執筆者:桜井 悌司(ラテンアメリカ協会常務理事)
後編では、各国の著名な作家(小説家、詩人等)を選択し、簡単な紹介を試みる。具体的には、メキシコ17名、アルゼンチン17名、チリ14名、キューバ10名、コロンビア11名、ペルー8名、ウルグアイ8名、ベネズエラ3名、ボリビア3名、エクアドル3名、グアテマラ3名、ニカラグア2名、パラグアイ1名、エルサルバドル1名、セイント・ルシア1名、ブラジル11名(ポルトガル語文学)の合計113名の作家を選択した。おそらく、追加すべき作家や削除すべき作家が含まれていると考えられるが、スペイン語文学に関わる文学賞の受賞者を中心に選ばせていただいた。ご意見、コメント等があれば、執筆者である桜井悌司までメールいただければ幸いである。(teisakurai71@gmail.com)
本稿は、ラテンアメリカ文学に詳しい方々向けに執筆したものではなく、ラテンアメリカでビジネスを展開している方々の教養の一環として書いたものなので、次のような使い方をしていただくことを想定している。
紹介の作成に当たっては、日本語、英語、スペイン語のウイキペデイアやその他インターネットで調べたほか、下記のような書籍も参考にさせていただいた。
「ラテンアメリカ文学入門」寺尾隆吉著 中公新書
「ラテンアメリカ十大小説」木村榮一著 岩波新書
「ラテンアメリカ文学ガイドブック」寺尾隆吉著 勉誠出版
「Historia de la literature Hispanoamericana」Andersen Inbert著他
本稿の筆者も理事を務めるNPO法人イスパニカ文化経済交流協会では、スペイン語圏の文学を日本に紹介するプログラムを行っている。そのいくつかを紹介する。詳細はホームページ参照のこと。
スペイン語圏の文学の魅力を多くの方に知っていただくため、このサイトでは、日本で翻訳出版された スペイン語圏の書籍情報を随時掲載している。https://hispajp.org/spbook/support/
いくつかのスペイン語圏の国々では、その国の作品の外国語への翻訳出版に対して、政府が助成金を交付している。イスパJPでは、スペイン語文学の翻訳出版の促進を図るために、助成金の申請書類の作成、スペイン語訳の準備等を手伝っている。 https://hispajp.org/spbook/support/
*ソル・フアナ・イネス・デ・ ラ・クルス Sor Juana Inés de la Cruz
1651年~1965年。ヌエバ:エスパーニャの詩人、修道女、スペイン黄金世紀の演劇作家。17歳で修道女になり、サンへロニモ修道会サンタパウラ修道院に入る。以後、詩作に没頭し生涯を終える。代表作は、演劇「家のポーン」Los empeños de una casa、詩「最初の夢」Primer sueño、散文「アレゴリカル・ネプチューン」Neptuno alegórico。また「知への賛歌 修道女フアナの手紙」も訳されている。
*フェルナンデス・デ・リサルディ José Joaquín Fernández de Lizardi
1776年~1827年。メキシコの作家、ジャーナリスト。ラテンアメリカ最初の小説と言われる「疥癬病みのオウム」 El Peringuillo Sarmientoを発表した。ピカレスク様式を借りながら、植民地時代末期の教育、宗教等のメキシコの後進性を批判した作品。
*グティエレス・ナヘラ Manuel Gutiérrez Nájera
1859年~1895年。メキシコの詩人、小説家。キューバのホセ・マルティとともに詩の分野の新しい運動であるモデルニスモを始めた。AZUL詩の発行。代表作は、「はかない物語」 Cuentos Frágiles 、ヨブ公爵 La Duquesa de Job等がある。
*アマ―ド・ネルボ Amado Nervo
1870年~1919年。 ナヘラの弟子でモデルニスモの詩人。Revista Moderna誌を創刊し、多数の施策を発表した。代表作は、「動かぬ恋人」 La Amada Inmóvil、 「黒真珠」 Perlas Negras。学生時代に彼の「動かぬ恋人」をテープで聞き、感動したことを覚えている。
*マリアノ・アスエラ Mariano Azuela
1873年~1952年。メキシコの医者、作家。後の大統領のフランシスコ・マデロに仕えた後、パンチョ・ビジャの軍医としてメキシコ革命に従軍。代表作は、「虐げられた人々」 Los de Abajoで、メキシコ革命の残虐さを悲劇的に描いた。メキシコ国民科学・芸術賞を受賞。
*マルティン・ルイス・グスマン Martín Luis Guzmán
1887年~1976年。メキシコの作家、ジャーナリスト、政治家、外交官。マリアノ・アスエラなどと共に革命小説の先駆者。代表作は、「鷲と蛇」 El águila y el Serpiente や「領袖の影」la Sombra del Caudilloなどがある。パンチョ・ビジャの革命軍の顧問を務めた。メキシコ国民科学・芸術賞を受賞。
*オクタビオ・パス Octavio Paz 1990年ノーベル文学賞受賞
1914年~1998年。メキシコの作家、詩人、批評家、外交官。主要な作品は、メキシコ文化やメキシコ人の行動様式を紹介した「孤独の迷宮」(El Laberinto de la Soledad)、「弓と竪琴」(El Arco y la Lira),「インドの薄明」(Vislumbres de la India)等翻訳も多数あり。受賞理由は、「広い視野を持ち、先鋭的な知性と人文主義的高潔さを特徴とした情熱的な作品に対して」となっている。インド大使、ケンブリッジ大学、ハーバード大学等で教鞭を取る。
*フアン・ルルフォ Juan Nepommuceno Carlos Pérez-Rulfo Vizcaino
1917年~1986年。メキシコの小説家、写真家。20世紀最高の作家を選ぶアルファグアラ社の投票でホルヘ・ルイス・ボルヘスとともに選ばれた。代表作は、「ペドロ・パラモ」Pedro Páramo、「燃える平原」El llano en llamas、「黄金の鶏」El Gallo de Oro。アストゥリアス皇太子賞を受賞。
*フアン・ホセ・アレオラ Juan José Arreola
1918年~2001年。 メキシコの作家、大学教授。メキシコ国立自治大学やメキシコ作家センター等で後進の指導にも従事した。代表作は、短編「転轍車」El Guardagujas,「市場」La Feria、「共謀奇談」Confabulario。国民科学芸術賞他の賞を受賞。
*カルロス・フエンテス Carlos Fuentes
1928年~2012年。メキシコの作家、評論家。ラテンアメリカ文学最大のプロモーター。代表作は、
「我らが大地 テーラ・ノストラ」 Terra Nostra(ロムロ・ガジェーゴス賞)、「澄み渡る大地」 La Región más Transparente、「アルテミオ・クルスの死」La Muerte de Artemio Cruz、「アウラ」 Aura。1987年セルバンテス賞、アストウリアス皇太子賞、ビブリオテカ・ブレベ賞等受賞。多数の日本語訳書あり。
*エレーナ・ポニアトウスカ Elena Poniatowska
