連載エッセイ154:相川知子 「アルゼンチンにおける「日本食普及の親善大使」 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ154:相川知子 「アルゼンチンにおける「日本食普及の親善大使」


連載エッセイ151

アルゼンチンにおける「日本食普及の親善大使」

執筆者:相川 知子(スペイン語通訳者、異文化コミュニケーター、在ブエノスアイレス)

農林水産省では、令和元年から「日本食普及の親善大使任命制度」を発足させた。令和4年1月時点で。日本国内に56名、海外50カ国・地域に117名の合計173名を任命している。この制度を通じて、農林水産省は、日本食・食文化の魅力を広く国内外に効果的にPRするためのキーパーソンとして相応しい者を「日本食普及の特別親善大使」 として、日本食・食文化の普及に関する的確なアドバイスを行う日本料理関係者等を「日本食普及の親善大使」として任命し、日本食・食文化の魅力の更なる発信に取り組むことになっている。

具体的には、親善大使の活動内容は以下のとおりである。
1.農林水産省が実施する日本食・食文化の普及事業等への協力
2.自らの活動や出演する各種メディアでの日本食・食文化に関する情報発信
3.プロの視点に立って海外の日本料理関係者等へ助言することなどを通じた、国内外への日本食・食文化の普及

ラテンアメリカにおける「親善大使」は、現在のところ、16名となっており、その内訳は、アルゼンチン3名、ジャマイカ1名、チリ1名、パラグアイ4名、ブラジル2名、ペルー2名、メキシコ3名となっている。

世界中の日本食ブームは伸びの一途である。現在アジアにある日本食店は10万900店舗、アメリカは3万1200店舗、中南米は6100店舗、その他、合計訳15万9千店舗だ。2004年の2万4千店舗から約7倍に膨れ上がっている(農林水産省調べによる海外展開調査から)。農林水産物・食品の輸出額推移は年間11・7%の伸びがあり、今後輸出の可能性は高い。具体的にはメキシコは日本食店が925店(2019年1606店から減少しているが)あり、農林水産省が推進している日本産食材サポーター店認定を受けた店舗は2022年2月28日現在、162店舗に上っている。ブラジルの日本食品店も多く、サンパウロだけで1千店舗あり、同認定店は203店舗である。アルゼンチンは全体で約330店(そのうち首都ブエノスアイレスには124店)であり認定店は16店舗+1店舗食材店がある。

アルゼンチンは食の大国であり、日本から訪問する人は必ず、アルゼンチンの郷土料理やワインに舌鼓を打つ。本稿では、アルゼンチンの日本食の親善大使とレストランを紹介しよう。

ラテンアメリカにおける日本食普及の親善大使一覧

国名 氏名 レストラン名
アルゼンチン

3名

*大野 剛浩

*小宮山 巌

*マリア・ アレハンドラ・加納

TEA CONNECTION&GREEN EATグループ総料理長

ケータリング会社「Iwao Sushi & Cuisine」経営

日本料理店「Ichisou」オーナー兼料理人、日本食レストラン組合 「ガストロ・ハポ(Gastro Japo)」 副会長

ジャマイカ 1名 *宇都口一美 ジャマイカキングストン 日本食レストラン 「イースト・ジャパニーズ」経営者兼料理人
チリ

1名

*内藤 武雄 レストラン「Japon」オーナー
パラグアイ

4名

*小田 俊輔

*内山田 薫

*林 英二郎

*坂梨博明

レストラン「ひろしま」(本家•エンカルナシオン) オーナーシェフレストラン「Japon」オーナー

日本食レストラン「すき焼き」オーナー

日本食レストラン「デリシアス・ハポネサス」

A&E社オーナー

ブラジル

2名

*小池 信也

*テルマ・佑佳・清水 ・白石

和食レストラン「藍染」「酒蔵阿吽」オーナー兼シェフ

日本食レストラン「藍染」オーナー兼シェフ

ペルー

2名

*ミツハル・ツムラ

*ハジメ・カスガ

レストラン「Maido」オーナーシェフ

レストラン「Hanzo」 エグゼクティブシェフ兼アドバイザー

メキシコ

3名

*エド・ロペス

*浅井 康雄

*九本 和

エド・コバヤシ・グループ創設者

「Asai Kaiseki Cuisine」

「Kazu‘s Kitchen」オーナーシェ

アルゼンチンにおける日本食の親善大使の紹介

1)大野 剛浩氏(おおのたけひろ)

2016年 親善大使に任命される。https://www.ar.embjapan.go.jp/NotasJP/03.ChefOnoJP.html

常時アルゼンチンのGourmet チャンネルに出演し、中南米各地で人気を博している。その他、講演会、セミナーなどで南米各地をまたにかけて日本職の普及に努めている。

2022年5月現在、ブエノスアイレス市内に、「Tienda OHNO大野商店」、「OIAN(オイアン)」という2つの店舗、レストランを持っている。

さらに、UADE(アルゼンチン企業大学)にて飲食店経営学科ブランドマネジメント講師を務めており、大野さんらしい、素材を大事にして材料がなければないで、なんとかしておいしく食べてもらうモットーがにじみ出ている楽しい番組を持っている。

