『遙かなる隣国ペルー -修交150周年 太平洋が繋ぐ戦略パートナーシップ』 片山 和之 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『遙かなる隣国ペルー -修交150周年 太平洋が繋ぐ戦略パートナーシップ』 片山 和之


 ペルーに関する基本知識、ペルーの立ち位置から始まり、プレインカから現代に至る歴史の変遷、自然・文化世界遺産等観光資源、政治経済概況と新型コロナウイルス感染症蔓延の影響、対米・対中外交、日本ペルー関係の過去、現在と将来、および日系人に至るまで記述されており、巻末に日本・ペルー関係年表と参考文献、索引を付けてある。

 中でも著者が本書執筆の動機でもあり中核と位置づける第6章「ペルーと日本」では、両国関係の開始から現状までを、歴史、1930年代の排日運動と第二次世界大戦中の日系人の米国収容所への移送、戦後の日系人社会の再建から日系人大統領フジモリの誕生を辿り、両国の政治、経済、外交史と1997年のテロリストによる日本大使公邸占拠事件、日本の投資と多岐にわたるODA協力、さらに50余年の実績から世界的にも大きな成果をあげているアンデス考古学調査、日本人・日系人の日本語教育と学校、中南米日系社会との関係を述べている。これに続く第7章の「代表的日本人・日系人の足跡」は、ペルーでの銀鉱山開発投資のため1889年にペルーに渡った高橋是清、黄熱病とペルーのアンデス風土病研究のために一時滞在した野口英世、アンデス文明を評価し私設博物館を創設した天野芳太郎、ペルー女子バレーボールを世界の強豪に育てた加藤明、アルベルト・フジモリ大統領、地震国ペルーに耐震・防災工学研究と法制化の基礎を築いた学者フリオ・クロイワなど様々な分野の10人を取り上げて、両国関係発展への貢献を明らかにしている。

 著者は現役の在ペルー大使で、初めての南米勤務であるが数多くの関連資料を読破し、ペルーへの関心を喚起したいという思いで纏めた。全般的かつ平易な解説書であり、一般向け啓蒙書としてよく纏まっている。

〔桜井 敏浩〕

(東京図書出版発行・リフレ出版発売 2022年3月 415頁 1,800円+税 ISBN 978-4-86641-499-7 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2022年春号(No.1438)より〕