1930年~ 。メキシコの作家、活動家、ジャーナリスト。名門の家柄で親族にも有力者が多い、代表作は、「トラテロルコの夜」 La Noche de Tlatelolco で有名なトラテロルコ事件を証言で構成した。その他「レオノーラ」 Leonora。国際的に評価が高く、2013年セルバンテス賞、「汽車は最初に通り過ぎる」El tren pasa primeroでロムロ・ガジェーゴス賞、ビブリオテカ・ブレベ賞等を受賞。
*セルヒオ・ピトール Sergio Pitol
1933年~2018年。 メキシコの作家、翻訳家、外交官。長編小説、エッセイ、翻訳、回想録などバラエテイのある著作を発表。代表作は、「愛のパレード」 El Desfile de amor、「逃走の技術」El arte de la fuga。2005年セルバンテス賞、その他国民科学芸術賞等受賞。
*フェルナンド・デル・パソ Fernando del Paso Morrante
1935年~2018年。メキシコの作家、外交官、画家。 代表作は、「帝国の動向」Las noticias del Imperioでフランスによる第2回目のメキシコ侵略を描いた作品。1982年ロムロ・ガジェーゴス賞、2015年セルバンテス賞を受賞。
*ホセ・エミリオ・パチェコ José Emilio Pacheco
1939年~2014年。 メキシコの随筆家、小説家、詩人。代表作は、「メデユーサの血」La Sangre de Medusa)、「砂漠の戦い」 La batalla en el desierto。2作共日本語に翻訳されている。2009年セルバンテス賞を受賞。
*アンヘレス・マストレッタ Angeles Mastretta
1949年~ 。メキシコの作家、ジャーナリスト。メキシコの社会的、政治的現実を反映させる女性像を描く。 代表作は、「私の命を引き出して」 Arráncame la Vidaで暴力と狡猾さで出世する男の話。1997年ロムロ・ガジェーゴス賞を受賞(対象作品は「恋愛の悪》。
*フアン・ビジョ―ロ Juan Villoro
1956年~ 。メキシコの作家、コラムニスト、随筆家。現在メキシコで最も高く評価されている作家の一人。代表作は、「野生の本」 El Libro Salvaje。「証人」El testigo等。彼の短編のいくつかは翻訳されている。
*ホルヘ・ボルピ Jorge Luis Volpi Escala
1968年~ 。メキシコの作家でラテンアメリカ文学ブームの世代からの脱皮を目的としたポスト・ブ
ームの作家。代表作は、「クリングゾールを探して」En busca de Klingsorでこの作品でビブリオテカ・ブレ
ベ賞を受賞。その後、「選ばれし少女たち」Las elegidasでアルファグラ賞を受賞した。
「アルゼンチン」 17名
*ドミンゴ・ファウステーノ・サルミエント Domingo Faustino Sarmiento
1811年~1888年。アルゼンチンの教育者、作家、第7代大統領。彼の作品は広範囲のテーマを含む。代表作は、 ガウチョ文学「ファクンド」Facundo、Civilización y Barbarie, Vida de Facundo Quiroga で独裁者Juan Manuel de Rosasを批判している。教育に力を入れ、1943年に9月11日を「全米教師の日」Día Panamericano del Maestroを制定した。
*ホセ・マルモル José Marmol
1818年~1871年。アルゼンチンの詩人、ジャーナリスト、政治家、作家。ロサス独裁政権打倒に向けての活動で長く亡命生活を送った。ロマン主義の作家。代表作は、「アマリア」Amaliaでロマンス作品が多い。
*ホセ・エルナンデス José Hernández
1834年~1886年。 詩人、ジャーナリスト、軍人、政治家。ガウチョ文学の最高峰と言われる「マルテイン・フィエロ」El Gaucho Martín Fierro や「マルテイン・フィエロの生還」 La Vuelta de Martín Fierro の作者。アルゼンチンでは、彼の誕生日である11月10日は祝日に指定され、「伝統の日」Día de Tradiciónと呼ばれる。Aquí me pongo a cantarで始まる詩は有名。
*レオポルド・ルゴーネス Leopoldo Lugones
1874年~1938年。アルゼンチンの詩人、短編、モデルニスモの担い手の1人。代表作は、「黄金の山々」 Las montañas del oro。 その他「ルゴーネス幻想短編集」が日本語に翻訳されている。アルゼンチン国民文学賞を受賞。アルゼンチン作家協会を設立した。
*リカルド・グイラルデス Ricardo Guiraldes
1886年~1927年。 アルゼンチンの詩人、小説家。 代表作は、「ドン・セグンド・ソンブラ」Don Segundo Sombraで農場主の手記を華麗な文体で描き、ガウチョ文学の最高傑作の一つと評価されている。若くして41歳で亡くなった。
*ホルヘ・ルイス・ボルヘス Jorge Francisco Isidro Luis Borges
1899年~1986年。 アルゼンチンの小説家、詩人。1960年代のラテンアメリカ文学ブームの立役者で20世紀後半のポストモダン文学に大きな影響を与えた。代表作は、 「エル・アレフ」El Aleph、「伝奇集」Ficciones、 砂の本 El Libro de arena等。多数の作品が日本語に訳されている。 1979年セルバンテス賞、1999年全米批評家協会賞を受賞している。
*ロベルト・アルルト Roberto Arlt
1900年~1942年。アルゼンチンの小説家、短編作家、演劇、ジャーナリスト、発明家。 代表作は、「怒りの玩具」Juguete rabiosoで映画化された。その他、「七人の狂人」Los siete locos。ジャーナリストとしても名声を博したが42歳で早世した。
*シルビーナ・オカンポ Silvina Ocampo Aguirre
1903年~1993年。アルゼンチンの短編作家、詩人、アーチスト。ホルヘ・ルイス・ボルヘスはスペイン語の詩人の中ではもっとも偉大な詩人の1人と称賛している。ビオイ・カサレスと結婚。代表作は、「ポルフィリア・ベルナルの日記」El diario de Porfiria Bernal、「激情」La furia、「鏡の前のコルネリア》Corneria frente al espejo等。
*マヌエル・ムヒカ・ライネス Manuel Mújica Láinez
1910年~1984年。アルゼンチンの作家、芸術評論家、ジャーナリスト。代表作は、 「ポマルツ゚ァ公の回想」Bomarzo 及び 七悪魔の旅 El Viaje de los Siete Demonios。アルゼンチン国民文学賞の初代受賞者である。
*エルネスト・サパト Ernesto Sábato
1911年~2011年。アルゼンチンの作家。代表作は、「トンネル」 El túnel、「英雄たちと墓」Sobre héroes y tumbas、エッセイ「作家と亡霊たち」El Escritor y sus fantasmas。1984年セルバンテス賞受賞、何度もノーベル文学賞候補になった。
