執筆者:Ruben Rodriguez Samudio(北海道大学法学研究科助教・パナマ共和国弁護士)
12月25日時点で、パナマにおける新型コロナウィルスの感染者は476,873人、死亡者は7,360人、回復者は466,850人と確認された。12月24日時点で、622万回分のワクチンが提供され、人口の81.3%はワクチンを二回接種している。12月22日から、二回目の接種から3か月経過している者に追加接種行われている。11月下旬以降、死亡者は減少しているが、12月19日に、アフリカに入国歴のある男性が初めてオミクロン株感染者となり、感染者が増加している。
11月28日から12月4日の7日間に、感染者は1252人で、感染率は3.5%であったことに対して、12月19日から25日の間、新感染者827人が確認され、感染率は7.2%まで上がっている。また、12月25日時点、オミクロン株の感染は9件確認され、17件は検査中である。汎米保健機構は、パナマの全国病床使用率は54%まで上がり、ICU(集中治療室)の病床使用率は46%となっているため、状況が安定していると評価した。
政府は、現時点においてオミクロン株の発生による移動制限を検討していないが、パレード、その他の伝統的な様々なイベントが中止されている。
A.マルティネリ兄弟の裁判
マルティネリ元大統領の息子であるリカルド・マルティネリとルイス・マルティネリは、アメリカ政府に引き渡された。マルティネリ兄弟は、北・中・南米で行われたオデブレヒト汚職事件に関与した疑いで2020年6月にグアテマラで逮捕された。
2019年の総選挙でマルティネリ兄弟は中央アメリカ議会の議員として当選したため、免責特権があると主張したが、中央アメリカ議会は二名の任命手続きが行われていないため、議員として認めず、免責特権の適用は拒否された。約1年半にわたって、アメリカへの引き渡し手続きに反対したが、11月に引き渡しが命令された。マルティネリ兄弟は、アメリカのニューメキシコ州の裁判では資金洗浄の容疑を認めている。
マルティネリ元大統領は、息子の無罪を主張し、アメリカで無罪を証明すると述べていたが、マルティネリ兄弟が容疑を認めてからはコメントを発表していない。
B.選挙法改正の違憲審査
選挙裁判所は、10月に発布された選挙法改正が無所属候補への選挙資金および、男女平等に違反する規定があるため、最高裁判所に対して違憲審査手続きを申請した。選挙管理委員会が提案した法案において、無所属候補への選挙資金は15%とされたが、成立した法案では7%となった。また、国家選挙法改正委員会の法案では、政治資金の収支・管理・透明性に関する規定を改善したが、与党の民主革命党(PRD)は、無所属候補および国民解職の条件を厳格化し、総選挙に当選した者が財産報告を行う義務を削除した。PRD法案に対して、全国デモが行われ、法案は撤回された。
新しい法案は、10月15日に可決したが、選挙裁判所、国民、大学、および民間企業は、政府の透明性に違反する規定と無所属候補への制限を批判した。しかし、コルティソ大統領は、未払い罰金の免除に関する条文のみを拒否し、大統領の拒否を受け、改めて10月21日に改正を可決し、22日に発布された。
A.経済状況
統計局は2021年の第3四半期(7月-9月)の予備的なデータを公開した。2007年を基準とした2021年第3四半期のGDPは103億337万ドルを超え、前年同期比25%増加した。9月下旬時点、2021年のGDPは前年同期比14%増加し、2021年の予算化された金額を6億2330万上回っている。2016年以降のGDP変動は次の通りである。
また、統計局の報告書によれば9月の財とサービスの取引を図る月間経済活動指数(Índice Mensual de Actividad Económica, IMAE)は、前年同期比約15%増加し、6ヶ月連続で上昇している。銅鉱業、建設、農業、通信、流通、保管、民間医療サービスの業界が成長したことに対して、ホテル、レストラン、教育、金融、不動産の業界はまだ回復していない。とくに、不動産業界では、パナマはラテンアメリカにおいて最も高い賃貸物件の空室率(30%)の国である。パナマに次ぎ、メキシコおよびブラジル(17%)、ペルー(15%)、コロンビア(12%)、コスタリカ(9%)、アルゼンチン(8%)、チリ(6%)となっている。
B.パナマ運河の歳入
パナマ運河局は、パナマ政府に2021年度分として20億8062万ドルを提供した。そのうち、14億5千万ドルは余剰、残り5億9100万ドルはトン税に当てはまる。パナマ憲法の規定によるパナマ運河局は自治組織とされているが、運営費、投資、その他の出費に対応する金額を上回った余剰は政府に引き渡さなければならないと定められている。1999年12月の返還以降、政府に提供した金額は、200億ドルを超えている。現在、パナマの海事セクターは様々な手続きのデジタル化のプロセスが進んでいる。パナマ海運庁は、2020年12月から2021年11月下旬の間、約25万6千デジタル証明書が発行されていると発表した。
C.デジタル領収書
国会は、デジタル領収書の利用を認可するため、税法改正を可決した。改正前の税法は物理的な領収書のみを認め、零細企業の整備やソフトに関する負担が高かったという指摘があった。デジタル領収書によって脱税を防ぐだけでなく、月200件の取引まで、年間収入100万ドルまでの企業は、政府が無料で提供している請求書作成ソフトを利用することができる。VISAのラテンアメリカにおける電子商取引に関する調査によれば、パナマでの電子商取引は総合取引の34%を占め、ドミニカ共和国(32%)、ペルー(28%)、コロンビア(26%)、チリ(35%)、ブラジル(18%)、コスタリカ(16%)を超えている。
以 上