連載エッセイ107:松栄孝「日本の調味料とブラジルの調味料」 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ107:松栄孝「日本の調味料とブラジルの調味料」


連載エッセイ104

日本の調味料とブラジルの調味料

執筆者:松栄 孝(天寿司オーナー)

「簡単な自己紹介」

13年前からサンパウロで「天寿司」というすし屋兼うどん、カレー等の日本レストランを経営しています。1974年に東京農業大学を卒業し、ブラジルに移住しました。目的はブラジルで車エビを養殖することにあったのですが、残念ながら夢は破れました。その後、1985年に日本で2年間出稼ぎ後、ブラジルに戻り、1987年に熱帯業の輸出会社を設立、2007年まで日本に熱帯魚や水草を輸出していました。その間20年にわたって、ブラジル全土を駆け巡り、新種らしき熱帯魚を10種以上見つけたのは良い思い出です。1990年頃から2002年頃まで熱帯業専門誌に連載記事と特集記事執筆し、2冊の本にしました。そして、今はブラジルでブームの寿司店を経営しています。本稿では、過去の経験に基づいて、料理でよく使われる14の調味料についての雑感を述べたいと思います。調味料の使い方は、恐らく生涯考え続けることになるかもしれません。

(1)各種醤油

醤油のように、ブラジル製と日本製では雲泥の差があるような調味料もあって、なかなかコメントは難しいですね。醤油は、日本製はヤマサかキッコーマンを使いますが、みなさんもご存じのように、ブラジル製だと日本の醤油の香りがありません。

しかし、日本製を刺身に使うと塩辛すぎます。私が思うに、日本製とサクラ(ブラジル製)を半々が良いかと思います。日本には、溜まり醤油(フンドーキンなど)というのが九州地方に多くあり、そんな甘い醤油が刺身には最適なのですが、そういうのが茲に無いので・・・これは寿司・刺身を食べる場合です、

魚を焚いたりするときは、これは好みなのですが、私は日本醤油で焚きます。醤油の事は終わりがないので・・・

(2)赤味噌、白味噌

味噌も色々使いました。しかしブラジルで安かった味噌が最近は高くなってしまい、こちらの業者さんも・・・かな?と思う昨今です。みんなサクラさん(ブラジル最大メーカー)の値段にあわせるようで・・・

最近はカゼイロ(自家製)も多く出てきて、特にフェイラなんかでは、そこだけにしかない本当の味、のがありますが・・・しかし年間を通して使う場合には、大手のブランドが中心になります。

ちょっと手がかかりますが、ここでも 合わせみそ をしたらけっこう美味しく、赤いのと白いのを買ってきて、、赤い日、白い日、合わせ日、の味噌汁を作ったら毎日飽きないですね。私の店では、最近は日本からの輸入ものの方が安価で買えて、いまはそれでやっています。ご家庭では、いろいろ買われて、いろいろ試してみられたら面白い美味しいのができます。味噌汁の秘訣は、だしを取ってから最後に味噌を入れる事ですね。そうしないと出汁のうま味が、味噌の辛さに負けるようです。

(3)ウースター・ソース (4)やきそばソース

ウースター・ソースですか。和食ですから、あまりソースは使いませんが、ウースター・ソースはジミーとかキッコーマンが出していて、ほかの料理の混ぜ物に使ったりしています。とんかつソースは、やはり東山さん と丸一さんですね。好みだと思いますが、食べ比べてみてください。

(5)みりん(6)料理用日本酒

みりんは難しいところですね。ブラジル生まれの人にはあまり馴染みがない調味料です。煮切って使うか、生で使うかで味が違います。最近、吉兆味ばなし という本を入手しました。その中に書かれている湯木貞一さんのコラムを読んでいますと、みりんの凄さに感服させられます。おもろい味がだせそうで・・・

東山さんのでも、さくらさんのでも、最近は他のも出ていますが煮物、吸い物に少しだけ(垂らす程度)入れたら、味が変わってきます。

お酒も一緒で、使う料理で違いますが、この2種を使い分けれれば、料亭が出来そうですが、ブラジルで料亭作ってもあまり意味が分かってもらえないので、ストレス仕事になる気がします。

(7)料理用葡萄酒

料理用葡萄酒というのは買ったことがありません。好きだと自分では思っている葡萄酒ですが、日本料理に使うことがめったにないので、よく知りません。

ただ葡萄酒には2種類あって、セッコという甘みのない(SECO)のと、甘みを加えたスアービ(SUAVE)というのがあって、安いのは、甘みがあるものが多いですね。

甘いものと、甘くないもので料理方法がちがうし、出来上がった料理の味も変わるのだろうと思います。特に、ユーロッパ系の料理にはワイン漬けにする肉の料理があって、とても美味しいですね。料理に使うワインのことも、これから勉強したいと思っています。

