歩みを止めるな! 世界の果てまで952日リヤカー奮闘記』 吉田 正仁 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

歩みを止めるな! 世界の果てまで952日リヤカー奮闘記』  吉田 正仁


 2009年から4年半をかけて約70kgの荷を載せたリヤカーを引いて、徒歩でユーラシア、北米、オーストラリア大陸、東南アジア、アフリカ大陸の60か国を回った著者が、五大陸踏破の目的達成のために最後に残った南アメリカ大陸縦断に続けて北米北端まで到達するまでの記録。

2015年9月末から始まった最後の旅は「世界の果て」パタゴニアのウシュアイアから始めた。防災用の折り畳み式アルミ製で170kgの耐荷重あるリヤカーに身の回り品と水・食料を積み、平均時速5kmでひたすらフエゴ島、パイネからパタゴニアの荒原とアンデス山中を、時には334kmの無補給区間を歩き、ボリビアの高地、マチュピチュ、ペルー海岸砂漠を北上したが、ペルー最高峰ワスカランを眺望する4,767mの峠の絶景は世界で最も美しい道だという。

南米大陸のゴールと決めていたエクアドルの首都キトの赤道記念碑に到達したが、南米北端まで行きたい気持ちは抑えられず、治安の懸念から断念していたコロンビアを北上してパナマ地峡へは海路で渡ってパナマに入国、そこからコスタリカ、ニカラグア、エルサルバドル、グアテマラの中米の旅は危険に満ちていた。そしてメキシコに入りオアハカを通って北上し、ついに米国国境のシウダーフアレスに到達する。この後、米中西部を北上しカナダからアラスカで北極海の海岸に着いたところで、およそ8万kmに及んだ長い旅は終わる。スピードとは無縁の徒歩旅行でしか出会えない人々との交流、数々のアクシデントの中から、南米・中米の通過した道での体験と見聞が語られているユニークな旅行記。

〔桜井 敏浩〕

(産業編集センター 2021年5月 392頁 1,200円+税 ISBN978-4-86311-300-8 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2021年秋号(No.1436)より〕