本書は芥川龍之介「蜘蛛の糸」、宮沢賢治「よだかの星」、幸田露伴「印度の昔話」、志賀直哉「城の崎にて」、松尾芭蕉「閉関の説」、良寛・貞心尼 唱和歌「蓮の露」のほか、「梁塵秘抄」および「閑吟集」(抜粋)の日西対訳版である。
日本はこれまで世界が経験したことのない高齢化を迎え、死の問題は、個人の問題だけではなく、社会の問題ともなりつつある。また最近世界を席巻した新型コロナウイルス感染症の蔓延により、突然命を落したり、親子・夫婦など、愛する人と別れる苦しみを味わうことも珍しくない。現代に生きる者にとって、死といかに向き合うかは大きな課題である。
一神教徒からみるかぎり、日本人の宗教心は「融通」と「曖昧さ」に満ちているかもしれないが、日本人の多くはむしろ宗教心が豊かであるといえよう。そこで本書では日本人が心に育て続けてきた宗教心、死生観を世界に伝え得る日本の古典的作品8編が選ばれている。また本書は、既刊の日本語とスペイン語の対面バイリンガル書籍『スペイン語で愛でる万葉集』(2020年)、『スペイン語で奏でる方丈記』(2015年)、『スペイン語で詠う小倉百人一首』(2016年)、『スペイン語で旅するおくのほそ道』(2018年)および『スペイン語で親しむ石川啄木 一握の砂』(2017年-以上いずれも大盛堂書房刊。本誌でもそれらの多くを紹介している一連の著訳書の最新の一巻である。(https://latin-america.jp/?s=%E4%BC%8A%E8%97%A4+%E6%98%8C%E8%BC%9D&cat=18 )
〔著者-伊藤 昌輝〕
(大盛堂書房 2022年4月 189頁 1,700円+税 ISBN978-4-88463-127-7 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2022年春号(No.1438)より〕