『世界の美しい民藝 -暮らしと祈りの手仕事』 巧藝舎 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『世界の美しい民藝 -暮らしと祈りの手仕事』  巧藝舎


 1970年代創業の輸出業の傍ら海外から民芸品の輸入を始めて1978年から民芸品輸入、卸し、小売りを行ってきた民藝舎(本社:横浜市中区山手町)のアジア、アフリカ、中南米のコレクションの選り抜き320点の図鑑。ここで取り上げられた民芸品にはいわゆる「作家」の作品はないが、どれもその土地の人々の暮らしの中に息づき、長い歴史の中で大事に守られてきた伝統が感じられるものばかりである。世界各地で社会が変容し世代交替が進んでいるが、人々の心に深く響く品々は、時代の変化があっても変わることはなく、後世の参考になるとの信念から、両親、弟とともに巧藝舎を支えてきた著者(小川 能里枝)の簡潔かつ的確な解説が付されている。

 中南米の民芸品は14頁から81頁の間に24のペルーのアヤクーチョの素焼きの教会のミニアチュア、グアテマラやメキシコ、ペルーの陶器、コロンビアの土偶と鉢、メキシコの素焼き人形、ペルー・アマゾン河上流のピーロ族の独特の幾何模様の容器や人形、アンデス高地の木彫り人形・玩具、ペルーの携帯用簡易祭壇(レタプロ)、メキシコ南部オアハカの木彫り玩具、アンデスの祭り・信仰の道具、メキシコのアステカ帝国時代から続く椅子の構造を持つエキパルチェア、ペルーのチチカカ湖畔の十字架、メキシコやペルーにスペイン人が持ち込んだガラス、プレインカ時代から染色品、パナマのカリブ海側サンブラス諸島のクーナ族の衣装のモラやエクアドルの絣(かすり)、アンデス高地のアルパカやリャマ等の毛で作った自然染色、刺繍のマンタや袋と網・タペストリー、グアテマラの伝統的な女性衣装のウィピル(上着)とともに着られるコルテ(スカート)などの逸品が紹介されていて、ラテンアメリカ各地に伝わってきた素晴らしい民芸品の一端を見ることが出来る。

〔桜井 敏浩〕

(巧藝舎 グラフィック社 2021年5月 320頁 3,300円+税 ISBN978-4-7661-3260-1 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2021年秋号(No.1436)より〕