*フリオ・コルタサル Julio Cortásar
1914年~1984年。 アルゼンチンの小説家、ラテンアメリカの代表的な作家でラテンアメリカ文学ブームの立役者の一人。 代表作は、「石蹴り」Rayuela、「対岸」La otra orilla、短編集「遊戯の終わり」Final del Juego、短編集「秘密の武器」Las armas secretas。かなりの作品が映画化されている。メディシス賞外国小説賞を受賞。
*ビオイ・カサレス Adolfo Bioy Cásares
1914年~1995年。 アルゼンチンの作家で、幻想的作風、短編の名手として有名。代表作は、「モレルの発明」La Invención de Morel、映画化された「英雄たちの夢」Los sueños de los héroes等。1990年セルバンテス賞を受賞。
*フアン・ヘルマン Juan Gelmán
1920年~2014年。アルゼンチンの詩人。ウクライナ系のユダヤ人の子として生まれる。軍事政権を糾弾したため長い亡命生活を余儀なくされた。ジャーナリストとしても活躍した。代表作は、「価値ある痛み―フアン・ヘルマン詩集」Valer la pena。 2007年セルバンテス賞を受賞。
*マヌエル・プイグ Manuel Puig
1932年~1990年。 アルゼンチンの作家。世界的に著名な作家である。代表作は、 「蜘蛛女のキス」El beso de la mujer arañaで映画化された。その他、「赤い唇」Boquitas Pintadas、 「リタヘイワーズの背信」La traición de Rita Hayworthがある。
*リカルド・ピグリア Ricardo Emilio Piglia Renzi
1940年~2017年。 アルゼンチンの作家、文芸評論家、映画脚本家。代表作は、「人工呼吸」Respiración artificialや「イダの道」El Camino de Ida。2011年ロムロ・ガジェーゴス賞(対象作品:Blanco nocturno。
*セサル・アイラ César Aira
1949年~ 。 アルゼンチンの作家、翻訳家。短編を多数執筆した。代表作は、「文学会議」El congreso de literature、歴史小説「モレイラ」Moreira等。多産な作家として有名で、フランス政府からシュヷァリエ勲章を受章している。
*サマンタ・シュウエブリン Samanta Schweblin
1978年~ 。アルゼンチンの作家、脚本家。人気作家で世界の25カ国で翻訳出版されている。代表
作は、「口の中の小鳥」Pájaros en la boca、「救出の距離」Distancia de rescate等。フアン・ルルフォ賞ほか多数の国際的な文学賞を受賞している。
「チリ」 14名
*アロンソ・デ・エルシージャ Alonso de Ercilla y Zúniga
1533年~1594年。スペインの軍人、詩人。代表作は、「ラ・アラウカーナ」La Araucana。スペイン軍によるチリ征服のためのアラウコ戦争について歌った壮大な叙事詩。 エルシージャはスペイン人なので、この作家紹介には入れるべきでないかも知れないが、彼の作品がチリの国民性形成に与えた影響を考慮した。アラウカ族のリーダーであったカウポリカン、ラウタロやコロコロの名前はチリで頻繁に聞かれることでも理解できよう。コロコロは最も人気のあるプロサッカーチームの名称ともなっている。
*アルベルト・ブレスト・ガナ Alberto Blest Gana
1830年~1920年。チリの小説家、外交官。チリの小説の父、またイベロアメリカのリアリスト小説のパイオニアと言われている。主要な作品は、「恋の数学」 La aritmética de amor、「マルティン・リ―バス」Martín Rivas。「カラベㇻの理想」El Ideal de un calavera。 チリの学校の読解の教材として良く使用されている。
*ガブリエラ・ミストラル Gabriela Mistral 1945年ノーベル文学賞受賞
1889年~1957年。チリの詩人、政治家、外交官。唯一の女性文学賞受賞者。主要な作品は、「死のソネット」(Sonetos da la Muerte)、 「絶望」(Desolación)、「優しさ」(Ternura)等。受賞理由は、「その力強い動機に触発された抒情詩によって彼女の名が全ラテンアメリカの理想主義的な願望の象徴と化したこと」とある。「ラテンアメリカの母」という敬称を受けた。荒井正道氏や田村さと子氏の著作もある。
*ビセンテ・デ・ウイドプロ Vicente García Huidobro Fernández
1893年~1948年。チリの詩人。パリでCreaciónという芸術誌を創刊し、creacismoを創始した。代表作は、アルタソル Altazor。ガブリエラ・ミストラルやパブロ・ネルーダと共にチリの傑出した詩人と言われている。2013年ビセンテ・ウイドプロ博物館がオープンした。
*マヌエル・ロハス Manuel Rojas
1896年~1973年。チリの作家、詩人、ジャーナリスト。代表的な作品は、「シーザーたちの町」LaCiudad de los Césares、「泥棒の息子」 Hijo de ladrón。1957年国民文学賞受賞。新聞・雑誌への寄稿も多い。
*パブロ・ネルーダ Pablo Neruda 1971年ノーベル文学賞受賞
1904年~1973年。チリの詩人、外交官、政治家。主要な作品は、「20の愛の詩と1つの絶望の歌」(Veinte poemas de amor y una canción desesperada)、「マチュピチュの高み」(Alturas de Machu Pichu)、「100の愛のソネット」(Cien sonetos de amor)、「詩集」(Canto General)等。受賞の理由は「一国の大陸の運命と多くの人々の夢と生気を与える源となった力強い詩的作品」。ガルシア・マルケスは「どの言語の中でも20世紀最大の詩人」と称賛している。イタリア映画「Il Postino」でも有名。
*二カノール・パラ Nicanor Segundo Parra Sandóval
1914年~2019年。チリの詩人、物理学者、数学者。代表作は、「サロンの詩」やVersos de salón「厚い作品」Obra gruesa。2011年セルバンテス賞受賞。ノーベル賞候補にもなった他、多数の国際的な詩の賞を受賞した。
*ゴンサロ・ロハス Gonzalo Rojas
1916年~2011年。チリの詩人、作家、エッセイスト。 ゴンサロ・ロハス詩集(アンソロジー)Antrogía poéticaとして翻訳されている。「すべては傷」と唄うチリの詩人。2003年セルバンテス賞を受賞した他、国民文学賞、ソフィア女王イベロアメリカ詩賞も受賞。
*ホセ・ドノーソ José Donoso
1924年~1996年。チリの小説家、ジャーナリスト、教師。ラテンアメリカ文学ブームの立役者の一人。代表作は、「夜のみだらな鳥」El obscene pájaro de la noche、 「隣の庭」 El Jardín de al lado、「戴冠式」Coronación(映画化された)等。スペインから帰国後、文学教室を開き、後進の育成に努めた。チリ国民文学賞等を受賞。
