『五七五 ぼくのとなりはブラジル人 文研じゅべにーる』 万乃華 れん作 黒須高嶺画 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『五七五 ぼくのとなりはブラジル人 文研じゅべにーる』 万乃華 れん作 黒須高嶺画


ぼくは、早川あさひ。お母さんが7年前に亡くなってお父さんとお姉ちゃんとマンションの3階に住み、隣りにおじいちゃんとおばあちゃんが住んでいる、ごくふつうの小学5年生だ。学校の担任から授業で川柳を作ることになり、隣りの席の子とお互いの手を詠むことになったが、組むことになった隣りのラウラはブラジルから来たばかりでほとんど日本語が出来ない女の子だった。まだとても川柳など作れず、意思の疎通もままならないが、公園で出会いブラジル人の子ども達とサッカーやボールを使ったリフティングを一緒にし、バーベキュー(シュラスコ)に参加している内に打ち解け、盆踊りにはブラジル人たちも参加し楽しんだが、ぼくの祖父母を含めブラジル人たちと打ち解けようとしない町の人は少なくなく、公園に市役所が立てた看板は音を出すこと、バーベキューなどを禁止するルールが他の公園以上に厳しいことに気が付いた。

おとうさんに言われて思いきって市役所を訪れたが、この公園だけが厳しい理由は判らなかったので、お姉ちゃんのアイディアで他の公園並みに緩和するよう、バーベキューも花火と同じく午後10時まで出来るように要望する署名活動を始めることとし、苦労して目標の100人の著名を集めて市役所に提出したが、預かり置く、2か月後位に経過報告という応えしかもらえなかった。しかし、夏祭りの後片付けをブラジル人たちがしたことから、町の人たちのブラジル人を見る目が変わり、お盆休みにサンバカーニバルを一緒にやろうということになった。当日は生憎の雨天だったが、町民会館に場所を移して盛り上がり、2か月が過ぎて市役所からもバーベキューこそ水道設備や衛生・消防の関係を理由に認められなかったものの、サッカーやサンバは出来るようになった。

ブラジル人集住地域での住民の宥和の問題を、小学生の川柳授業を軸に日本社会でよく使われる「ふつう」という曖昧な言葉をもう一度考えてみようという提起をも示唆する児童向け図書。

〔桜井 敏浩〕

(文研出版 2021年9月 168頁 1,400円+税 ISBN978-4-580-82477-5)