『アボカドの歴史 (「食」の図書館)』 ジェフ・ミラー - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『アボカドの歴史 (「食」の図書館)』  ジェフ・ミラー


マヤ文明以前からメソアメリカ先住民が食べ始めていたアボガドだが、100年ほど前までは知る人ぞ知る果実だった。徐々に生産・消費が拡大しカリフォルニアまで到達したものの当初は人気がなかったが、販売促進のためにその脂肪分が多いことによる栄養価の高さ、独特の味わい、個性が強調され、健康的な食品として近年評価が高まってきた。その後も品種改良が進み、いまや南極大陸を除く南北半球の全大陸で栽培されている。様々な食べ方の代表は熟した果肉をペースト状にしたワカモレであるが、スライスしてそのまま生食され、サラダ、飲み物、デザートなどとして世界各地で愛されるようになり消費も増えている。
本書は、自生していたアボガドが恐竜に、後に人類に果実を食べさせて種を拡散させて広まり、スペイン人の到来後に欧州人入植者の間で栽培・消費が広がって、マーケティングの苦労はあったが19世紀には米国でも栽培が始まり、この20年ほどで健康志向、エスニックブームに乗って現在の地位に上り詰めるまでの歴史と品種、そして食べ方を紹介しており、巻末には7頁にわたるレシピ集も付いていて、アボガドの不思議を解明している。

〔桜井 敏浩〕

(伊藤はるみ訳 原書房 2021年2月 192頁 2,200円+税 ISBN978-4-562-05858-7)

〔『ラテンアメリカ時報』 2021年夏号(No.1435)より〕