*ホルヘ・エドワーズ Jorge Edwards Valdés
1931年~ 。チリの作家、文芸評論家、外交官、ジャーナリスト。代表作は、在キューバ大使時代の経験を描いた「ペルソナ・ノングラタ」Persona non grata や「家族の無用物」El Inútil de la familia等。1999年セルバンテス賞を受賞。その他チリ国民文学賞等も受賞。
*アントニオ・スカルメタ Antonio Skálmeta
1940年~ 。チリの作家。代表作は、「郵便配達人」Il postino (El cartero de Neruda)、「ビクトリアのダンス」 el baile de la victoria等。彼の作品は世界の25カ国語に訳されている。チリ国民文学賞他世界の多くの文学賞を受賞している。
*イサベル・アジェンデ Isabel Allende Llona
1942年~ 。チリの小説家。 バスク系のチリ人。父がサルバドール・アジェンデのいとこ。現在のチリ文学を代表する人気作家。代表作は、映画化された「精霊たちの家」La Casa de los espíritus、「パウラ、水泡なすはかない命」Paula、 「日本人の恋びと」、El Amante japonés。彼女の作品の多くは日本語に翻訳されている。チリ国民文学賞他世界の多くの文学賞を受賞している。
*ルイス・セプルべダ Luis Sepúlveda
1949年~2020年。 チリの小説家、ジャーナリスト。チリの軍事クーデターで逮捕され、投獄される。代表作は、「ラブストーリーを読む老人」Un Viejo que leía novelas de amorでフランスのベストセラー作品となった。他に「カモメに飛ぶことを教えた猫」Historia de una gaviota y del gato que le enseñó a volar。チリ及び外国で文学賞を受賞している。
*ロベルト・ボラーニョ Roberto Bolaño Ávalos
1953年~2003年。チリの小説家、詩人。チリの軍事クーデターで拘留される。代表作は、「野生の探偵たち」Los detectives salvajesでロムロ・ガジェーゴス賞、「2666」で全米批評家協会賞を受賞。その他「通話」Llamadas telefónicas等。近年、日本でも人気を集めている。
*シリロ・ビジャベルデ Cirilo Villaverde de la Paz
1812年~1894年。キューバの作家。代表作は、「セシリア・バルデス」Cecilia Valdésで、19世紀キューバの最高の小説と言われている。植民地時代の大地主・奴隷商人の私生児の娘のストーリーで階級と人種問題がテーマである。
*ホセ・マルティ José Martí Perez
1853年~1895年。 キューバの著作家、革命家、モデルニスモの先駆者。キューバの独立の英雄で、独立の使徒(Apóstol)と言われている。代表作は、詩集「イスマエリージョ」Ismaelillo。日本語にはホセ・マルティ選集3巻。
*ニコラス・ギジェン Nicolás Guillén
1903年~1989年。キューバの詩人、ジャーナリスト、政治家。キューバの国民的詩人と評されている。1961年より30年間にわたり、キューバ作家協会の会長を務める。外側から見た黒人に関する詩が多く、Poesía Negra(黒い詩)で有名。レーニン平和賞、キューバ国民文学賞を受賞。
*ドゥルセ・マリア・ロイナス Dulce María Loynaz
1902年~1997年。キューバの詩人、小説家。世界的な抒情詩作家と見なされている。代表作は、小説「庭」 Jardín で魔術的リアリズムの手法が見られる。 詩「名前のない詩」 Poemas sin nombre 詩「テネリーフェの夏」Un Verano de Tenerife。1992年セルバンテス賞を受賞。
*アレホ・カルペンティエール Alejo Carpentier y Valmont
1904年~1980年。キューバのジャーナリスト、小説家。20世紀のラテンアメリカ文学に大きな影響を与えた。魔術的リアリズムの旗手。フィデル・カストロ政権下で文化活動のリーダー役を務めた。代表作は、「失われた足跡」Los pasos perdidosで楽器を求めてジャングルに入る音楽家の話。 「この世の王国」 El reino de este mundoは、ハイチ革命を描いた小説。1977年セルバンテス賞を受賞。
*ホセ・レサマ・リマ José Lezama Lima
1910年~1976年。キューバの詩人、小説家、エッセイスト。 代表作は、小説「パラディーゾ」Paradisoで主人公の少年時代・青年時代の葛藤を描く。バロック調の文体でキューバのプルーストと呼ばれている。
*ギジェルモ・カブレラ・インファンテ Guillermo Cabrera Infante
1929年~2005年。キューバの小説家、評論家。代表作は、「トラのトリオのトラウマとロジー」TresTristes Tigres「煙に巻かれて」Holy smoke、 「熱帯の夜明けの景色」 Vista del amanecer en el trópico。1997年セルバンテス賞、1997年ビブリオテカ・ブレベ賞受賞。
*ニバリア・テヘーラ Nivaria Tejera
1929年~2016年。キューバの詩人、小説家。代表作は、「太陽の夢遊病者」Sonámbulo del sol 等。1971年ビブリオテカ・ブレベ賞を上記作品で受賞。人生の大部分をパリで過ごした。
*レイナルド・アレーナス Reinaldo Arenas Fuentes
1943年~1990年。キューバの小説家、詩人、劇作家。同性愛者のためキューバ政府に迫害される。代表作は、「夜明け前のセレスティーノ」Celestino antes del alba、「夜になる前に」Antes que anochezca等。
*レオポルド・パドゥーラ・フエンテス Leopoldo Padura Fuentes
1955年~2015年。 キューバの小説家、推理作家。代表作は、「犬を愛した男」El hombre que amaba a los perros、推理小説としては、マリオ・コンデ警部補シリーズ、その4作目の「秋の風景」 El paisaje de otoñoでダミール・ハメッド国際推理小説賞を受賞。2015年アストウリアス皇太子賞を受賞。
*ホルヘ・イサァクス Jorge Isaacs Ferrer
1837年~1895年。 コロンビアの小説家、詩人、政治家、軍人。代表作は、唯一の小説「マリア」Maríaでラテンアメリカのロマン主義文学の傑作。1人称で語られる悲恋物語。政治家としては、アンテイオキア州知事。
*ホセ・マリア・バルガス・ビラ José María de la Consepción Apolinar Vargas Villa-Bonilla
1860年~1932年。 コロンビアの作家、ジャーナリスト、出版者、政治活動家。代表作は、「アウラ、あるいはすみれの花束」Aula o las violetas、「アイビス」Ibis等。
