『開発との遭遇 -第三世界の発明と解体』 アルトゥーロ・エスコバル - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『開発との遭遇 -第三世界の発明と解体』 アルトゥーロ・エスコバル


著者はコロンビア出身の人類学者にしてグローバル化と開発の批判的研究者として世界的に知られており、1995年に初版が2012年に増補版が出された本書は、開発学を学ぶ上での必読書の一つに挙げられている。

本書で取り上げられた事例で、米国政府や世界銀行が支援したコロンビアの1972~92年の農村開発、栄養改善のプログラムは、その米州での地政学位置、第三世界への対処策の一環で行われたという意味で、米国の反共防波堤策、資本主義陣営への取り込みのための「実験国家」とされたことは明白であったと指摘している。張り巡らされた官僚組織制度により、現実分析ではなく理論から導き出して単純化・カテゴリー化した「開発言語効果」を浸透させ、農民が生産者、女性が追加労働者、自然が資源として切り取られて、あたかも開発に新たな意味づけがなされていくというストーリーは開発幻想であると指弾し、「開発のためのオルタナティブ」ではなく「開発に対するオルタナティブ」をと提起している。

巻末の441~538頁にわたって、訳者による膨大な解題「ポスト開発の先にある多元世界の展望 -飼い慣らされた羊は変革主体に変身するか」と「訳者あとがき」「参考文献一覧」「人名索引」が載せられており、解題では著者の概歴、本書の意義、ポスト開発論からプルーリバース(多元世界)への流れ、日本の近代化と「開発」をどう考えるか、エスコバルが投げかけた日本の近代化が特別なのか?という問いまでを詳細に解説している。なお、訳者には『南部メキシコの内発的発展とNGO(増補版)』(勁草書房 2019年)の著作もある。 https://latin-america.jp/?s=%E5%8C%97%E9%87%8E+%E5%8F%8E&cat=18

〔桜井 敏浩〕

(北野 収訳・解題 新評論 2022年3月 540頁 6,200円+税 ISBN978-4-7948-1201-8 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2022年春号(No.1438)より〕