世界の熱帯林を9か所、アフリカ、東南アジアとともに中南米からはペルーのアマゾン河上流の村での森林利用(大橋麻里子日本学術振興会特別研究員)、パナマ東部先住民の暮らしから「持続可能性」の未来をみる(近藤 宏早稲田大学助教)、コーヒー栽培という伝統的な焼き畑自給農業とは異なる生業が支え合うパナマ中部の農村の暮らし(藤澤奈都穂京都大学東南アジア地域研究所 日本学術振興会特別研究員)、ブラジル・アマゾンの集落での土地なし農民の社会的再生と連帯経済等を通じて尊厳を取り戻す場所としての熱帯林(石丸香苗福井県立大学准教授)の4編を取り上げている。
森林がなければ人の lifeは成り立たない、人間の生活があるからこそ森が生きる、そこに暮らす一人一人の多様なつながりによって熱帯林は新しい価値が生まれる。本書は熱帯林をテーマにしているが、その生物学的特色には立ち入らず、森林を資源としてではなく人のlife から考えようという共通する意図をもって熱帯林と人とのつながりを見ようとした意欲的な研究書。
〔桜井 敏浩〕
(京都大学学術出版会 2021年3月 296頁 3,600円+税 ISBN978-4-8140-0334-1 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2021年秋号(No.1436)より〕