(8)日本酢、洋酢

日本酢というのは、米酢とか雑穀酢の事だろうと思います。日本酒から酢が出来ますし。西洋のワイン(葡萄酒)から、ワインビネガーという洋酢ができる。

日本料理ですから、たいてい米酢を使っていますが、ここでは、東山酢を使っています。その他数社が日本酢を作っていますね。

記憶してることでは、醤油と酢を半々、これがポン酢の基本だったと思います。酢の代わりにレモン汁を1対1でもいいわけです。

今の時期、お一人なら白菜を少しと豆腐を少し、鶏肉をこれはソブレコッッシャ(手羽もとというのか)が良い、それが少しあればできます。

小鍋に昆布を5cmくらいのを敷いて、水を入れてそこに、具を全部入れて、グツグツ焚いたら、水炊きが出来ます。(少し塩で下味をつけてもよい)煮えたら、この出来立ての ポン酢と、この鍋の焚いた汁をいれて、自分なりに味を調えて、食べれば一人鍋が簡単にできます。

野菜(白菜やネギ、春菊などあれば最高)、豆腐、も同じで、魚屋さんで売ってるタラ(鱈、バカリヨー)を入れたら、鱈ちり、白身の魚であれば、新鮮であればペスカーダでも美味しいですね。タイのぶつ切りも美味しいです。

酢と醤油と出し汁で作る2杯酢、それに砂糖を加えた3杯酢いろいろありますが、料理によって使い分けています。

(9)油

これも色々メーカーがあって、少しずつ違うようです。店では揚げ物が多いので、毎週1箱20L買いますが、値段の安い大豆油を使っています。

サラダには、少し値の張るトウモロコシ油を使っています。その他、コメ油とか、ヒマワリ油とか、紅花(サフラワー)とかあるので、それぞれ試して見られたらいいですね。

理想を言うと、サラダにはオリーブ油が最適で、それもエストラ・バージンの新鮮なのがいいですし、もっと言うならオリーブにトリュフの香りのするのがありますからそれを垂らしたら、より美味しいですね。

(10)ラード

ラードはこれもあまり日本食には使わないのでよく知りませんが、どこのスーパーにでもバター、マーガリン売り場の片隅に置いてあります。日本のたいていの肉屋さんは、牛肉、ブタ肉の油を溶かして揚げ油にして、とんかつやコロッケをあげて売っています。これが結構おいしくて肉屋さんの揚げ物はおいしい、という理由ですね。一般家庭では大豆などの植物油で揚げるので、肉屋さんの味とは違った感じがします。

(11)バター

これはシメジのバター焼きに使います。これ、日本料理なのかなー、と思いますが。茸のバター焼きでは、シメジを炒めて最初にバターを入れるか、味付けして最後にバターを混ぜてやるかで、大きく味が違ってきます。醤油と出汁の味に、少しバターの香りがするのがよいか、食べた一口目でバターの味がして、これぞバター焼き、という感じが良いのか、難しいところですね。フライパンでの焼き魚に、仕上げに少しバターをかけてやると、また違う味になって楽しめます。隠し味程度。

(12)マーガリン・複合調味料

マーガリンも、日本食にはあまり使わないので、買いに行った記憶がありません。 複合調味料(液、粉末、固型)こちらでは、ほんだし、をよく使います。ブラジルでは、韓国・中国から来た昆布が手に入るので、だしを取るのに使いますが、鰹節が高くて手に入らないので、代用としてほんだしを使います。長年料理していて日本製の ほんだし よりブラジルで 味の素さんが作っている ほんだし の方が美味しいと思います。日本製 ヤマキさんや、にんべんさんを、いろいろ試してみますがいつも同じような感想です。

(13)香辛料類など

塩コショウはたいていの日本食にも使います。日本の香辛料というと、ワサビとか芥子(からし)、山椒の粉とか、ゆずコショーというのもあって、色々使います。考えたら、日本食では 生姜(ショウガ)が一番使うようです。

ワサビは中国製の1kg袋を買っています。日本の高級すし屋では、伊豆、長野あたりの山のせせらぎから収穫してきた本当の根わさびを使う店が多いですが、こちらでは手に入りません。虹マスの養殖をしているカンポス・ド・ジョルドンあたりで栽培すれば、できそうな気もしますが、だれもやらないようで自分でやってみたい、とは思いますが、なかなか難しそうです。

(14)そして何かの秘密兵器(隠し味)( ^ω^)

・・・と言われても隠しておくから隠し味ですね。

オリーブオイルに、トリュフの香りがする、という感じのが隠し味ですね。ブラジルに無い食材を集めて、普段の料理にちょこっと入れてやり、お客さんの反応を見ている、というのも楽しみです。世界の珍味という、フォアグラ、キャビア、トリュフなんかもってきて、少量を料理に混ぜてあげるとか日本式なら、日本の三大珍味 と言えばウニ(塩うに)、カラスミ(ボラの卵巣の塩漬け)、このわた(なまこの腸の塩辛)なんかも使ってみたいですが、・・・考えてみたら、面白いこともいろいろできそうです。  以  上

下記の14の調味料を取り上げました。

(1)各種醤油(2)赤味噌、白味噌 (3)ウスターソース (4)やきそばソース (5)みりん (6)料理用日本酒 (7)料理用葡萄酒 (8)日本酢、洋酢 (9)油(揚げ物用、炒め物用)(10)ラード 11)バター (12)マーガリン 複合調味料(液、粉末、固形)(13)香辛料類など (14)そして何かの秘密兵器(隠し味)