連載パナマ・レポート9: 2021年1月分 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載パナマ・レポート9: 2021年1月分


連載パナマ・レポート ⑨: ルベン・ロドリゲス 2021年1月分

執筆者:Ruben Rodriguez Samudio(北海道大学法学研究科助教・パナマ共和国弁護士)

I. 新型コロナウイルスの現状

1月24日時点で、パナマにおける新型コロナウィルスの感染者は309,851人、死亡者は5,034人、回復者は254,597人と確認された。感染者の増加に対して、政府は、パナマ県と西パナマ県の外出制限を継続すると発表した。さらに、感染者が増加している地域においても、同じ制限が発令される可能性があることが明らかになった。
1月20日に、ファイザーワクチンの約1万3千が届き、1月23日時点では、5,600人が接種を受けている。また、同日に当局は、1月5日入国した者からアフリカ変異種の初感染が確認されたと発表している。入国時点で検査を受け陰性結果が出たが、第二検査によって陽性が確認された。

II.政治

1)ハック

1月6日、社会発展省(Ministerio de Desarrollo Social)、防衛省(Ministerio de Seguridad)、警察、教育省(Ministerio de Educación)のサーバーが何者かによって侵入され、様々な情報が盗まれたことが明らかになった。侵入された社会発展省サーバーには、いくつかの社会保障制度とその支援に関するデータが保存されていたが、政府は支援には影響がないと述べている。警察によると、侵入には、4つのIPアドレスが利用されたが、その中の3つアドレスは海外アドレスであった。パナマ国内のアドレスを利用した1人の容疑者を逮捕されたことが判明した。1月下旬時点では、サーバーに保存された情報は削除されていないようだ。

2)選挙法改正

国家選挙法改正委員会(Comisión Nacional de Reformas Electorales)は、選挙法改正の議論を行っている。1月20日に、予備選挙の実施と時期、候補への異議等に関する条文の改正が可決された。特に選挙裁判は、各党の予備選挙について、より積極的な指導を行うこととなっている。現法の元では、同一者が様々な選挙に出馬することができるが、改正法案では、同一者は、ひとつの選挙にしか立候補できないことになった。選挙法改正委員会には、選挙裁判、政党、国民の代表に構成され、各総選挙後、その結果を踏まえ、様々な改正を検討する。

III.民事再生法改正

1月21日に、マルティネス商工大臣は、民事再生法改正の法案を国会に提案した。この法案は、新型コロナウイルスによる経済的な影響を踏まえ、会社とその債権者は、商工会議所等の仲裁によって債務の改定を目的としている。
  

Ⅳ.経済

経済状況

政府は1月21日に、2032年期限と、2060年期限(合わせて24億5千ドル)の国債を発行した。さらに、国際通貨基金は、パナマに約25億ドルの金融を認可した。パナマ市とサンチアゴ市の歳入は、前年比30%、と37%減少したと発表した。新型コロナウイルスの影響によって政府の歳入は全体的に減少している。1月下旬時点では、2020年の統計まだ公開されていない。

IV.外交

コスタリカの提訴

コスタリカ政府は、世界貿易機関(WTO)でパナマの貿易障害措置に反対し提訴した。パナマ政府は、6月20日に、コスタリカの食肉処理場の25工場の衛生許可を更新しなかった。 2020年5月に、コスタリカ政府は、一時的にパナマ発の国際運送トラックの入国を禁止し、7月に、パナマ政府はコスタリカ発の魚餌に害虫が発見されたことを発表して以降、両国の関係が悪化している。