*ホセ・エウスタシオ・リベラ José Eustasio Rivera
1888年~1928年。 コロンビアの詩人、小説家、法律家、ジャーナリスト。モデルニスモの流れを組む。代表作は、「渦」La Vorágineで国民的な叙事詩の傑作と評価されている。他に詩集「約束の地」Tierra de promisión
*アルバロ・ムティス Alvaro Mutis Jaramillo
1923年~2013年。 コロンビアの詩人、小説家、エッセイスト。現代イスパノアメリカ文学で最も重要な作家の一人と考えられている。1997年アストウリアス皇太子賞、2001年セルバンテス賞受賞。代表作は、「マクロール・ガビエロシリーズ」Empresas y tribulaciones el Gaviero。
*ガブリエル・ガルシア・マルケス Gabriel García Marques)1982年ノーベル文学賞受賞
1925年~2014年。コロンビアのジャーナリスト、小説家。主要な作品は、「百年の孤独」(Cien
años de soledad),「迷宮の将軍」(El general en su laberinto)、「族長の秋」(El otoño del patriarca)、「これらの時代の愛」(El amor en los tiempos del cólera)等。彼のほとんどの作品が翻訳されている。受賞の理由は、「現実的なものと幻想的なものとを融合させて、一つの大陸の生と葛藤の実相を反映する豊かな想像力の世界を構築した」こと。「魔術的リアリズム」という手法で、ラテンアメリカ文学の世界的ブームを起こした。ラテンアメリカの小説家で最も人気と知名度がある作家。
*フェルナンド・バジェホ Fernando Vallejo
1942年~ 。 コロンビアの小説家、映画製作者、エッセイスト。代表作は、「崖っぷち」El Desbarrancadero。この作品で2003年ロムロ・ガジェーゴス賞を受賞。その他「暗殺者の聖母」La Virgen de los sicarios、「碧き日々」Los días azules。1971年メキシコ国籍を取得。
*ラファエル・ウンベルト・モレーノ・ドゥラン Rafael Humberto Moreno Durán
1945年~2005年。コロンビアの小説家、短編作家、エッセイスト、劇作家。20世紀のコロンビア文学で重要な一人と評価されている。代表作は、「ファミナ・スイート」Famina Suite。
*ラウラ・レストレポ Laura Restrepo
1950年 ̄。コロンビアの作家、ジャーナリスト。若いころに社会主義の共鳴し、活動に従事した経験に基づく彼女の小説は、ラテンアメリカの社会の現実を知る上で役に立つ。代表作は、「妄想」Delirioでアルファグラ賞を受賞。内外の文学賞を多数受賞。
*エベリオ・ロセロ Evelio Rosero
1958年~ 。コロンビアの作家、詩人、ジャーナリスト。ポスト・ラテンアメリカ・ブームの世代を担う小説家の一人。代表作の「顔のない軍隊」Los éjercitos でツスケツ賞や英国の有力紙のインデペンディエンテ氏の外国賞を受賞。その他、「無慈悲な昼食」Los almuerzosや「ボリバルの馬車」La carroza de Bolívarがある。内外の文学賞を多数受賞している。
*ホルヘ・フランコ Jorge Franco Ramos
1962年~ 。コロンビアの小説家。ガルシア・マルケスはたいまつを渡したいコロンビアの作家の一人と言っている。代表作は「ロサリオの鋏」Rosario Tijeras、「パライソ・トラベル」Paraíso Travelは映画化された。「メロドラマ」Melodramaは舞台化された。多くの文学賞を受賞している。
*フアン・ガブリエル・バスケス Juan Gabriel Vázquez
1973年~ 。コロンビアの作家、ジャーナリスト。ソルボンヌ大学でラテンアメリカ文学博士号を取得。代表作は、「物が落ちる音」 El Ruido de las cosas al caerで2011年アルファグアラ賞を受賞。その他作品として、「コスタグアナ秘史」Historia secreta de Costaguanaがある。
*インカ・ガルシラーソ・デ・ラ・ベガ Inca Garcilazo de la Vega
1539年~1616年。スペインのコンキスタドーレスとインカの王族の娘との間に生まれたメステーソの歴史家、文学者。1561年にスペインにわたる。代表作は、「インカ皇統記」Comentarios reales de las Incasでインカの歴史、伝統、風習等を表した。
*リカルド・パルマ Ricardo Palma Soriano
1833年~1919年。ペルーのロマン主義、風俗主義作家で、現在のペルーでも最も敬愛されている 作家、学者である。初代国立図書館長。代表作は、「ペルー伝説集」 Tradiciones peruanas でペルーの歴史、伝統、風俗等を詳細に紹介した。1969年には、彼の名前をとった「リカルド・パルマ大学」が創設されている。
*クロリンダ・マット・デ・トウルネル Crolinda Matto de Turner
1852年~1909年。ペルーの作家でインデイヘ二スモ小説の先駆者。独立精神旺盛で、インデイヘナを擁護する作品で多くの女性を鼓舞した。物理学、自然科学、哲学を独学で学んだ。代表作は、小説「巣なき鳥」Aves sin nido、 「クスコ伝説集」 Tradiciones Cuzqueñas
*ホセ・マリア・アルゲダス José María Arguedas Altamirano
1911年~1969年。 ペルーの小説家、文化人類学者。ケチュア語を駆使し、インデイオノ世界を描くインデイヘ二スモの大家。ペルーの国民作家として敬愛されている。代表作は、「深い河」Los ríos profundos、 「すべての血」Todas las sangres。
*マリオ・バルガス・ジョサJorge Mario Vargas Llosa)2010年ノーベル文学賞受賞
1936年~。ペルーの作家、批評家、ジャーナリスト。主要な作品は、「都会と犬ども」LaCiudad y los Perros)、「緑の家」(Casa Verde),「誰がパロミノ・モレロを殺したか(Quién mató a Palomiro Molero?」等、翻訳多数。受賞理由は、「権力構造の地図と、個人の抵抗と反抗、そしてその敗北を鮮烈なイメージで描いた。」国際ペンクラブの会長を若くして務めた他、アルベルト・フジモリ氏とペルーの大統領選挙を争ったことで有名。1993年、スペイン国籍を取得。セルバンテス賞、アストウリアス皇太子賞も併せて受賞。
*アルフレド・ブライス・エチェニケ Alfredo Bryce Echenique
1939年~ 。ペルーの作家。フランス、スペイン等欧州での生活が長い。代表作は、「ジュリアスの世界」Un mundo para Juliusでこの作品により、ペルーの国民文学賞とフランスの最優秀外国小説賞を受賞。その他「幾たびもペドロ」Tantas veces Pedroや「マルテイン・ロマーニヤの大袈裟な人生」La Vida exagerada de Martin Romañaがある。
