連載エッセイ113:硯田一弘 「南米現地レポート」その23 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ113:硯田一弘 「南米現地レポート」その23


連載エッセイ110

南米現地レポート その23

執筆者:硯田 一弘(アディルザス代表取締役)

7月4日発

日本ではワクチン不足による接種受付停止の報道がなされていますが、パラグアイでは今日から接種対象が基礎疾患のある18歳以上から49歳まで拡大され、健康に不安を持つ多くの人達が列をなしました。

今回の接種対象の拡大は、50歳以上の高齢者(って違和感がありますが、50歳以上の人口が総人口に占める比率が僅か18%でしかない!)から45%以上を占める青年壮年世代にまで接種が可能になってきたことは、大きな進歩と位置付けられています。

ここでいうsegunda etapa(第二段階)とは、コロナ禍撲滅の新たな段階に入ったと好意的に受け止められています。

ところで、ベネズエラからまたまた通貨の切り下げのニュースが入ってきました。

2018年に5桁の切り下げを行って3年で、また今回6桁の切り下げ、もはやボリーバルが通貨として機能していないことは、筆者が駐在していた2008~12年の頃も同じですが、世界に先駆けて仮想通貨を導入したにも関わらず、こちらも全く機能していない訳で、最早インチキ選挙で居座る現政権の実務能力の低さを改めて内外に示すことになっています。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33427580W8A720C1EAF000/

今回の切り下げ、日本では殆ど報じられていませんが、これはベネズエラの通貨切り下げが日常茶飯事の事になってニュース価値が無く無関心になっていることを意味するのかもしれません。つまり、悪しきニュースへの免疫が出来てしまったとも考えられます。

日本ではオリンピックのコロナ対策や中国の脅威論に加えて、大雨の土砂災害のニュースが重なって、南米の事にまで注意が行かなくなっているようにも感じられますが、これまでもお知らせして来た通り、南米で起こっていることは決して日本と無関係のものではありませんので、地球の反対側の報道にも関心を持ってご注目ください。

7月11日発

パラグアイのコロナ対策は今週も進展があって、金曜日の深夜アメリカから待望のファイザー社製ワクチン100万回分が到着しました。パラグアイ政府がこの大量のワクチンを捌くのに選んだ会場がAritirí自動車競技場。つまりレース用サーキット場です。

この競技場はアスンシオンの郊外にあって拙宅からでも15㎞、渋滞が無ければクルマで30分で行けるところ。今回、接種の対象年齢を35歳以上の全ての国民にしたことで、これまで以上の混雑が予想された訳ですが、郊外のレース場を活用することで50万人の24時間連続接種が可能になった訳です。クルマの無い人には辛い会場ですが、そもそも公共交通機関が十分に発達してないパラグアイですから、多くの人が何らかの形で会場にアクセスできるであろうと言われています。

日本ではレースサーキットは富士や鈴鹿など、大都市からは遠い場所にありますが、モータースポーツが盛んな南米では、割と身近なところにサーキットがあります。2015年にブラジルで外交樹立120周年記念の大花火大会が行われたのも、サンパウロ郊外のサーキット場でした。

先週のNHKのサラメシで福岡の立体駐車場運営会社の社長が自ら社員用ランチを調理されてる映像が流れ、感動したので早速この会社にコンタクトし、シェフ社長から御連絡を頂きました。https://www.daiichi-eg.co.jp/
実は南米の大都市はどこも慢性的な駐車場不足が生じており、以前から日本の立体駐車場を南米に持ち込めば、社会問題の解決に貢献できると思っていました。そこで南米各国の自動車登録台数を調べてみました。(下記表を参照のこと)

この統計、今から5年前の数字であり、パラグアイの登録台数は今年260万台=人口百万人当たり37万台と、この5年間で40%増加していますから、先進国並みとまでは及ばないものの、中南米諸国の中では上位に食い込むようになってきています。このように良い意味で激しい変化を見せるパラグアイ、ビジネスの視点で競技可能となっていますので、益々ご注目ください。

