執筆者:Ruben Rodriguez Samudio(北海道大学法学研究科助教・パナマ共和国弁護士)
1月26日時点で、パナマにおける新型コロナウィルスの感染者は659,379人、死亡者は7,625人、回復者は466,850人と確認された。12月下旬から、感染者数が急増し、感染率は15日間で6%から30%まで上昇し、1月22日に過去最多1万933人となった。マルティネス商工相、ビヤロボス教育相、カリゾ副大統領、そしてパナマサッカー代表のクリスティアンセン監督に陽性反応があり、自宅で隔離している。私立病院の病床使用率はほぼ100%となっている。新感染者の増加にもかかわず、死亡者率は1.2%に留まっている。さらに、1月22日時点では、2021年1月に開始したワクチン接種計画によって約680万回分が提供され、そのうち、一回目は約320万、二回目は約280万、追加分は、約73万回分とされている。
また、政府は、1月7日から5歳以上の接種を開始し、1月28日から二回接種から三回接種とした。コルティソ大統領は、過去一年間の死亡者の90%はワクチン二回接種を受けていない者であったと明らかにし、国民のワクチン接種を促進した。政府は、国家公務員の約20%がワクチンを接種していない事実を受け、ワクチン接種義務化、または、接種をしない国家公務員は毎週月曜日に、上司に陰性反応結果を提出しなければならいと決定したと発表した。さらに、スクレ保健相は、子供のワクチン接種義務化が決定した場合、ワクチンの拒否は虐待と解釈される可能性があると述べた。
また、政府は新型コロナウィルスの経口抗ウイルス薬のファイザー産PAXLOVIDおよび、メルク(日本ではMSD)産モルヌピラビルの2万5千回分を700万ドルで購入することを発表した。さらに、約180万の検査キットを取得し、そのうち25万は家庭用検査キットである。
A.採掘権に関する契約の更新
カナダのFirst Quantumの子会社であるMinera Panamáが政府の提供した契約内容の改正に承諾することが判明した。現在の契約では、Minera Panamáは、パナマ政府に、採掘権のロイヤリティーとして、売上の2%を引き渡しているが、新しい契約におけるロイヤリティーは売上総利益に応じて、12%または16%とされ、3億7500万ドルの最低ロイヤリティーと規定されている。さらに、現在の契約においてMinera Panamáには所得税の免除が定められているが、改正後は、25%の所得税を払わなければならないとされた。改正された契約の有効期限は、20年間とされ、Minera Panamáには同じ期間の更新を求める権利がある。
2019年から2021年9月の間、Minera Panamáは約30億ドルの利益の中、政府は5980万ドルしか受け取っていない。Minera Panamáは1997年の法律によって採掘権を確保したが、最高裁判所の2017年判決では、その法律は違憲だと判断された。近年において、銅鉱業とその輸出が急増し、会計検査院の報告によると、これらの企業は2021年1月から3月31日まで、前年同期比+83%、輸出が増加した。
B.デジタル領収書への反対
パナマ弁護士連合会、パナマ計理士連合会、およびパナマ専門職連合会は、デジタル領収書の義務化を規定する2021年の第256号法律について最高裁判所に違憲訴訟を提起した。第256号法律は、商品販売・サービス提供を問わず、すべてのやり取りについての領収書は、認可された機械またはデジタルによって発行する義務を規定している。しかし、パナマ憲法第40条は、自由業、弁護士のような知識のみを利用して活動する専門職(Profesiones Liberales)の営業に対する負担は禁止されているため、弁護士連合会が、大256号法律は憲法に反すると主張している。
政府が、2018年からデジタル領収書発行についてのパイロット・プログラムを実行し、2021年に任意採用として認められた。2022年1月から、新しい企業はアナログ方法を利用できず、デジタル領収書を発行しなければならないとなっている。ただし、第256号法律は、いくつかの例外を規定している。さらに、これらの例外に該当しなくても、デジタル領収書の発行が困難である場合、税務局の許可を得て、紙の領収書の発行を認めている。
A.航空業界
世界の航空会社、運航スケジュールについてデータ分析、需要予測、航空機鑑定評価、コンサルティングなどを行うCIRIUM社は2021年のオンタイム・パフォーマンス・レポートを公開し、トクメン国際空港は世界中最も定時率の良い(91%)空港の一つとして評価された。(羽田空港は、95.55%の定時出発率で1位となった。)さらに、ハブ空港の2021年世界ランキングにおいて、7位として位置付けられた。
2021年の末に、トクメン国際空港を利用する航空会社数は23社、パンデミック前の90目的地のうち、71が復帰している。2021年の利用者は、910万人となり、その内訳は、南米(44.7%)、北米(31.5%)、中米(10.1%)、カリブ(9.1%)、ヨーロッパ(4.6%)であった。しかし、オミクロン株の発生によって、2021年の復帰傾向は影響され、1月中、160の欠航便が確認された。近未来においても、欠航便は増加すると予測されているにもかかわらず、2022年の利用者数が1400万人まで上昇すると予見されている。
また、航空会社の定時到着率について、同レポートは、世界ランキングでは、日本のANAとJALがそれぞれ1位と2位とされ、ラテンアメリカにおいてパナマ大手航空会社のコパは1位に位置つけられた。Cirium社のレポートには、新型コロナウィルス・パンデミックの初期には、コパのフライトがほとんど欠航便となったにも関わらず、2021年9月時点では70%復帰したと指摘され、2022年に完全な復帰が予測されている。
B.パナマ・コスタリカ国境統合地域
パナマ関税局のバルサヨ局長とコスタリカのバレンシアノ外国貿易相は、両国の国境にあるパソ・カノアに建設されている統合地域の工事進行状況を確認した。国境統合地域は、入国、関税に関する手続きの合理化、かつ簡略化を目的とし、米州開発銀行の資金提供を受けている。
近年、パナマとコスタリカの国交は緊迫している。2020年5月と8月に、コスタリカ政府は、新型コロナウイルス拡大防疫対策として、一時的にパナマ発の国際運送トラックの入国を禁止した。これに対してパナマ政府は報復措置として、コスタリカ発のトラックの入国を拒否し、同年6月に、必要な書類が期間内に提出されなかったため、コスタリカの乳製品大手企業であるドス・ピノスを含め、乳製品および食肉処理場の25工場の衛生許可を更新しないことを発表した。パナマ政府の決定を受け、コスタリカ政府は、衛生許可更新拒否が貿易障害に該当するとして、世界貿易機関(WTO)に提訴した。
また、2021年10月に、コスタリカの国内情勢が不安定になり行われたデモによって、国境が二週間封鎖された。パナマ側からコスタリカへの入国を求めたトラックの運転手とコスタリカ側でデモを行った者が衝突し、国境に近いパナマの町で巡回が強化された。