執筆者:Ruben Rodriguez Samudio(北海道大学法学研究科助教・パナマ共和国弁護士)
2月25日時点で、パナマにおける新型コロナウィルスの感染者は753,694人、死亡者は8,058人、回復者は737,040人と確認された。12月下旬から、感染者数が急増し、1月22日に過去最多1万933人となった。2月上旬から減少傾向にあり、汎米保険機構は、パナマの新感染者が一か月の間に85%減少したと述べ、2月21日には481人まで減少した。さらに、政府は、死亡者の約97%および入院者の85%がワクチン二回接種を受けていない者であったと発表した。
2月23日時点で、約757万回分のワクチンが提供され、そのうち、一回目は約333万、二回目は約292万、追加分は、約129万回分とされている。さらに、1月上旬に開始した5歳以上の接種は、約18万7千回分提供されている。1月の感染拡大状況を受け、政府は毎年2月に行われるカーニバルの中止を命令し、違反した者は5,000ドルまでの過料が科される。
A. 医薬品の値上がり
パナマ政府は、薬の値上がりに関する委員会を設けた。多くの国と比べてパナマは深刻なインフラ状況に陥っていない一方、医薬品は急騰している。SNSなどで、パナマで販売されている薬の値段は、コロンビア、スペイン、コスタリカより数倍高いことが発信されている。パナマ国内には医薬品を生産する企業が無い上、国内販売のための認定プロセス基準が厳しいことが原因と考えられる。委員会は3月中旬に政府へ予備的な提案を提出する予定である。
A.パナマの国債
パナマ政府は、1月に2033年期限利息3.29%の国債と、2063年期限、利息4.5%の国債を発行した。2021年にパナマの国債は、約40億ドルとなり、前年比9%増加している。新型コロナウイルスのパンデミックによって政府の歳入は減少している。法律は、政府歳入の赤字がGDPの4%を超えてはならないため、政府は、赤字を填補するために国債の発行を繰り返している。2020年の赤字はGDPの9.8%(52億2千万ドル)であったのに対して、2021年の赤字はGDP5.5%(35億2200万ドル)まで下がった。さらに、法律は国債がGDPの40%を超えないように促進しているが、2022年2月時点では、パナマ公債は、420億ドルまで上がり、GDPの60%を上回っていることが分かった。
近年のパナマ国債傾向は以下の通りである。
B.キャッシュレス決済の増加
決済ブランドを運営するVISAの報告によると、2021年12月にパナマの対面取引で65%がキャッシュレスで決済され、前年8月から15%増加していることが分かった。これに対して、他のラテンアメリカ諸国の平均は35%である。ラテンアメリカにおけるキャッシュレス決済が最も行われている国はチリ(84%)、バミューダ諸島、コスタリカおよびグアテマラ(70%)、パナマ(60%)、ペルー、エルサルバドル、コロンビア、ニカラグア(50%)であ
A.ウクライナ・ロシア問題
コルティソ大統領は、2月24日に、ウクライナ・ロシア問題について、交渉、外交による平和的な解決を期待していると述べた。侵略に関して、ロシアの行動は、国際連合憲章に違反し、平和主義に基づく国家として、侵略は極めて遺憾であると発表している。さらに、パナマ政府は、国際社会の決定に従い、人命救助の最優先を求めている。執筆時点では、ロシアに対する具体的な制裁は明らかにされていない。
B.EU租税回避地のブラックリスト取消却下
2022年2月24日に、アレクサンデル経済財政相は、ヨーロッパ連合諸国の大使と会談し、経済財政に関する透明性、および国際基準を満たすための手段を説明した。具体的に、国際銀行、イギリス政府等から技術的な協力を受け、国際専門家へのコンサルティング依頼を挙げた。しかし、同日(ヨーロッパ時間)に発表されたEU租税回避地ブラックリストにパナマは記載された。税務・金融情報交換への非協力的な態度、および課税取得がパナマ国内源泉所得に限られていることへの批判等が原因と考えられる。
2020年2月上旬に、EUは租税回避地ブラックリストの検討を発表し、5月上旬に決定した。当時、ブラックリストへの追加決定に対してパナマ政府は、「近年の法律改正や政策を配慮していない上、EUはパナマに対する通知または返答する機会を与えていない」と反論した。パナマ政府は、2016年以降、脱税防止として国内法を国際基準に満たすため、121か国と税務情報交換協定を結んでいる。
以 上