『トマトの歴史 「食」の図書館』 クラリッサ・ハイマン - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『トマトの歴史 「食」の図書館』  クラリッサ・ハイマン 


ジャガイモ、茄子、煙草などともにナス科に属するトマトは南米北西部が原産地と考えられ、コルテスのアステカ征服後に欧州に持ち込まれたと考えられるが、当初は鑑賞植物あるいは薬草であったが、次第に16、17世紀頃から普及しスペインのアンダルシア地方で多く栽培され、やがてイタリアでは19世紀にはイタリア料理に欠かせない食材となり、北米へは欧州から里帰りして18世紀頃から消費と生産が拡大し、缶詰のスープやトマトケチャップが発売されるようになった19世紀以降爆発的に家庭でも使われるようになった。

南米原産でもともと種類が多くメソアメリカで古代の時代から食されてきた新世界のトマトが、いまや世界で最も広く育てられている野菜になり、品種改良や温室によって栽培技術が進歩し、遺伝子組み換えなどの科学技術によって「人間が栽培するトマト」は今も未来を拓き続けている。

〔桜井 敏浩〕

(道本美穂訳 原書房 2019年10月 183頁 2,200円+税 ISBN978-4-562-05657-6 )