7月18日発

真冬のパラグアイは今、苺の季節です。アスンシオン近郊の街Aregua市では、毎年恒例のイチゴ祭りが二年ぶりに開催され、盛況を博しています。

アスンシオンでも、スーパーの生鮮コーナーだけでなく、信号待ちの路上や道端で山盛りのイチゴを売る人達があちこちで見られます。イチゴの値段は1kg=Gs.25,000からGs.40,000、日本円で400円から650円という感じ。パラグアイの苺には日本の芸術品の様な見た目の美しさや高い糖度は無いものの、昔ながらの酸っぱさや歯ごたえがシッカリあって、練乳ならぬホイップクリームとの相性が抜群、冬の味覚の代表と言えます。

今日はその苺が天然の血液凝固防止剤であるという記事が掲載されました。コロナワクチンの主な副作用の一つが血栓の発生と言われていますので、イチゴを食べてコロナに打ち勝つぞ!そのためにはAreguaのお祭りにも来てね、というメッセージを含むのがこの記事。

先週対象が35歳の全人口に引き下げられて長い行列ができたコロナワクチンの接種会場は、この週末は二回目接種の人を対象としていて、またまた閑古鳥という雰囲気になっています。というのも、今回提供されているのが中国Sinofarm社製のHayat Vaxワクチンで、ネット上でネガティブな情報が飛び交う中国製品の治験対象になりたくない、ということのようです。

木曜日にはコロンビアでも「循環を良くする8つの食品」という題で、イチゴの効果が紹介されています。ブルーベリーやイチゴの他、ミカン・水・リンゴ・生姜・にんにく・クルミ・ウコン等が血流を良くする食品なのだそうで、真夏の日本ではイチゴは時期でないとしても、これらのどれかを食すことでサラサラ血液を目指してください。

ところで、世界的なデルタ株の拡大に対応し、パラグアイでは来週水曜日から世界中の如何なる国からの来訪者であっても、到着後5日間は外出禁止となる行動規制が発表されました。
https://www.ultimahora.com/salud-exigira-cinco-dias-cuarentea-y-test-pcr-viajeros-variante-delta-n2951501.html

世界的に行動規制が再強化される中、日本ではいよいよオリンピックが始まるようですが、感染しないために、運動・食事・睡眠をシッカリして感染防止に努めましょう。
今週暖かい日が続いたパラグアイも、また週末から冷え込んできており、週明けには最低気温0℃近くまで冷え込むとの予報も出ています。農作物が霜にやられないことを祈ります。

7月25日発

いよいよ東京オリンピックが始まりましたが、NHK海外放送では放映権の関係で大幅に番組編成が変わって、日本で競技の放送がされている間、アーカイブ映像の再放送が流れています。パラグアイからはボートや水泳・テニス・ゴルフ・自転車の選手が参加していますが、当然実況中継などなく、唯一アルゼンチンのTVPというチャンネルが色々な競技を放送しています。日本とパラグアイの時差は現在13時間ですが、ニューヨークとは時差がありませんから、米国のテレビ局の為に構成される競技に関しては、アルゼンチンの放送局を通じて観戦できる訳ですが、NHKのニュースでも、選手の活躍や競技の結果は動画でなく静止画だけで報じられるので、イマイチ乗り切れないというのが正直な心境です。

今は真冬のパラグアイですが、今週は比較的過ごしやすい暖かな日が続きました。特にこの週末は日中の最高気温が30℃を超えるポカポカ陽気で、朝晩も凌ぎ易い気候です。30℃超というと、日本では相当暑さが厳しいイメージですが、湿度が50%程度でカラっとしてますので、日向で直射日光を浴びなければ非常に過ごしやすいのが、この時期の30℃です。

しかし、湿度が低いということは雨が降っていないということでもあり、パラグアイとブラジルの国境地帯であるパンタナル湿原一帯では、例年より早い野火が発生しています。

この一帯では養蜂を行っているのですが、野火の影響で蜂の巣箱が焼失した様です。因みに、日本の蜂蜜の需要量は48千トン。国産は僅か3千トンで、9割以上の45千トンを輸入に依存しています。そのうち、3万トンが中国産・5千トンがアルゼンチン産です。
https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kikaku/lin/sonota/attach/pdf/bee-19.pdf

パラグアイの養蜂業も拡大していますが、雨が降らないと火事のリスクだけでなく、花の量も減りますので、蜂にとっても大変なことになります。気候変動は本当に色々な場面で環境に大きな影響を及ぼしますので、食を護るためにも気候の安定化に努めたいものです。