*ホセ・ワタナベ José Watanabe
1945年~2007年。ペルーの日系詩人、児童文学者。クアデルノ誌の若手詩人コンクールで最優秀賞を獲得。児童文学の出版や日本の俳句にも造詣が深い。彼の作品の一部は、日本語でも翻訳されている。「ペルー日系詩人、ホセ・ワタナベ詩集」等。
*フェルナンド・イワサキ Fernando Iwasaki
1961年~。ペルーの作家、歴史家、評論家で日系。バルガス・ジョサが高く評価している。現在、セビリャに在住し、スペインやラテンアメリカの有力紙に寄稿している。代表作は、10人の乙女の恋を描いた「悪しき愛の書」(Libro de mal amor),「ペルーの異端審問」(Inquisiciones Peruanas)等。
*エンリケ・ロドー José Enrique Rodó
1871年~1917年。 ウルグアイのエッセイスト、哲学者、思想家。1895年「文学・社会科学」誌を創刊。モデルニスモにおいて、ルベン・ダリオが文学で果たした役割を哲学・思想の面で果たした。モデルニスモ散文の巨匠。代表作は、「アリエル」Ariel。
*オラシオ・キロガ Horacio Silvestre Quiroga Forteze
1878年~1937年。ウルグアイの劇作家、詩人、短編作家。ジャングル物の作品を多数執筆し、ラテンアメリカの魔術的リアリズム作家に影響を与えた。主要作品は、「愛と狂気都市の物語」(Cuentos de amor de locura y de muerte)、「野生の書」(El salvaje)等。
*フアナ・デル・イバルブルー Juana de Ibarbourou
1895年~1979年。ウルグアイの詩人でラテンアメリカでもっと人気のある詩人の1人。自然と愛をテーマの作品をつくる。1979年、「ラテンアメリカのフアナ」という称号を受ける。ウルグアイ作家協会の会長も務める。代表作は、「ダイヤの舌」 Lenguas de diamantes
*フアン・カルロス・オネッテイ Juan Carlos Onetti
1909年~1994年。ウルグアイの小説家。1980年セルバンテス賞を受賞。 代表作は、「造船所」El astillero、「井戸」El Poso、「はかない人生」La vida breve、「ハコボと他者」Jacob y el otro等。
*イダ・ビターレ Ida Vitale
1923年~ 。ウルグアイの詩人、エッセイスト、文学評論家、翻訳家。ウルグアイの45年世代のメンバーであり、本質主義の詩(poesía de esencia y existencia)の代表。2018年セルバンテス賞を受賞、その他多数の文学賞を受賞している。
*アンヘル・ラマ Angel Rama
1925年~1983年。 ウルグアイの作家、学者、文芸評論家。45年世代のメンバー、共和国大学イスパノアメリカ文学科長、イダ・ビターレと結婚・離婚。代表作は、「識字都市」Ciudad letrada。1983年航空機事故によりバラハス空港で死亡。
*エドゥアルド・ガレアーノ Eduardo Hughes Galeano
1940年~2015年。 ウルグアイの著名なジャーナリスト、歴史家。アルゼンチンやウルグアイの軍政に反対し、スペインでの亡命生活を余儀なくされる。代表作は、「収奪された大地 ラテンアメリカの五百年」Las venas abiertas de America Latina、「スタジアムの神と悪魔」El futbol a sol y sombra等々。
*マリオ・レブレロ Jorge Mario Varlotta Levrero
1940年~2004年。ウルグアイの作家、カメラマン、劇作家。代表作は、「場所―フィクションのエルドラード」El lugar等。科学フィクションや政治的テーマの作品が多い。コミックのシナリオやクロスワード・パズルの制作なども手掛けた。
*ロムロ・ガジェーゴス Rómulo Angel del Monte Carmelo Gallegos Freire
1884年~1969年。ベネズエラの小説家、政治家。第48代共和国大統領。代表作は、 「ドーニャ・バルバラ」Doña Bárbaraで古典中の古典と評価されている。独立後に迫る米国の侵略に立ち向かうスリルに富む冒険と恋愛の物語。その他「カナイマ」Canaima。彼の功績を称え、スペイン語文学作品に与えられる「ロムロ・ガジェーゴス賞」が1967年創設された。大学時代にドーニア・バルバラが読解のテキストに使われ大いに苦しんだ思い出がある。
*アルトゥーロ・ウスラル・ピエトリ Arturo Uslar Pietri
1906年~2001年。ベネズエラの小説家、詩人、教育者、政治家で最も知られた人物。元大蔵大臣。 代表作は、「エル・ドラドへの道」El Camino de El Dorado、「赤い槍」 Las Lanzas Coloradas。まだ日本語に翻訳されていない。1990年アストウリアス皇太子賞受賞、1991年ロムロ・ガジェゴス賞を受賞。1970年代ジェトロが10日間、夫妻で招へいした際にアテンドしたが、驚くべき教養と見識の持ち主であった。日本の俳句にも大きな関心を持っていた。
*アドリアーノ・ゴンサレス・レオン Adoriano González León
1931年~2008年。ベネズエラの詩人、小説家、短編作家、ジャーナリスト。代表作は、「携帯国家」 País portátilで20世紀後半のベネズエラでの最高傑作と言われており、この作品でビブリオテカ・ブレベ賞を受賞した。
*エドムンド・パス・ソルダン Edmundo Paz Soldán
1967年~ 。 ボリビアの作家、バルガス・ジョサによれば、ラテンアメリカの新しい作家の中で最も創造性にあふれた作家であり、従来の魔術的リアリズムに変わるラテンアメリカ文学運動であるMcOndoの典型的な例である。代表作は、「チューリングの妄想」El Delirio de Turing でボリビア国民文学賞を受賞。近未来的なテクノスリラー小説。
*アルシーデス・アルゲダス Alcides Arguedas Díaz
1979年~1946年。 ボリビアのもっとも著名な作家、政治家、歴史家。彼の作品は、ボリビアのナショナル・アイデンテイテイに関連し、混血及び先住民の課題を扱っている。代表作は、「青銅の種族」Raza de Bronceや「ワタ・ワラ」Wata Wara。 インデイヘ二スモ文学の先駆け的存在。
*ペドロ・シモセ・カワムラ Pedro Shimose Kawamura
1940年~ 。ボリビアの国民的詩人、ジャーナリスト、作詞家。日系人。シモセの詩はボリビア国民にナショナル・アイデンテイテイを植え付け、かつ人々を社会的抑圧から解放したと言われる。代表作は、「ボクは書きたいのに出てくるのは泡ばかり」Quiero escribir, pero me sale espuma。ボリビア国民文化賞ほかの賞も受賞、多くの言語に翻訳されている。
*ホセ・デ・ラ・クアドラ José de la Cuadra
