連載パナマ・レポート19: ルベン・ロドリゲス 2021年 11月分 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載パナマ・レポート19: ルベン・ロドリゲス 2021年 11月分


連載パナマ・レポート19: ルベン・ロドリゲス 2021年11月分

執筆者:Ruben Rodriguez Samudio(北海道大学法学研究科助教・パナマ共和国弁護士)

I. 新型コロナウイルスの現状

 11月25日時点で、パナマにおける新型コロナウィルスの感染者は476,873人、死亡者は7,360人、回復者は466,850人と確認された。11月24日から追加ワクチンが提供される。追加ワクチンの対象は、二回目のワクチン接種から6か月経過している18歳以上の者とされている。パナマでは、ファイザーやアストラゼネカのワクチンが利用され、いずれの場合も、追加ワクチンはファイザーとなる。55歳以上の追加ワクチン接種は10月12日から行われている。パナマ政府は、アストラゼネカおよびファイザーワクチン確保に9,200万ドルを払って、11月25日時点では`ワクチンの60万回分は提供されている。

Ⅱ.政府

A.マルティネリ元大統領の裁判

 11月10日にリカルド・マルティネリ元大統領(2009年-2014年)が任期中に野党のメッセージを傍受命令を下した疑いの裁判で無罪判決を受けた。マルティネリ元大統領は、2014年の任期後、傍受命令の調査対象となり、2017年にアメリカで逮捕され、パナマへ送還されたが、2019年に無罪判決が下された。しかし、高等裁判所は無罪判決を取り消し、再審を命令した。再審の裁判官は、マルティネリ元大統領が自ら傍受の命令をした証拠がないと述べ、無罪判決を下した。パナマ法の下では再審の無罪判決に対する控訴は認められないため、判決は確定している。

B.運河の仲裁判断

アメリカのフロリダ州裁判所は、パナマ運河拡張を担当した建設共同事業体GUPCがパナマ運河局に2億4千万ドルを支払うよう命令した仲裁判断の取消を棄却したと。GUPCは、仲裁人の中立性、手続きの不平等を訴えたが、裁判所は、その主張を認めなかった。2020年9月25日に、建築材料の変更によって4億3千万ドルの損害が発生したと主張し、パナマ運河局に対して損害賠償を求めたが国際商業会議所の国際仲裁裁判所は、請求を棄却した。

Ⅲ.経済

A.経済状況

パナマ総税局は、2021年1月から10月までの歳入は、46億2千万ドルで前年同期比16.6%増加(6億5830万ドル)し、2021年の予算化された金額を6億2330万上回っていると発表した。また、国会は、デジタル領収書の利用を認可するため、税法改正を可決した。改正前の税法は物理的な領収書のみを認め、零細企業の整備やソフトに関する負担が高かったという指摘があった。デジタル領収書によって脱税を防ぐだけでなく、月200件の取引まで、年間収入100万ドルまでの企業は、政府が無料で提供している請求書作成ソフトを利用することができる。VISAのラテンアメリカにおける電子商取引に関する調査によれば、パナマでの電子商取引は総合取引の34%を占め、ドミニカ共和国(32%)、ペルー(28%)、コロンビア(26%)、チリ(35%)、ブラジル(18%)、コスタリカ(16%)を超えている。

  また、統計局の報告書によれば9月の財とサービスの取引を図る月間経済活動指数(Índice Mensual de Actividad Económica, IMAE)は、前年同期比約15%増加し、6ヶ月連続で上昇している。銅鉱業、建設、農業、通信、流通、保管、民間医療サービスの業界が成長したことに対して、ホテル、レストラン、教育、金融、不動産の業界はまだ回復していない。とくに、不動産業界では、パナマはラテンアメリカにおいて最も高い賃貸物件の空室率(30%)の国である。パナマに次ぎ、メキシコおよびブラジル(17%)、ペルー(15%)、コロンビア(12%)、コスタリカ(9%)、アルゼンチン(8%)、チリ(6%)となっている。

B.輸出の最高記録

 パナマ輸出組合のRoberto Tribaldos組合長は、2021年9月までの輸出は約25億ドルを上回り、2021年の輸出は30億ドルを超える予測であると発表した。これは過去最高の金額となる。パナマの主な輸出相手は、アメリカ、日本、中国、韓国、スペイン、ドイツ、オランダであり、2021年9月までのラム酒、紙加工品、木材の輸出量は前年同期比40%増加している。

 国際宅配便のDHLは、パナマから出発するアメリカとチリを繋げる新ルート開始を発表した。この新しいルートによってアメリカとチリの配達時間は24時間短縮されることが分かった。また、アメリカ人投資家のウォーレン・バフェットの会社であるPilot Travel Center/Tartan Oilは、コロン県のTelfers流通センターを利用し、100万の石油用バレルの保管、およびその製品をカリブ海と南米の地域へ流通することが分かった。Telfer流通センターは自由貿易地域にあるため、多くの関税は免除されている。

IV.外交

A.アメリカ陸軍工兵司令部との協定

 パナマ政府とアメリカ陸軍工兵司令部は、パナマ運河と国民の水道を保護するため水資源管理についてコンサルティング協定を結んだ。パナマ運河局は、6月に水資源管理、処理について入札公示し、アメリカ陸軍工兵司令部は、民間企業の提案を評価し、発展モデル、実施方法、シミュレーションを行う。

以    上