ラテンアメリカでダイナミックに成長する農業生産者を次世代の食料供給の担い手と位置づけた『途上国における農業経営の変革』(アジア経済研究所 2019年)の続編で、5人のラテンアメリカ農業ならびにチリ、メキシコ、ブラジルの地域研究者による分析の成果である。
ラテンアメリカでの農業経営体の家族経営の優位性、大規模経営体の拡大を分析した序章からはじまり、メキシコにおける小規模穀物生産者の再編過程を生産コーディネート企業の事例から(谷 洋之上智大学教授)、チリの輸出向け果樹栽培における雇用型経営を季節労働者の調達・配置・管理面から(村瀬幸代北海道大学講師)、またチリ農業の経営形態の変化と労働生産性を法人化やICTの普及も含めて(北野浩一アジア経済研究所主任調査研究員)、ブラジル・セラード地域における大規模農業経営体の経営管理の経緯、構造、労働管理と知識移転、費用と適正規模から(清水達也アジア経済研究所ラテンアメリカ研究グループ長)、ブラジルおよびアルゼンチンの農業金融の特色を大豆生産における運転資金の事例から(林 瑞穂農林水産省農林水産研究所米州・オセアニアチーム長)、それぞれ考察していて、近年のラテンアメリカでの食料供給を担っている農業経営体の実態を把握するのに有用な文献である。
〔桜井 敏浩〕
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(日本貿易振興機構アジア経済研究所 2021年3月 173頁 1,500円+税 ISBN978-4-258-04645-4)
〔『ラテンアメリカ時報』 2021年夏号(No.1435)より〕