1903年~1941年。社会的リアリスト作家で、彼の短編はエクアドル文学で最も重要と考えられている。代表作は、「サングリマ一家」Los sangrimasで、闘争と伝説に満ちたサングリマ一家のストーリー。
*ホルヘ・イカサ Jorge Icaza Coronel
1906年~1978年。エクアドルのインデイヘ二スモの流れをくむ小説家。代表作は、「ウアシプンゴ」Huasipungoでエクアドルの白人支配層から搾取される先住民の姿を描いた小説で、日本語訳もある。ウアシプンゴとはケチュア語で、地主が労働と引き換えにインデイオに分与する小作地を意味する。
*ホルヘ・カレラ・アンドラ―デ Jorge Carrera Andrade
1902年~1978年。エクアドルの詩人、外交官、歴史家。重要国の大使を務め、後に外務大臣に就任。日本にも駐在。彼は詩作を通じてエクアドルの歴史を語ると言われている。代表作は。「海と陸の時報」Los boletines de mar y tierra、「霧の訪問者」El visitante de niebla。
*ミゲール・アンヘル・アストゥ―リアス Miguel Angel Asturias
1967年ノーベル文学賞。1899年~1974年。グアテマラの小説家、外交官。主要な作品は、独裁者を描いた「大統領閣下」(ElSeñor Presidente)、「グアテマラ伝説集」(Leyendas de Guatemala)等(翻訳あり)受賞理由は、「ラテンアメリカの先住民の伝統と国民性に深く根ざした鮮やかな文学的業績」。魔術的リアリズムの担い手としてラテンアメリカ文学のブームの先駆者の役割を果たした。
*アウグスト・モンテローソ Augusto Monterroso Bonilla
1921年~2003年。 ホンジュラス生まれのグアテマラの作家。1960年代のラテンアメリカ文学ブームの中心人物の1人でエル・エスペクタドール氏の創刊者。代表作は、「全集その他の物語」 Obras completes y otros cuentos。世界で最も短い小説として知られる「恐竜」はCuando despertó, el dinosaurio todavía estaba allí.(彼[1]が目を覚ましたとき、恐竜はまだあそこにいた。)1997年アストウリアス皇太子賞を受賞。メキシコ政府からもアギラ・アステカ勲章を受章。
*エドゥアルド・ハルフォン Eduardo Halfon
1971年~。グアテマラの作家。10歳で米国に渡る。代表作は、「ポーランドのボクサー」El boxeador polaco (日本語訳あり)、「悲嘆」Duelo,英語訳Mourningで数多くの国際文学賞を受賞している。
*ルベン・ダリオ Ruben Darío García Sarmiento
1867年~1916年。ニカラグアの詩人、ジャーナリスト、外交官。19世紀ラテンアメリカが生んだもっとも偉大な詩人でラテンアメリカのモデルニスモの代表の一人。アウグスト・サンデイーノと並んでニカラグアの国民的英雄。代表作は、命と希望の歌 Cantos de vida y esperanza、「青」,Azul,、「全集」Obras completas。ニカラグアの100コルドバ紙幣に使われている。最近、「ルベン・ダリオ全集物語」が発行された。
*セルヒオ・ラミ―レス Sergio Ramírez Mercado
1942年~ 。ニカラグアの作家、ジャーナリスト、政治家。1984年~90年ダニエル・オルテガ政権の元副大統領。代表作は、「ただ影だけ」Sombra nada másでソモザ政権末期に逃亡を図り、失敗し、民衆裁判にかけられる話。他に 「仮面舞踏会」Un baile de máscaras。2017年セルバンテス賞を受賞。
*アウグスト・ロア・バストス Augusto Roa Bastos
1917年~2005年。 パラグアイのジャーナリスト、パラグアイで最も有名な作家。1989年にセルバンテス賞を受賞。代表作は、チャコ戦争を描いた「汝、人の子よ」Hijo de hombreや独裁者や軍事独裁に挑んだ「至高の存在たる、余波は」Yo el supremoがある。
*オラシオ・カステジャーノス・モヤ Horacio Castellanos Moya
1957年~ 。エルサルバドルの小説家、ジャーナリスト。代表作は、「無分別」Insensatezでグアテマラにおける先住民虐殺を取り扱い、英訳された作品や「崩壊」Desmoronamientoがある。2作品とも日本語に翻訳されている。
*デレック・ウオルコット Derek Alton Walcotto 1992年ノーベル文学賞受賞
1930年~2017年。セイント・ルシアの詩人、劇作家。カリブ海で初めてのノーベル文学賞を受賞。「デレック・ウオルコット詩集」として翻訳されている。その他劇作品「オデッセイ」Odysseyがある。ノーベル賞の受賞理由は、「偉大なる明るさ、歴史的視野に支えられた多文化融合の産物たる詩的創造に対して」となっている。
下記の10名のブラジル人作家については、原則日本語の翻訳のある作品を紹介している。
*ジョゼー・デ・アレンカール José de Alencar
1829年~1877年。 ブラジルの弁護士、ジャーナリスト、政治家、小説家等。ブラジルのロマン主義文学を代表する作家。主要な作品は、 「イラセマ」Iracema,Lenda de Ceara で先住民の娘イラセマと白人戦士のマルチンとの恋の葛藤を通じて,ブラジル人誕生を象徴的に描く神話的世界。他に「オ・グアラニー」O Guaraniがある。
*ジョアキン・マシャード・デ・アシス Joaquim Maria Machado de Assis
1839年~1908年。 ブラジルの小説家、詩人。 ブラジルの写実主義の代表者でブラジル文学史上最大の文豪と評価されている。1896年、ブラジル文学アカデミーを設立。代表作は、「ドン・カズムーロ」Dom Casmurroで妻と親友の間の不倫に嫉妬で苦悩する主人公を描く。他に 「ブラス・クーバスの死後の回想」1881 – Memórias Póstumas de Brás Cubasがある。
*エウクリーデス・ダ・クーニャ Euclides da Cunha
1866年~1909年。 ブラジルの作家、社会学者、ジャーナリスト。代表作は「奥地の反乱」OsSertõesで、19世紀末バイーア奥地で繰り広げられた「カヌードス戦争」をエスタド・デ・サンパウロ紙の特派記者として現地取材した著者が、従軍記事を再構成し、そこに土地や住民についての地理学・人類学的考察を加えた作品である。(岸和田仁氏の原稿から引用)
*グラシリアーノ・ラーモスGraciliano Ramos
1892年~1953年。ブラジルのモデルニスモ作家、政治家、ジャーナリスト。セルトンの住民の貧困層の生活を描く。 代表作は 「干からびた生活」 Vidas Secas や「監獄の記憶」 Memorias de Carceresは映画化されている。
*マリオ・デ・アンドラ―デ Mario de Andrade
1893年~1945年。 ブラジルの詩人、小説家。ブラジルのモデルニスモの創始者の一人、ブラジルの近代詩を確立した。代表作は「マクナイーマ」Macunaimaで、インデイオに関わるおとぎ話を連ねたジャングルに生まれた英雄マクナイーマのストーリー。
