコを訪問する外国人は圧倒的に米国人、次いでカナダ人であるが、ラテンアメリカ諸国の人々も結構訪問する。ランキングを見てみると、コロンビア人が圧倒的で、以下ブラジル、アルゼンチン、ペルー、チリと続く。キューバからの訪問者もかなり多い。

表7 メキシコを訪問するラテンアメリカ人ランキング 2019

順位 国名 訪問者数 順位 国名 訪問者数
1位 コロンビア 602,832 6位 キューバ 189,998
2位 ブラジル 396,817 7位 エクアドル 175,744
3位 アルゼンチン 387,388 8位 コスタリカ 175,693
4位 ペルー 291,849 9位 グアテマラ 160,166
5位 チリ 201,397 10位 エルサルバドル 79,919

出所:You Tube, Bendito Extranjero