OHNO Kitchen youtube channel では、日本料理、日本食材料理、バスク料理など紹介をしている。 https://www.youtube.com/c/OHNOKITCHEN/videos

カトリック大学の日本食についての講演に日本語クラスの皆と出席

2)小宮山 巌(こみやまいわお)

2017年、親善大使に任命される。ケータリング会社「Iwao Sushi&Cuisine」を経営。https://www.instagram.com/iwaochefok/?hl=ja

小宮山さん一家は祖母の代からアルゼンチンで日本食に取り組み、巌さんはアルゼンチン生まれながら慣れ親しみ、さらに日本からの材料がなければ代替のものを使う技術に長けていた。そこから特に小宮山巌さんは早くからアルゼンチンにSUSHIという世界フードの確立に尽力された。GOURMETチャンネルで日本食を最初に紹介した功績があり、さらに料理学校でも指導し多くの弟子を外食業界に輩出している。2021年11月23日マルボタナ番組で小宮山シェフの日本紹介に福嶌大使出演 – 主観的アルゼンチン/ブエノスアイレス事情を参照のこと。

(2017年 在アルゼンチン大使館公邸レセプションにて)

3)マリア・ アレハンドラ・加納氏(カノウ)

2022年、親善大使に任命される。日本料理店「Ichisou」オーナー兼料理人、日本食レストラン組合 「ガストロ・ハポ(Gastro Japo)」 副会長
いちそうICHISOU Venezuela 2145 Tel:4942-5853
月曜日定休 https://www.instagram.com/restoichisou/

アルゼンチンに移住してうどん屋から始まった加納家の「いちそう」。その寿司と刺身のコンビネーションセットにはフィラデルフィアチーズロールが参加。「SUSHIの流行のおかげでお客さんが増えた、それは認めないといけないし、お客様が好きなものを提供することも時には必要でしょう。でも、昔ながらの同じ物を作るのは、簡単なようで難しく年配の日本人の方が「子どものころ食べたものに似ている」と言ってくれるのは嬉しい。「いちそう」は兄が継ぐものと思っていたらヨーロッパへ移住すると、加納アレハンドラさんが急きょ学び板の前に立つことになった。2022年2月農林水産省の日本食親善大使として任命された。

今回、3月4日に開催された農林水産省主催の「中南米への食産業展開・輸出促進セミナー」では、ブエノスアイレスで30年以上歴史のある日本食レストラン「いちそう」のオーナーであり板前のアレハンドラ加納さんが、アルゼンチンの日本食普及ネットワークGASTRO JAPO(ガストロハポ)という試みを発表した。加納さんは農林水産省による日本食普及親善大使表彰制度で2022年に大使に任命されている。

加納さんは三代に渡って女性が飲食業を切り盛りしている一家にルーツを持つ。「いちそう」はアルゼンチン随一の和食レストランである。しかしながら、それに留まらず2018年ガストロハポを形成した。2019年活発な行事などを開始した矢先にコロナ禍で中断するも、加納さんがリーダーシップを取りメンバーにお弁当のコンセプトを教え、デリバリーなどに転換させた。

またオンラインセミナーなどで従来の日本食のブームを保ち、健康にいい食事は日本食というイメージを確立させた。首都圏に留まらず、2022年ロサリオで行ったガストロハポフェアという地方における日本食普及活動を今後は各地で展開する予定である。このネットワークの特徴は、飲食店同士を競合させず、協働させるところにある。将来的に食材の共同調達または食器など、例えば、割りばしや使い捨てトレーなどの原材料も環境に準拠する必要があり関連材料開発にも期待が寄せられている。

和食レストラン「いちそう」で日本食を囲んで談笑。寿司、刺身、空揚げ、焼き鳥、天ぷら、日本製ビールも探能。奥のアルゼンチン人のマルティン・ブエノ氏はITベンチャー企業をミシオネス州で行っている。90年代に外国でSUSHIの味を覚えた起業家であり、自分でも握りずしやロールを作ったことがあるという日本食通。このような人達が現在財界の中堅層となり、家族でSUSHIだけではなく日本食を食べに出かけることが普通になった。日本食が一過性のブームではなく、外食やデリバリーの選択肢の一つとして定着したことを意味する。

ブエノスアイレス一の日本食レストラン「いちそう」 アルゼンチン/ブエノス・アイレス特派員ブログ | 地球の歩き方を参照のこと。

在住者レポート=アルゼンチンは今=相川知子=日本企業の進出にさらなる期待=中南米への食産業展開・輸出促進セミナー=「Made by Japan」「Made in LatinAmerica」こそ最高!も参照のこと。

なお、ブエノスアイレスで私が行く、即ち日本人が食べに行っても大丈夫なお店リストを紹介します。コロナ禍で多くの店が閉店しましたし、日本食レストランではなくても、喫茶店そして日本食材関連のものがいただける店も掲載しています。

ブエノスアイレス日本食レストランガイド2021年 – 主観的アルゼンチン/ブエノスアイレス事情

以   上