*ジョゼー・リンス・デ・レーゴJosé Lins do Rego Cavalcanti
1901年~1957年。ブラジルの小説家。代表作は「砂糖園の子」Menino do Engenhoで北東部の広大な砂糖園の中で繰り広げられる自伝的小説で、失われた時を求めてをほうふつとさせる。他に「消えた火」Fogo Mortoがある。
*ジョアン・ギマランエス・ローザ Jolão Guimarães Rosa
1908年~1967年。 20世紀で最も重要な作家の一人と評価されるブラジルの作家、外交官。主要な作品は、「大いなる奥地 小径」 Grande Sertao : Veredasでモデルニスモの実験的ロマンス小説と言われている。
*ジョルジェ・アマ―ド Jorge Amado
1912年~2001年。 20世紀ブラジル文学を代表する作家で作品の多くが英語、フランス語等48の言語に翻訳されている。代表作は「カカオ」Cacau、「フロル夫人と二人の夫」Dona Flor e seus dois maridos。1994年、ポルトガルの「カモンイス賞」を受賞。1977年には、ノーベル文学賞候補になった。
*クラリッセ・リスペクトル Clarice Lispector
1920年~1977年。 ウクライナ生まれのブラジルの女流作家。革新的な小説と短編で国際的に評価されている。代表作は、「G.H.の受難」 A paixao segundo G.H.と「家族の絆」 Lacos de familiaは日本語訳がある。「星の時」A hora da Estrelaは映画化された。
*パウロ・コエリョ Paulo Coelho
1947年~ ブラジルの作詞家、小説家。現在世界で最も読まれている作家で、彼の作品は38か国語に訳されている。代表作は、「星の巡礼」 Diario de um Magoでデビュー作で、この作品により、ブラジル人のサンテイアゴ・デ・コンポステラ巡礼が急激に増加した。その他「アルケミスト」O Alquimista 、「ピエドラ川のほとりで私は泣いた」 Na margem do rio Piedra eu sentei e chorei等々。2007年アンデルセン賞を受賞。日本でも多数の文庫本が出版されている。
*ネリダ・ピニョン Nelida Pinon
1987年~ 。ブラジルの作家、脚本家、エッセイスト。ブラジルで現在、喪音も先端的な作家と考えられている。代表作は、「夢の共和国」 A republica de sonhos、「カエタナのスイート・ソング」A doce cancao de Caetana。2005年、アストウリアス皇太子賞を受賞。
以 上
参考資料1「100人の作家で知るラテンアメリカ文学ガイドブック」で寺尾隆吉氏が紹介するラテンアメリカの作家リスト
サマンタ・シュウエブリン(アルゼンチン) アレハンドロ・サンブラ(チリ)
フアン・ガブリエル・バスケス(コロンビア) ホルヘ・ボルピ(メキシコ)
エドムンド・パス・ソルダン〈ボリビア〉 ロドリゴ・フレサン(アルゼンチン)
ホルヘ・フランコ(コロンビア) フェルナンド・イワサキ(ペルー)
カルロス・フランツ(チリ) ロドリゴ・レイ・ローサ(グアテマラ)
エクトル・アパッド・ファシオリンセ(コロンビア) エベリオ・ロセロ(コロンビア)
オラシオ・カステジャーノス・モヤ(エルサルバドル) フアン・ビジョーロ(メキシコ)
レオナルド・パドゥーラ・フエンテス(キューバ) ロベルト・ボラーニョ(チリ)
アルベルト・ルイ・サンチェス(メキシコ) ラウラ・レストレーポ(コロンビア)
ラウラ・エスキベル(メキシコ) ルイス・セペルべダ(チリ)
セサル・アイラ(アルゼンチン) ジョコンダ・ベリ(ニカラグア)
レイナルド・アレナス(キューバ) ノルベルト・フエンテス(キューバ)
フェルナンド・バジェ―ホ(コロンビア) セルヒオ・ラミレス(ニカラグア)
イサベル・アジェンデ(チリ) アリエル・ドルフマン(チリ)
リカルド・ピグリア(アルゼンチン) エドアルド・ガレアーノ(ウルグアイ)
グスタボ・サインス(メキシコ) マリオ・レブレーロ(ウルグアイ)
ホセ・エミリオ・パチェ-コ(メキシコ) アルフレド・ブライス・エチェニケ(ペルー)
ルイサ・バレンスエラ(アルゼンチン) フアン・ホセ・サエール(アルゼンチン)
マリオ・バルガス・ジョサ(ペルー) フェルナンド・デル・パソ(メキシコ)
トマス・エロイ・マルテイネス(アルゼンチン) セルヒオ・ピトル(メキシコ)
マヌエル・プイグ(アルゼンチン) サルバドール・エリゾンド(メキシコ)
エレーナ・ポニアトウスカ(メキシコ) エベルト・パディージャ(キューバ)
ホルヘ・エドワーズ(チリ) フアン・ヘルマン(アルゼンチン)
フリオ・ラモン・リベイロ(ペルー) ギジェルモ・カブレラ・インファンテ(キューバ)
カルロス・フエンテス(メキシコ) ホルヘ・イバルグエンゴイティア(メキシコ)
ガブリエル・ガルシア・マルケス(コロンビア) ホセ・ドノソ(チリ)
アルバロ・ムティス(コロンビア) アウグスト・モンテローソ(ホンジュラス)
マリオ・ベネデッティ(ウルグアイ) フアン・ホセ・アレオラ(メキシコ)
アウグスト・ロア・バストス(パラグアイ) フアン・ルルフォ(メキシコ)
エレーナ・ガーロ(メキシコ) ホセ・レブエルタス(メキシコ)
アドルフォ・ビオイ・カサレス(アルゼンチン) フリオ・コルタサル(アルゼンチン)
オクタビオ・パス(メキシコ) ブラウリオ・アレナス(チリ)
ビルヒリオ・ピニェーラ(キューバ) エルネスト・サバト(アルゼンチン)
ホセ・マリア・アルゲダス(ペルー) ホセ・レサマ・リマ(キューバ)
マヌエル・ムヒカ・ライネス(アルゼンチン) フアン・カルロス・オネッテイ(ウルグアイ)
ミゲル・オテロ・シルバ(ベネズエラ) ホルヘ・イカサ(エクアドル)
アルトウーロ・ウスラル・ピエトリ(ベネズエラ)アレホ・カルペンテイエール(キューバ)
パブロ・ネルーダ(チリ) アグステイン・ヤニェス(メキシコ)
ホセ・デ・ラ・クアドラ(エクアドル) シルビナ・オカンポ(アルゼンチン)
フェリベルト・エルナンデス(ウルグアイ) レオポルド・マレチャル(アルゼンチン)
ロベルト・アルルト(アルゼンチン) ミゲール・アンヘル・アストウリアス(グアテマラ)
ホルヘ・ルイス・ボルヘス(アルゼンチン) マヌエル・ロハス(チリ)
セサル・バジェ―ホ(ペルー) ビクトリオ・オカンポ(アルゼンチン)
ホセ・エウスタシオ・リベラ(コロンビア) マルテイン・ルイス・グスマン(メキシコ)
リカルド・グイラルデス(アルゼンチン) ロムロ・ガジェーゴス(ベネズエラ)
アルシデス・アルゲダス(ボリビア) オラシオ・キローガ(ウルグアイ)
レオポルド・ルゴーネス(アルゼンチン) マセドニオ・フェルナンデス(アルゼンチン)
マリアノ・アスエラ(メキシコ) ルベン・ダリオ(ニカラグア)
ホセ・マルティ(キューバ) クロリンダ・マット・デ・トウルネル(ペルー)
ホルヘ・イサークス(コロンビア) ホセ・マルモル(アルゼンチン)
参考資料2:今読みたい︕スペイン語⽂学リスト付録2010〜2019 年に翻訳出版された作家たち(NPO法人イスパニカ文化経済交流協会作成・提供)