日本へはいまや世界最高水準のスペシャルティコーヒー豆が輸入され、優れたコーヒー焙煎家(ロースター)、ビーンズショップ、コーヒー専門店が多く存在する。本書はそのうち「カフェ・バッハ」(1968年東京都台東区日本堤に田口 護夫妻が創業、世界各地の生産者から入手した生豆を自家焙煎技術で提供)、「堀口珈琲」(1990年東京都世田谷で堀口俊英氏が開業、生産国を頻繁に訪れ単一農園の生豆調達に努め深煎り焙煎に取り組み)、「丸山珈琲」(1991年長野県軽井沢に丸山健太郎氏が創業、世界の産地で買い付け)の3店が自信をもって薦めるシングルオリジンコーヒーの図鑑を中心に、1杯のコーヒーが出来るまでの基本知識として素材、精製、焙煎、抽出と淹れ方を懇切に説明し、さらに各店のブレンド哲学、バリスタの育て方、バリエーションコーヒーとしてのエスプレッソ、カプチーノ、アイスコーヒーの作り方、日本全国のスペシャルティコーヒーショップの紹介、コーヒー用語集と3店の店舗紹介を付している。
シングルオリジンコーヒー図鑑(P.76~165)は、冒頭に豆の特徴、味わい方を簡潔に表示し、生産国・農園名等を冠したシングルオリジンの名称、生豆・焙煎豆の実物大写真、3店と各生産国・農園との関わりや農園の歴史、各店で売られているシングルオリジンの味わい、フレーバーが分かる焙煎度合い、生産地や農園の基本情報や品種・精製方法などのデータを、各豆毎に1~2頁で解説している。各店とも過半はラテンアメリカ産のスペシャルティコーヒーを挙げており、グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマ、ハイチ、ジャマイカ、ドミニカ共和国、コロンビア、ペルー、ブラジル、ボリビア産を紹介、スペシャルティコーヒーの魅力を、産地の農園の生産者とともに伝えていて、1杯のコーヒーの奥深さ、背景にある光景が実感できる。
〔桜井 敏浩〕
(世界文化社 2021年6月 224頁 1,400円+税 ISBN978-4-418-21303-0)