連載パナマ・レポート17: ルベン・ロドリゲス 2021年 9月分 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載パナマ・レポート17: ルベン・ロドリゲス 2021年 9月分


連載パナマ・レポート17: ルベン・ロドリゲス 2021年 9月分

執筆者:Ruben Rodriguez Samudio(北海道大学法学研究科助教・パナマ共和国弁護士)

I. 新型コロナウイルスの現状

9月26日時点で、パナマにおける新型コロナ・ウィルスの感染者は465,933人、死亡者は7,201人、回復者は455,119人と確認された。汎米保健機構は8月29日以降、パナマの感染率は減少傾向を示していると発表した。また、9月21時点で、ワクチンを二回接種した者は、人口の68%を超えたと分かった。パナマ接種計画は、1月下旬に開始し、9月22日時点、約470万回分のファイザーワクチンと75万回分のアストラゼネカワクチンが提供され、スクレ(Sucre)保健相は、2021年以内に集団免疫を達成したいと述べた。新感染者の減少をもって、政府が9月27日以降、夜間外出禁止命令および外出禁止命令を解除すると決定した。

 さらに、政府は、内閣決定によって10月1日からパナマに訪問する観光客にアストラゼネカ産のワクチンを提供する計画Vacutur-Panamáを発表した。Vacutur-Panamáの実地は観光局に託され、ショッピングモールで行われる。接種希望者は、30歳以上でパナマのホテルに最低二日の宿泊を予約しなければならない。ハイリスクの国から入国する者は、更に三日の隔離も負担しなければならない。ワクチン観光を行った者は、二回目接種までの六週間はパナマ国内での滞在または、一時出国し、二回目接種のために改めて入国することもできる。Vacutur-Panamaによって観光業界に125,000,000ドルの利益、および100,000人の雇用は予測されている。 

Ⅱ.政治

A.選挙法改正

与党のPRDは、選挙裁判、政党、国民の代表によって構成された国家選挙法改正委員会(Comisión Nacional de Reformas Electorales)が作成した選挙法改正の内容を変更したため、国民より批判の声が上がっていた。国家選挙法改正委員会の法案では、政治資金の収支・管理・透明性に関する規定を改善した。しかし、PRDは、無所属候補および国民解職の条件を厳正した、無所属候補に必要な署名の収集期間は、15ヶ月から3か月とした。さらに、現行法の総選挙に当選した者は、財産報告を行う義務が削除された。選挙裁判所は、提案されている改正は違憲の可能性があり、表現の自由侵害、政府の透明性に違反すると指摘した。PRD法案へ行われた全国デモは、PRDの支持したノリエガ独裁政権に対するデモのイメージをよみがえらせ、法案は撤回された。選挙法典の改正は、選挙裁判所の判事を含む委員会で作成されることとなった。

Ⅲ.経済

A.経済回復

統計局は2021年の第2四半期(4月-6月)の予備的なデータを公開した。2007年を基準とした2021年第2四半期のGDPは91億2490万ドルを超え、前年同期比40%増加した。2018年以降のGDP変動は次の通りである。9月下旬時点、2021年のGDPは前年同期比10%増加し、政府が予測した9%を上回っている。

2019-2020の変動を基準とし、2020-2021年の第二四半期において全体的な回復傾向がある。とくに、建設(489%)、卸売・小売(23.9)、ホテル・レストラン(92.0%)、娯楽(189.7%)は、大幅に伸びている。6月に公開された第一四半期のデータでは、ホテル、レストラン業界(-54%)、建設業界(-35%)が減少していた。2019年GDPの22%を占めた鉱業は2021年第2四半期では728%伸びた。現在、パナマ政府とカナダのFirst Quantumを管理しているMinera Panamáは、採掘権の契約を再交渉している。

IV.外交

移民問題

コルティソ大統領は、9月23日に国連総会において移民問題に対応する資力がないと主張し、国際協力を要請した。また、2021年1月にカリブやアフリカからアメリカを目指す移民が800人であったのに対して、9月時点では30万人に増えたと述べた。8月上旬にパナマとコロンビアは、近年悪化している移民問題について協定を締結し、一日につきパナマに入国できる人数が制限されることになった。

以    上